大和ハウスのシンガポールリート
新年度に入り、1か月強が経ちました。軟調な市場が多い中で、J-REIT市場はあまり下がっておらず健闘しています。国内の投資家は期初にとりあえず残高を積み上げているのでしょうか。また、公募増資が1件も発表されていないことも需給上プラスに働いているかもしれないですね。相変わらず引けギャラでまとまった金額の売りは出ているようですが。
さて、今回は(今更ですが)昨年シンガポール市場に上場した「Daiwa House Logistics Trust」について、ホームページ(https://www.daiwahouse-logisticstrust.com/)と大和ハウス工業のリリース(https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20211126141004.html)に記載されている情報を簡単にまとめました。
Daiwa House Logistics Trustについて
2021年11月26日に「Daiwa House Logistics Trust」がシンガポール市場に上場しました。シンガポール市場に上場しましたが、この銘柄はアジアの物流施設などを投資対象としており、上場時のポートフォリオは全て日本の物流施設で構成されております。上場後の価格推移は以下のグラフのとおりです。
上場後しばらくの間は小動きでしたが、3月下旬に上昇し、5月に上場来安値を記録しています。
大和ハウス工業のリート・ファンド運営について
大和ハウス工業は、既に複数のリートや不動産ファンドを運営しています。上場リートでは「大和ハウスリート投資法人」(総合型で50%強を物物流施設に投資)、私募リートでは「D&Fロジスティクス投資法人」(ユニクロの物流施設に投資)と「大和ハウスグローバルリート投資法人」(一部を海外不動産に投資)、オープンエンド型私募ファンド「大和ハウスロジスティクスコアファンド」(国内の物流施設に投資)を運営しています。
今回、新たなリートが上場しましたが、他のリートやファンドの成長は諦めてしまったのではないかと思うかもしれないですが、棲み分けはされているようです。大和ハウス工業のリリースを見ると、「大和ハウスグループの既存REITやファンド等がカバーしない借地物件や地方物件」に投資可能としています。減価償却費の割合が高くなってしまう借地物件や地方物件でも、シンガポールでは分配の制約が小さい(例えばJ-REITで投資すると減価償却費が嵩み利益分配金の額が小さくなる)ことを投資可能な理由として挙げています。スポンサー開発物件の優先交渉権については、東南アジアの物件は第一位、日本国内の物件は①大和ハウスリート、②大和ハウスグローバルリート、③大和ハウスロジスティクスコアファンドに次いで付与されると記載されています。
保有物件について
ここからは、「Daiwa House Logistics Trust」の保有物件を見てみましょう。先ほど記載したとおり、上場時のポートフォリオは全て日本国内の物流施設で構成されており、2022年5月13日時点では上場時から物件の取得・売却はないようです。ポートフォリオの簡単な情報を以下に記載しております。金額については全て円で表記しています。
ポートフォリオに地方物件がそれなりに含まれています。北海道で100億円を超える物件は中々の規模ですし、(私の知る限りでは)J-REITにはない長野県所在の物流施設があります。埼玉県や神奈川県に所在する物件もありますが、それらは全て借地物件になっています。これだけを見るとあまり良いポートフォリオに見えないかもしれませんが、稼働率は全体で98.6%と高く、賃貸借契約が10年以上残存する物件も複数あり、キャッシュフローの安定性という観点では悪くないかもしれません。物件の利回りについては、データを見つけることができませんでした(IPO時の鑑定cap rateはありましたが)、すみません。
まとめ
今回はシンガポール市場に上場した「Daiwa House Logistics Trust」について、大和ハウスグループが運営する他のリートや不動産ファンドとの棲み分けや、保有する物件について書きました。余談ですが、日本の上場リートである大和ハウスリート投資法人は、以前のように資産規模目標を掲げていないので、スポンサーからの物件取得が必ずしもあるとは限りません。また、5月13日に発表されたスポンサーの第7次中期経営計画(2022年度~2026年度)を見ると、ストック収益の積み上げに触れられており、資金回収のための物件売却を急ぐような姿勢は感じられませんでした。今後数年間物流施設の大量供給が見込まれる中、新たなリートが上場し、スポンサーとリート・ファンドの関係に変化は生じるのか注目したいです。
※記事の内容は商品の購入・売却などの投資行動を推奨するものではありません。また、記載内容についてはその正確性や完全性を保証するものではありません。
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