統計力学メモ①~統計力学の導入と等重率とアンサンブル~
はじめに
まず初めにこのnoteを作ろうと思った理由はアウトプットを通して自分の理解を深めるためであり、他の人に見てもらうことで理解の間違いを正すためである。そのためこの記事を読んだ人はどんどん指摘や質問をしてほしい。
統計力学に範囲を絞ったのも特に理由は無く、単に今勉強しているからだというだけである。そのためもし暇が有ったらもっと体系的にまとめるかもしれない。
初学者+かなりの感覚派なので間違い+厳密性の欠けは多々見られると思うが赦して欲しい。筆者的に定量的な議論は大前提だが、定性的な議論、または嚙み砕かれた説明の方が好きなので初めての人にも分かりやすいように説明するよう心掛けたい。
なおこの記事は益川敏英監修の「統計力学」を参考にしている。
統計力学の気持ち
まず始めに新たな学問に入る時にありがちな導入から始めようと思う。
統計力学の本質を大まかに説明するとするとざっくり統計力学とは「人間の観測能力の無さをカバーする学問」である。もっと説明しよう。
古典力学においては一つや二つの粒子の運動を追う。もっと多くの粒子を追う事もあるぞ!という方もいるかもしれないが、それは本質ではないのでまだ話を聞いてほしい。
重要なのは運動方程式しかり古典力学では全ての情報、例えば位置や運動量を追っていこうという気概を持っているということである(実際に追えるかどうかは関係なく)。これはつまり粒子一つ一つにラベリングがあり、座標と運動量を定めているということである。
この方法はとても正確であり、もしこれが完全に全ての粒子において適用できれば理想的だが、現実的には不可能な事がほとんどである。
それに対し統計力学は逆の立場を取っていると言えると思う。統計力学においては粒子にラベリングは無く他の情報(例えばエネルギーがポピュラーである)にラベルを付け、その粒子の数に注目する。「このエネルギーを持つ粒子はa個あってあのエネルギーを持つ粒子はb個あるなァ~」という感じである。
数(分布ともいえる)を追うということで統計感が出てきたろう!ここでもしエネルギー以外、例えば磁化などでも区別がつくとしたら、さらにこの数は細分化されるだろう。さらに他の情報で区別がつくとしたらさらに細分化…という風についには粒子一つずつの分布となって古典力学となんら変わらなくなるだろう。
これを例えると人を身長ごとにグループ分けするようなものである。160,170,180cmなど10cmごとにグループ分けすると一つのグループにはそれなりに人が入るだろう。1cmごとにグループ分けすると一つのグループの人数はさらに少なくなる。
さらに1mm,0.1mmごとにグループ分けをしていって0.00000000000001mmごとぐらいにグループ分けしていけば我が大学の学生くらいは一人一人ラベリングできるだろう。だがそれは人間の測定能力では不可能ではなかろうか。
そう!その通り!人間の測定能力では不可能なのである!まあ無理だからしょうがないよね!これが統計力学の気持ちである。
エントロピーという‟乱雑さ”と度々結び付けられる指標がこれからも度々用いられるが、これを使うのは人間の能力不足な故である。
エネルギーEnによってラベリングされた粒子のグループの中には様々な個性を持った粒子が入っていて乱雑なように見えるが、一つ一つの粒子の区別がつくのであれば全く乱雑ではなく、エントロピーはゼロになる。
人間も同じ部屋に入れておくとわちゃわちゃするが、部屋を分ければぶつかり合うことはないだろう(この例えは違う気がする)。
このエントロピーの話はまた後ですることになるだろう。
等重率の原理とアンサンブル
あまり一つの記事が長くなるのは嫌なのでこれからの議論の根底となる原理である等重率の原理と統計力学において使われるモデルである3つのアンサンブルについて説明して本記事を終わらせようと思う。
等重率の原理
さて、統計力学の感覚について説明してきたがいざ統計力学について式を構築していこうとした時にどのようなことを足がかりにしていこうか困ってくる。そういう時に助けてくれるのが原理である。今回全ての基盤となる原理は等重率の原理だ。その概要を以下に示す。
これからも使うであろうことは上のように枠に入れておいて目立つようにし、いつでも戻ってきたときに目につくようにしようと思う。
全く区別できないくらいぐちゃぐちゃになっている集合から一つを選び取る時には一つ一つの選ぶ確率は全く等しい、というのがこの等重率の原理エッセンスであろう。
ま、確率に関係するのは粒子の数のみであり、何か選び取られやすいような粒子があることはないということで良いに違いない。我々が計算しやすいように計算できるのでやりやすくていいね!と思うが、この原理からスタートしているということはいつも頭の片隅に置いておこう。でも結論いつも通りの確率の求め方の感じで大丈夫っちゅうことよ(コインの裏表が1/2の確率ってことと同じってこと)。
3つのアンサンブル
アンサンブル、という言葉を知らない諸君もいるかもしれないので説明するとアンサンブルとは集合とほぼ同じことだ、と解釈している。アンサンブルも知らない人にも僕は門戸を開いているよ。安心したまえ君たち。
まず、なんでアンサンブルを考えようとしているの?という疑問を統計力学初心者の君たちは持っているだろう。
想像して欲しい。先ほど等重率の原理という統計力学を戦い抜くための武器を手に入れた。じゃあそれを活かして一狩りいこうぜ!ということになるだろう。
ただ武器しか持たず、動き回る大地が無ければ意味がない。今からそれを使いこなすためのフィールドというかプラットフォームというか、をアンサンブルを定義して作ろうとしているところなのだ。
このアンサンブル、実は3つある。本当はもっとあるのかも。でも今自分が学んでいるところまでだと3つ。その3種類だけ書けば今回はいいだろう。
ミクロカノニカルアンサンブル
これから3つのアンサンブルについて簡単な方から一つずつ紹介していく。つまりアンサンブル初級、中級、上級を紹介するということだ。まぁ結局全て使いこなせなければ意味ないのだが。と、いう訳でこのミクロカノニカルアンサンブルは「いろはのい」である。
ミクロカノニカルアンサンブルを一言で言うのであれば「孤立系」である。孤立系とはつまりエネルギーが同じ集合であるということである(言い換え方法を何個か持ってることは大事)。
カノニカルアンサンブル
「いろはのろ」カノニカルアンサンブルである。これも一言で表そう。それは「熱浴」である。熱浴というのはつまり気温と同じで何かミクロな作用があったとしても温度が変わらないような部分形のことである。その熱源と接触させた部分形をカノニカルアンサンブルという。
と、まざまざと書いてきたが一言ピシッとこのアンサンブルを表現しよう。ズバリ温度が一定な集合である!簡単でしょ?
グランドカノニカルアンサンブル
ラスト、「いろはのは」である。グランドカノニカルのキーワードは「粒子浴」、熱浴の粒子バージョンである。でも粒子数が一定になるという訳ではない。むしろ粒子の行き来が可能になるということである。
ただ、何の法則もなく粒子が行き来するわけでない。化学ポテンシャルというものを知っているだろうか。これは外から粒子を推す力が作るポテンシャルだと思ってくれていいだろう。この化学ポテンシャルにより粒子の行き来の激しさを決めているのである。
ではこの三つのアンサンブルについてまとめておこう。
これからも使っていくであろう概念であるので忘れたらまたここに戻ってこよう。
さて、最初の記事はこんなものでいいだろう。最初だから張り切ってしまったかもしれない。次回からはもう少し少な目になるだろう。次回からは三つのアンサンブルについて学びながらその他の統計力学の重要な式について考察していこう。
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