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舞依とレイコの空手チョップ……第7話
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■第7話
昨夜は、本当の舞依と話をするチャンスがとうとうなかった。その理由はスマホだ。
力道山は極度の目新しいもの好きだったらしい。彼にまつわる様々な記述にそう書かれている。戦後復興期の日本に、プロレスという新ジャンルを根付かせた先駆者。時代の最先端に敏感だったのだ。そんな彼にとって、いまの時代のものはどれもが目新しく衝撃的なはず。だから彼がスマホに異様なほどの興味を示したのも少しも不思議ではない。
昼、食卓にいた誰もがスマホで湯豆腐の写真を撮った。その光景をじっと見つめていた舞依は
「そういえばみんな例の位牌みたいなやつを持っとるが、あれはなんじゃ!?」
と、あとかたずけ中に尋ねてきたのだ。スマホを見せ、これはこういうものなんだよと説明すると「ワシにもくれ!」と、まるでおもちゃを欲しがる子供のようにねだった。寮に戻り舞依の持ち物をあさると、ポシェットの中にスマホはあった。ロックをかけていなかったのがいかにも舞依らしく。
使い方を教えると、夢中になっていじり始めた。その集中力は尋常ではなく。声をかけても反応しないし、食事をとることも忘れ、部屋の電気を消してもまだいじり続けていたようだった。いったい何時まで起きていたのか。それが理由で、本当の舞依と話をすることができなかったのだが、本来の自分とはまったく異なるペースでの一日にくたくたとなり、どちらにしろ早々と寝てしまっていたかもしれない。
今朝。ショパンの『子犬のワルツ』と、例の力道山主演映画の主題歌『怒涛の男』が、私と舞依のスマホから同時に流れてきて目を覚ました。舞依はたったの一晩で、そんなことまで出来るようになっていたのだ。それにしても、あんな曲をどうやって見つけたのかが気になったけど。目を覚ました舞依はすぐにスマホを手に取り何かを確認すると、予想外だったように首をかしげた。
「もう少しいくと思ったがのう?」
「なにが?」
見せてきたのは、Xの画面だった。一晩で12人フォロワーが増えたという。だが本人には物足りなかったらしい。しかも舞依は私が寝ている間に、こんな書き込みをしていたのだ。
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