全従業員がイデコに加入 老後の人生設計共に考え
関西のある運送会社では、2年前から全従業員が個人型確定拠出年金・イデコ(iDeCo、)に加入している。イデコは、国の年金とは別に、自分で老後資金を作るための私的年金制度である。
毎月掛金を積み立てて運用をし、積み立てた金額や運用益を60歳以降に老齢給付金として受け取れる制度。自分で決めた掛金を拠出(掛金の払い込み)した後、投資信託や保険、定期預金などで掛金を運用し、老後資金を準備していく。
また、同社では、イデコプラスを採用している。イデコプラスは、従業員が加入するイデコに、限度額2万3000円の範囲内で拠出する掛金に事業主が上乗せして掛金を拠出できる制度だ。事業主が福利厚生の一環として導入する制度であり、節税対策としても期待できる。
同社の場合、社員全員がイデコプラスが適用されており、事業主の掛金は月額最低4000最大1万円で、在籍年数に応じて2年ごとに1000円ずつアップする。
導入にあたり、社内規定の整備や従業員へ説明し、従業員の代表者との合意を取り付けた。企業年金と違い、イデコ、イデコプラスは、運用するのも運用のための手数料を支払うのも、事業主ではなく従業員本人だ。
また、事業主が負担する掛金額は経費にでき、全額が損金に算入できるという税制上の優遇を得られる。
注意が必要なのはイデコ専用口座を開設すると、初期費用と毎月の口座管理手数料がかかること。
初期費用はほとんどの金融機関が2829円で横並びだが、毎月の口座管理手数料は最も安い金融機関で171円、高いところだと589円で、その差は1ヶ月418円(1年間で5016円、10年間で5万160円)にもなる。
中小企業では、「企業年金」の制度を導入していないところも多い。
厚生労働省が公表している「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、月々の年金平均受給額は、国民年金がおよそ5万6000円、厚生年金がおよそ14万6000円。
毎月年金を20万円受け取るためには、現役時代700万円以上の収入を得る必要があるというのだから、老後に漠然と不安を抱いている人は多い。
社長は、老後を見据えた人生設計を、従業員ひとりひとりと向き合い共に考えていった結果、思わぬ副産物があったという。それは、「従業員が、仕事との向き合い方と自身の健康に対して、意識が変わったこと」と話し、従業員はお金や健康に意識が高くなり、目標を立ててポジティブになったと話す。(9月4日号)