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オリジナル版・プロレス深夜特急……第15回

■大学卒業まで、あと半年。オレはこのような未来図を描いてみた。

①卒業前にもう一度メキシコでルチャ修行をする

②卒業と同時に日本の団体へ入団する

③経験を積み、自信が付いたらメキシコへ渡る

④浅井さんのようにメキシコに定住し、ルチャリブレの英雄となる

というワケで、まずは日本の団体へ入り込む必要があった。そこで考えたのが、みちのくプロレスとFMW。みちのくはルチャ系の団体だし、FMWは若い選手をメキシコ北部のティファナへ送りだすなど、どちらもメキシコとの強いパイプを持っているはずだった。新日本と全日本は身長180センチ以下の者など相手にしてくれない時代だったので、ハナから頭の片隅にもなかった。

上半身裸の写真を友人に撮ってもらい、みちのくとFMWに履歴書を送る。

『営業でも小間使いでも下積みからなんでもやります、よろしくお願いいたします』

熱意のほどをしたためた手紙も同封した。ちなみにオレはこのころベンチプレスは120キロを挙げ、ヒンズースクワットは3000回だってこなせたし、体重はいまとさほど変わらない83kgに達していた。

この2年前。レスラーへの道を志しジムへ通い始めたころがベンチプレス60キロ、ヒンズースクワット500回で腿が悲鳴を上げる体重60キロの痩せっぽちだったことを思うと、なかなかの進歩である。体力的にはまあ問題ないだろう。自信はあった。

ところが1週間経ち、2週間経ち。待てど暮らせど返事は来ない。もしや届いていないのでは?電話をかけてみることにした。カネがなく卒業までとうとう電話を引いていなかったので、大量の小銭を用意し電話ボックスへ向かった。

まず、みちのくへかけてみることにした。大仁田さんよりサスケさんに電話する方がまだプレッシャーが小さかったのかもしれない。だが、緊張する。心臓の鼓動が異常だ。もしかすると、サスケ社長が電話口に出るかもしれないのだ。

「はい、みちのくプロレスです」

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