コロナの落ち込みから巻き返すタクシー 配車アプリが業界を一変
新人ドライバーでもベテラン並みに
タクシードライバーは稼げるーーそんな求人をよく見かけるようになった。配車アプリの普及により効率的に注文を受けられるため、入社したての経験の浅いドライバーでもベテランと変わらない収入を得ることができるようになっているようだ。コロナ禍で落ち込んだタクシー業界は復活しているのだろうか。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、タクシードライバーの平均年収は、2003年は約313万円、2013年は約300万円だったが、2022年は約360万円、2023年は約420万円と大幅な上昇を示している。
MKタクシー京都は新人の入社を後押しするのに、入社から6か月間、昼勤には「月給35万円+歩合給」、夜勤には「月給40万円+歩合給」という最低給与保証をつけている。
これまで高齢者の仕事というイメージだった業界が、新卒の就職先として有力視されるようになってきた。全国ハイヤー・タクシー連合会が行った新卒者乗務員採用状況によると、2022年度は、全国155の事業者で1068人の新卒者が採用されている。
この大きな要因として、ここ数年、「GO」やDiDi」といった配車アプリが業界に浸透し、配車が効率化していることが挙げられる。
日本城タクシー㈱(大阪市)の坂本篤紀社長は、「やはり配車アプリの影響が大きい。効率的な配車により経験が浅い人でもお客さんを見つけることができる。400~500万円は普通に稼げる。800~1000万円プレイヤーも登場している」と話した。
調査会社ICT総研は調査で、2024年末の全国のタクシー配車アプリの利用者数は1664万人と推計。アプリ普及と配車サービス登録車両の拡大により今後も利用者は増加し、2027年末には2055万人になると予測している。
大阪タクシー協会の井田信雄専務理事は、ドライバーの収入が増えていることを示す材料の一つとして、昨年4月からドライバーの数が増加に転じていることを挙げる。
大阪タクシーセンターの業務統計によると、2022年度まで、有効な運転者証交付数は減少傾向にあったが、2023年度は961の増加、2024年度は4月から10月までの7か月間で1017の増加となった。
運転手不足に悩む会社が多い中、稼働率100%に近い会社もあり、人材を確保できてる会社とそうでない会社に二極化しているようだ。
業界全体の業績には回復の兆しが出てきている。2019年度に約1兆5000億円だった営業収入は、コロナ禍の2020年度と2021年度は9000億円台に落ち込んでいたが、2022年度には約1兆2000億円に戻ってきた。
タクシーを運転するのに必要な二種免許取得要件の緩和も追い風になっている。二種免許取得には、「21歳以上かつ運転経験3年以上」という条件を満たす必要があるが、2022年5月から「受験資格特例教習」を受講することで「19歳以上かつ経験1年以上」での免許取得が可能になり、高校を卒業して間もない人でもタクシードライバーになれる道が開かれた。
コロナ後のインバウンド需要回復も後押ししていると考えられる。JNTO(日本政府観光局)の統計によると、2024年10月の訪日外国人数は331万2000人で、単月の過去最高記録となり、10月までの累計は3000万人を突破している。
関係者は、「タクシー会社は、現役ドライバーによる座談会や運転手の仕事体験会を開催し、新人でも高収入が可能なことや、多様な人々と交流できる業界の魅力をアピールしている。若い世代を中心としたドライバーを増やせるかどうかに業界の今後がかかっているかもしれない」と話す。(1月6日号)
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