エコタイヤは本当にエコ? 「普通タイヤに比べ減りやすい」の声

専門家「使い方が問題」と指摘


 地方自治体が新型コロナ感染症対応の「地方創生臨時交付金」を活用し、運送事業者の支援を行っている。「環境対策」を名目とした支援も行われており、エコタイヤ購入の助成を行っている自治体もある。そんなエコタイヤについて、関西のある運送会社の社長は次のように疑問を投げかける。

 「エコタイヤは普通タイヤに比べ、減り(摩耗)が早いような気もする。具体的に計測したわけではないが、1・5~2倍くらい減りが早いような印象だ。エコタイヤを使っている同業者にも話を聞いてみたが、やはり寿命は普通タイヤの半分程度という。燃費が良くなるのは間違いないが、タイヤを交換する頻度が増えてしまうのなら、結局『エコ』なタイヤではないのでは」

 エコタイヤは減りが早いのか。
㈱九州錦運輸(大分県)が「エコタイヤの燃費と摩耗」について興味深い実験を行っている。実験に使われたのは、車両総重量25t、低床4軸の大型トラック。タイヤは12本(総輪)装着で、サスペンションはエアサス。通常の平均燃費はリッター2・9㎞。同一車両、同一運転者によるロングランテスト(約16万㎞)で、その走行ルートは一般道が50%、高速道が50%。タイヤの空気圧は9・0㎏/㎤に設定された。
 実験では、ミシュランとブリヂストン(BS)のエコタイヤを、それぞれ9~11月の3カ月間装着し、その間の燃費とタイヤの摩耗を計測した。結果として、燃費については、ミシュランのエコタイヤが2・7%改善、BSが6・2%改善した。

 実験では、タイヤの「摩耗1㎜で走れる距離」が計測され、結果はミシュランが1万8000㎞/㎜、BSが1万3500㎞/㎜だった。また、タイヤの1本あたりの寿命は、ミシュランが21万4200㎞、BSが17万4150㎞だった。
BSとミシュランのエコタイヤを比較すると、ミシュランが低燃費高寿命、BSが高燃費低寿命という結果となった。すなわち、燃費の良いエコタイヤは摩耗しやすく、燃費の良くないエコタイヤは長持ちするということとなった。
 あくまで、運送会社独自の検証結果であり、すべてのエコタイヤにこれが当てはまると限らないが、興味深い検証結果ではある。

 タイヤ事情に詳しいスリーウッド(奈良県桜井市)の森啓二代表は、エコタイヤについて次のように話す。
 「トラックのエコタイヤが摩耗しやすいというのは、タイヤのプロなら誰でも知っている。トラックの大きさ、運ぶ荷物、走る道路にもよるが、短いものだと8万㎞で寿命が来るエコタイヤもある。普通タイヤの寿命は10万㎞を超えるから、2割程度は寿命が短いことになる。ただし、その分、燃費は良くなるから、主に高速道路を利用する大手路線便のトラックは、好んでエコタイヤを使用している。そもそもエコタイヤは高速道路を走る長距離輸送で使うこと想定して作られており、タイヤの抵抗を少なくさするためタイヤの山(タイヤの溝)は低い」

 また、森代表は、「山を低くするとタイヤが熱を持ちやすくなるため、エコタイヤには発熱しにくいゴムが使われている。エコタイヤが『固い』といわれるのは、ゴムの性質が普通タイヤと異なるからだ。エコタイヤは高速道路走行の燃費改善を目的に作られているから、ブレーキや右左折を繰り返す地場運行(一般道メイン)のトラックに使えば、当然摩耗は早くなる。従来からエコタイヤを使っている会社は、こうしたタイヤの特性も分かっているのだろうが、最近、補助金を使ってエコタイヤを購入した会社は、そうしたことがわからない。したがって、地場のトラックにエコタイヤを装着するような『間違った用途』でエコタイヤを使い、タイヤの寿命を縮めているのだろう。行政も『環境に優しい』と言って補助金をばらまくだけでなく、エコタイヤの『用途』もきちんと説明するべきだ」と話していた。(8月7日号)

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