広がるスキマバイトで人材確保
44%を物流が占める
荷役分離や引越業での活用多く
空き時間を使って短時間働く「スキマバイト」が広まっている。スキマバイトを活用しようという動きは、人材不足の運送業界内でも見られ、大手運送会社や引越会社を中心に広がりつつある。
スキマバイトはスポットワークとも呼ばれ、「働きたい時間」と、事業者側の「働いて欲しい時間」とをマッチングするサービス。ユーザーがアプリに登録し、そこから自分の条件に合った仕事を探し、応募する。履歴書や面接は不要で、1日数時間だけといった短時間の働き方が可能だ。
国内では多くのスキマバイトサービスが展開されているが、その中でも最も規模が大きいのがタイミー。㈱タイミー(東京都)が運営するタイミーは、ユーザー数は900万人超、6万6000社で導入されている。勤務時間は1時間からで、企業側の前日掲載も可能で、マッチング率は90%を超える。
社会保険が不要な範囲内で働けるサービスで、ユーザーが申し込める仕事は1日1件まで、就労時間は週39時間未満となっている。また、一つの企業からの報酬は月7万8000円未満、年間28万未満に制限され、それ以上はその事業者で働くことはできない。
事業者側は、ユーザーの情報を確認でき、良いと思ったユーザーを指名することが可能。気に入ったユーザーをスカウトすることもできる。
タイミーの派遣先で最も多いのが物流で、同社の有価証券報告書によると、今年4月の1か月間の集計で全体の44%を物流が占めていた。
物流大手もタイミーに関心を示しており、6月にセンコーが同社と共同でスポットワーカーを中心とした物流センター運営の実証実験を実施。タイミーの活用によって荷役分離を実現し、ドライバーの負担軽減につなげようと期待している。
実際にタイミーを活用している大手運送事業者に話を伺ったところ、多くが引越作業や倉庫内作業でスキマバイトの人員募集を行っている。倉庫内作業では、ピッキングや梱包といった資格や免許が不要な作業を中心に募集が行われている。
フォークリフトなど資格が必要な部分は自社のスタッフでまかない、単純作業かつ人出が多く必要とされる作業をスキマバイトでカバーする形だ。
愛知県のある引越事業者では、遠距離での引越作業の際に、現地で作業を行うスタッフをタイミーで募集している。力仕事のため応募は男性が多いが、年齢層は特定の年代に偏らず学生から年配の方まで集まるという。
同社の業務部長は、「引越業界の中には自社スタッフのみにこだわっている事業者もあるが、スキマバイトのサービスを活用している事業者も数多く存在している。引越業界には欠かせない存在になっている」と話す。
こういった短期バイトで、懸念事項としてあげられるのが、応募者の当日欠席だ。
先ほどの引越事業者では「4時間の引越作業の場合、2時間の募集を2件かけることでリスクを分散する」という措置を取っている。また、1人でも人員が欠けると現場が回せなくなるような組み方をせず、ある程度ゆとりを持った人員配置を行うことで対策している。
大手や引越事業者でスキマバイトの活用が広まっている一方で、中小では活用をためらう声も見られる。
多く聞かれたのが、仕事内容の教育について。スキマバイトは未経験の人も多く、単発かつ短時間の人材に仕事を教えるのは非効率的とする声があった。一度来た人がリピーターになってくれる保証もなく、それなら自社のスタッフだけで仕事を回す方がかえって効率的だという。
スキマバイトで集まる人材の質を不安視する声は少なくないが、人手不足の中、今後、物流の分野でさらに広がる可能性はある。(11月18日号)