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今年の豊前神楽シーズンも終盤に。速い動きと人間ドラマで撮影力が鍛えられる。
歴史好きを自認している者として、移住した土地で神楽が盛んだったのは嬉しい想定外だった。
同じ福岡県内といっても、移住元の北九州市と豊前市では伝統・文化に違いがある。
北九州市は山笠、豊前市やその周辺の町、築上町、上毛町、吉富町、県境をまたいで大分県の中津市、宇佐市ぐらいまで、旧豊前国エリアで神楽が盛んで、概ね「豊前神楽」と呼ばれている。
主に豊前エリアでは秋祭りとして、神楽舞が各保存団体によって、各地の神社で奉納される。
地域の人たちが毎年心待ちにしているという神楽を、移住してコロナが落ち着いた時期から少しずつ撮っていったものの、中々時間が取れずにいた。
それを今年こそは、そんなこと言ってたらいつまで経っても撮れないと、2時間ぐらい時間ができたら見に行くようにしていた。
仕事と家の合間をぬってコツコツと。
宇佐市武領地区/若宮社・稲荷神社・貴布禰神社 友枝神楽講
豊前神楽の始まりは友枝神楽講の奉納だった。
9月で真夏のような暑さの中、全力の舞を見せてくれた。
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中津市三光(八面山)箭山神社 神幸祭 深秣神楽奉納へ(+唐原神楽助っ人あり)
中津市のシンボルである八面山の中腹に建つ箭山神社で奉納された深秣神楽。
「深秣」は「みまぐさ」と読むことを初めて知った。
他の神楽保存団体「唐原神楽」と協力関係にあるとのこと。
天狗の面も大迫力。
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豊前市才尾 道祖神社 山内神楽講奉納
田んぼ、彼岸花、ため池に反射する緑と山。
これぞ里山の風景の中で長閑に眺めた神楽。
地域の方がおでんやたこ焼きのお店を出して、食べて飲んでのお祭り。
子ども神楽を見たが、動きのキレに驚いた。
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中津市 闇無浜神社 蛎瀬神楽奉納
城下町中津市街地の神社での神楽。
近所の方がビール片手に(バーベキューも?)楽しそうに観覧していた。
いいなぁ自由で。
子どもを威嚇する鬼の「がおー」という叫び声が大きくて印象に残っている。
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豊前市 乙女八幡神社 黒土神楽講奉納
地域のシニアたちが「今の人らは神楽で驚かんだろう」と話していたけど、大蛇退治の神楽の花火で大変驚いた。
市街地に住んでいる人ほど驚きそうだが…?
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豊前市 上川底 貴船神社 大村神楽講奉納
移住してすぐの頃に迷い込んだ先で見つけた山奥の神社。
いつもは人があまりいないエリアなのに、神楽の日は人がたくさんいた。
ジブリの世界に迷い込んだような個性豊かな舞手が記憶に残っている。
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中津市 蛎瀬 八坂神社 蛎瀬神楽奉納
城下町というだけあってか社殿がとても立派。
朱色がとても綺麗だった。
神楽講に歴史に詳しい神職の方が所属していて色々教えていただいた。
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上毛町西友枝小畑 貴船神社 黒土神楽講奉納
上毛町西友枝小畑の貴船神社。
境内の苔といい、雰囲気がすごかった。
神楽講や観覧者に尊敬されている講長(神楽講のリーダー)のめったに見ることができないという舞を見ることもできて幸いだった。
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豊前市 春日神社 三毛門神楽講奉納
豊前エリアを超えて、北九州市やその他の市の神社にも積極的に奉納に行っている神楽講。
豊前神楽を広く伝えるためのチャレンジをしながら、地域も大切にしている神楽講という印象。
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上毛町垂水 八坂神社 唐原神楽奉納
昨日行ったばかりの唐原神楽。
鬼がプロレス技をかけられていて、ドッと笑いが出ていた。
川沿いの高台にある歴史ある神社には人がたくさん集まっていた。
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おわりに
以上が今日までに見に行った今季の豊前神楽の紹介だ。
終盤といってもまだ見ることができる神楽もある。
たしか今週末は蛎瀬神楽の今年最後の奉納が、中津市の白髭神社で行われる。
神楽はどれも同じかといえば、そんなことはない。
人が舞うもので、開催される神社も違う。
行くたびに驚きや発見と、撮影の課題まで浮き彫りになる。
神楽舞の動きは速く、鍛えられるし、それに人と人との触れ合いがとても魅力だと思う。
舞手と観覧者、準備をする地域の人たちのドラマがそれぞれある。
舞い手と観覧者たちが笑顔になる瞬間。
力強い舞、気迫。
センサー全開で「ここだ」と思う瞬間を切り取れた時の達成感。
秋ぐらいに豊前市周辺に来ることがあれば、ぜひ神楽を見に、撮りに行ってもらいたいものだ。