申請中の2か月間売上をロス 時間かかる特殊車両の通行許可
トレーラー初めて購入した事業者困惑
関西の運送会社A社は、普段は大型車、4トン車などを動かしており、先月、初めて総重量25tのセミトレーラーを購入した。購入したトレーラーは「特殊車両」にあたり、実際に仕事で使うには道路の「通行許可」を取らなければならない。同社は、行政書士に頼んで許可申請を行ったが、「通行許可が下りるまで2カ月くらいかかる」と言われ、困惑している。購入してから既にローンの支払いが始まっており、申請期間中の2か月間、このトレーラーは道路を走ることができず、売上をロスすることになる。
こういったケースは特殊車両を動かす事業者の共通の課題でもある。
特殊車両とは、車両制限令で定められた制限値を超えた車両で、制限値は長さ12m、幅2・5m、高さ積載時3・8m(4・1mの道路もあり)、総重量20t、軸重10t。この制限値を超えた車両を公道で走らせるには特殊車両通行許可が必要になる。
通行許可について、国土交通省道路交通管理では、「車両制限令では、橋やトンネルを含めた道路にかかる負担をなるべく減らすため、通行できる車両の幅や重量、長さに制限を設けている。制限を上回る車両が頻繁に行き来すると、道路や橋は早く傷んでしまうため、運送会社には事前に特殊車両の走行ルートを申請してもらい、道路の寿命を延ばせるようにしている」と説明する。
また、申請の期間が長期化することについては、「通行許可を出すに際し、道路管理者が走行可能か審査を行うが、審査は経路を1つずつ精査し、許可できない場合は迂回ルートを提案する。 申請ごとに時間をかけて許可・不許可を判断しており、経路が国道だけでなく県道や市道も含まれる場合、県や市の道路管理者も我々と同じような審査を行っている。申請が増える時期は、審査に1~2か月ほどかかることもあり、また、経路が何十パターンもある場合、許可を出すまでに3カ月以上かかることもある」と話している。
通行許可の申請期間について大阪で重量物の運送を行っているB社の社長は、次のように話す。
「購入する特殊車両が新車だろうが中古車だろうが、新規の通行許可を取るには1~2か月はかかる。最近は経路の申請に関して、『特車ゴールド制度』などの簡易申請も行われている。しかし、ゼロから通行許可申請を行う場合は、やはり1、2カ月以上かかる。特殊車両の仕事は、こうした申請にかかる期間を見越して、仕事を受ける時期を調整し、既存のトラックをやり繰りして売上ロスをカバーするしかない」
大阪の特殊車両誘導業者Ⅽ社は、「運ぶ荷物によっては、運搬経路上の橋の強度や歩道橋の高さなどを一つ一つ確認してから申請を行うケースもある。その場合、申請の準備を始めてから通行許可がおりるまで、1年近くかかる。当然、運送会社はその間の資金繰りや車両のやり繰りも考えねばならない。(7月17日号)