綿業会館の喫茶付き見学会に参加してきた
大正後期から昭和初期にかけて、大阪が東京を凌ぐ世界有数の大都市だった「大大阪時代(だいおおさかじだい)」。その時代の大阪の栄華をよく物語るのがこの船場に建つ綿業会館です。
こちらは紡績・繊維業界関係者たちの会員制倶楽部である日本綿業倶楽部の建物であり、会員たちの交流のためのサロンなので普段は一般の人は入れませんが、見学会というのを月イチで開いてくれてます。
コロナで見学会も中止になってましたが復活し、さらに今年TVドラマで取り上げられ認知度が上がったことで見学会の回数も増えたので、これを機に申し込みをいたしました。
回数は増えたものの、希望者も増えたので申し込めば参加できるというわけでもなく抽選制になっており、私も一度ランチ付き見学会で落選し、今回の喫茶付き見学会でようやく参加となった次第です。
昨年までは内部の写真をSNSで公開することは基本禁止だったとのことで、見学会参加者のレポートなどもあまり見られませんでした。なので、せっかく写真もバシバシ撮ったのでnoteにまとめようと思いまーす。
本館1階 会員食堂
入り口で受付をし、まずは入って右側にあるこちらの会員食堂に集まり喫茶タイム。いきなり麗しすぎる空間でビビる。
館内の時計は配線を通じて一括で時刻調整ができるシステムが整っているらしい。また、照明は近年LED化を進めてるとのこと。この会員食堂もなるべく以前の電球に近い色を選んだけど、昔からの会員様からは、やはり全然違う、と言われるとか。特に夏の日差しが差し込む時にはLEDだと白っぽくなりすぎるそうです。
文化財なので、LEDに変更するなど変更・改修するには逐一文化庁の許可が必要みたい。
また、石のように見える壁は吸音材を用いた壁になってて、カトラリーの音が響きにくい仕様になっているなど、かなり当時の最先端のつくりのようです。叩くと確かに石ではない軽〜い音がしました。
…というようなガイドを受けつつ館内をめぐるツアーだったんですが、色々ウロおぼえだし、この調子で説明していく自信がないのでもっと適当にいきます。ここに書かれている内容をあまり信じないでください。
喫茶タイムが終わり次第、館内をめぐるガイドツアーが始まります。
玄関ホール
銅像になってる岡常夫氏の「日本綿業の進歩と発展を図るため」という遺言と100万円(現在の価値で50億!)の寄付、そして業界からの醸出金50万により、この綿業会館は建設された…と聞くと、ちょっとお金の使い方間違ってませんか??という気にもなるが、お陰様でこうして伊達や酔狂でできるようなレベルじゃない建築物を楽しませてもらってるのでありがたいっちゃありがたい。それに人のお金の使い方にとやかくいうものじゃありませんね。
この玄関ホールにある岡常夫氏の銅像は、戦争中の金属供出で国に没収されたんだけど、どっかに型がちゃんと残してあったので戦後無事そのままの形に復元できたそうです。シャンデリアもそんな感じでもってかれちゃったので、こちらは復元できずに当時とはもうデザインが異なっちゃってる…という話だった。確か。さらに、没収対象ではない錫を使った手すりは当時のままだそうです。
見学時には、そういった時代背景や歴史にも思いを馳せましょう。
本館3階 談話室
この部屋は入った瞬間ド興奮した。圧倒的豪華さ…!
奥の壁一角に、天井までびっしり泰山タイルが貼り付けられてます。
タイルは設計者の渡辺節が1枚1枚貼る場所を決めたとか。こだわり方がすごい。というか怖い。
泰山タイルについては詳しくはコチラを↓
私が先日見学に行った橋本遊郭の建物にも泰山タイルが使われているらしいけど詳しくはわからん。たしかにそれっぽいタイルはあった。
先見の明というかなんというか、このフランス製の耐火ワイヤーガラスを使用していたおかげで昭和20年の大阪大空襲で周辺が焼け野原になっても、この綿業会館はほぼ無傷で済んだそうです。
タイルタペストリーの逆側には、これまた優美な階段がついてます。
本館3階 貴賓室(特別室)
そう広くない部屋の中央のテーブルまわりに見学者全員が集っていたので、部屋全体の写真を撮り逃した。クイーンアン・スタイルのお部屋はどんなだろ?と気になる人は各自ググってみてください。
本館3階 会議室
貴賓室のお隣、ドアを閉めると会議室側のドアは鏡になってて、鏡が向かい合わせになる形になるので通称「鏡の間」と呼ばれるそう。
本館7階 大会場
ステージ部分や床の色、アーチ状の天井などが昔の小学校の体育館を思わせるからか、これまで見てきた部屋に比べて地味に見えるからか、見学者の多くがあんまり興味なさげで、そんなにカメラも構えてなかったんだけど、私はここのステージまわりのデザイン震えるくらい好き!めちゃくちゃカワイイ!!!
急にここだけ普通の会議机とパイプ椅子が並べてあって雰囲気を壊すんだけど、この辺がリアルに今も日常的に使用されてることを物語ってて、それはそれで喜ばしい。
新館側にも大会場があるようだけど、そちらの見学はナシ。というか新館側の見学は一切ナシ。新館側には普通にテナントとして色々な会社が入ってるそうです。
では本館と新館の間部分にあるロビーを通ってエレベーターに乗って1階に戻り、次は本館地下へと向かいます。
本館1階〜地下 螺旋階段
渡辺節事務所にいた村野藤吾が綿業会館の建設に参加していたのもあり、この階段は村野藤吾デザインと思われていたようですが、村野藤吾研究者の大学教授の指摘により、この階段は戦後の渡辺事務所による改修で設けられたものであり、村野藤吾風にデザインされた渡辺節の息子の手によるものと最近になって訂正されたそうです。
本館地下 グリル
こちらのグリルは会員&同伴者専用ですが、見学者は「会員食堂利用券」がもらえました。これを使えば会員風の顔をしてこちらに潜りこめます。ただし会員より10%値段はアップ。メニューももらったので見てみると、「広島産牡蠣フライ ソースタルタル(スープ・サラダ・デザート・パン・コーヒー付き)」3650円、「ハンバーグステーキ 特製デミグラスソース(同)」4000円…って感じです。1回くらいなら来てみたい。またこの建物に入れるし。
以上で、ツアーは終了。ケーキを食べた最初の会員食堂に戻って荷物を引き上げ退散します。喫茶30分、ツアー1時間15分程度の見学会でした。
今回の喫茶付きガイドツアー、ガイドの方のお話がうまくて非常に楽しくあっという間の2時間弱でした!素晴らしい建築物を撮影OKで見させていただき感謝です。
あと参加者がみなさんちゃんと建物の見学目的に来ている落ち着いた方々ばかりでそれもよかったです。最近こういった素敵建築物に行くと、「素敵な場所にいる自分自身」の撮影ばかりに熱心になってる人がいて、こちらが写り込まないよう無駄に気を使わなきゃいけなくて見学が楽しめないこともあるので…。
ここにしたためた以外にも、美しい調度品やガイドさんの詳しい説明がたくさんありますし、実際に見てみるとより当時の空気感が感じられるので気になったかたはぜひ参加してみてください!
https://mengyo-club.jp/blog/event/room-tour