自意識とバンドTと私①1989〜90年代前半、中高生時代編
バンドTシャツとの向き合い方には人それぞれ異なったスタンスがあるだろう。そしてそれは状況や時間の経過によっても変化していく。
ライブに行く時用ではなく「普段着としてのバンドT」。
自分自身はバンドTにどのように接してきたか、過去を思い出しながら書き記していきたい。
初めてのバンドT
1989年〜90年頃、ガンズ・アンド・ローゼズのアペタイト・フォー・ディストラクションのジャケがプリントされた長袖Tシャツを買った。
実際ガンズは聴いてたけど、どうしてもガンズTシャツが着たかったわけではない。ドクロと十字架のデザインがなんかカッコよかった。といういわゆる厨二的なアレが一番の理由だったと思う。
当時、地方の繁華街ではベンクーガなどの変形学生服や龍の絵柄の裏ボタンを売っているヤンキー御用達の店があり、そういうお店の店頭でこういったバンドT(もちろん無許可のモノでペラッペラで安い)が売られていた。
同じくその店に置かれたセックス・ピストルズのTシャツ見て、『かっこええけどこんなん(「Sex」)書いてある服なんか着れへんよな〜』なんて友達と話してた覚えがある。これは中学生あるある話だと思う。
そんな友達はローリング・ストーンズのベロマークがデザインされた長Tを買ってたような気がする。友達は別にストーンズファンではなかった。あのベロマークがついた服を当時のロックっぽいバンドマンの誰かが着ててカッコよかった、くらいの理由だと思う。
少なくとも自分の観測範囲では、近場で手に入るバンドTはこの店で売ってるBOØWYや洋楽ロック・パンク・HR/HMの有名どころのものであり、完全にヤンキー文化の中のものであった。
今書いてて思い出したけど、プリプリのダイアモンドのジャケで中山加奈子さんがガンズのTシャツを着てたのも購入に影響あった気がする。地方中学生にはZELDAやましてやメスカリン・ドライヴなどがいきなり届くことはなく、最初に知るガールズバンドの見本がプリプリであった。
BOØWY(すでに解散後)は大好きなんだけど、その頃BOØWYのTシャツを着るのは恥ずかしいという自意識が芽生えていて、洋楽のガンズのTシャツはカッコよくてオシャレ!という気持ちが自分にあったのは確か。
そのバンドが大好きだからではなく、ロック好きな不良っぽさの演出として取り入れていた。
そしてこういう長Tはもちろんフリーサイズのワンサイズ。質の悪いペラペラ長Tをダッボダボで着ていてお母さんにだらしないからやめなと言われていた。
この頃にはオーバーサイズがおしゃれという概念はなかったし、着こなすセンスも持ち合わせていなかったので普通にめちゃくちゃダサかったと思う。今ならお母さんが買ってくれるジャスコのサイズぴったり子供服のがなんぼかよかったとわかる。
ちなみに2018年のソニマニ会場でガンズTシャツを着てる若者をやたら多く目にし、上記のようなヤンキー文脈でガンズTを捉えてた自分は動揺した。90年代バンドTブームによるものか2017年の来日による影響なのか、それこそ各々に着る理由はあるのだろう。
バンドT着ない期
上記ガンズ長T以降は、ロック・不良っぽさアピールとしてのバンドTへの興味は薄れ、しばらくバンドTを買った記憶がない。ヤンキー気質の強い私の地元でも90年代に入るとヤンキー文化がグッと廃れていき、その唯一バンドTを扱っていたヤンキー御用達ショップ=ダサイ、というイメージになったのも一因かもしれない。
好きなバンド・ミュージシャンは増えていく中で、90年代前半の高校生の頃の私は好きなバンドの服を着るという行為はほぼなかった。
コーネリアスのランドルト環みたいなTシャツは欲しいと思ってた気もするが、入手しようとしていた思い出も一切無い。ライブの物販でもないと買えなかったからかなー。あとそういったオフィシャルのTシャツは、高校生の小遣いで普段着として買うには高かったというのもあるかもしれない。
その頃、高校生が着るプリントもののTシャツはキャタピラーやベン・デイビスなどのワーク系やシカゴ・ブルズ等NBAものが流行ってて、もちろん海外の古着ではなく、大量生産品の安いものがたくさん売っていた。それこそ、そのチームのファンでもないのに着ていた子が多かったと思う。私も露ほど野球に興味ないくせにニューヨーク・ヤンキースのキャップを被っていたことを今、昨日のことのように思い出した。いや、ホワイトソックスだったかもしれない。それくらい思い入れゼロで被っていた。シカゴ・ブルズのマークも見るとほんのり懐かしい気持ちになるので、多分部活用Tシャツとして着てた。
古着ブームはおらが村にも押し寄せ、古着屋もでき始めそこでは海外のバンドTも扱われていた。昨今90年代ヴィンテージバンドTとして高値がついているのはこの時代のものではなかろうか。
当時女子のTシャツはキュートなピタT全盛期であり、古着屋で扱われてたバンドTといえばとにかく黒くてハードめデザインでサイズがデカいものばかりだったので、JKが着まわし考えてチョイスするには色々とハードルが高かったような気がする。私も古着屋ではキッズ用しか見てなかった記憶。
とにかく90年代前半の私は、平均よりは音楽好きだったと思うが、服の好みとして「バンドのTシャツを着る」という考え自体あまり持ち合わせてなかったように思う。
(追記)
…と中高生時代編を上記までで一回〆たものの、その後病院で感染性廃棄物のバイオハザードマークを見て、ビガビガッと記憶が蘇った。1993~4年の高校生の頃、アメリカのハードコアバンド・バイオハザードのライブ動画を見てカッコイイ…と心を撃ち抜かれてあのバイオハザードマークのTシャツを欲しがっていた時期があった。(ちなみにゲームのバイオハザードが発売されるのは1996年)
ついでにスイサイダルテンデンシーズのキャップも欲しかった気がする。バイオハザードに関してはライブ映像での客の自由さが衝撃的で痺れるも、音楽性にそこまでハマったわけではなかったので、あのマークのなんとなくのカッコ良さ含めて、中学生時代のガンズTを欲した時の心に近かった気がする。スイサイダルに関しても、聴いてそこまでハマってたわけではなかったのでファッションとしてカッコイイと思ってた部分も大きかったのだろう。身につけるならハードコア系がなんかいい、と感じていた時期があったことは確かだ。
ただパンク・ハードコア系のTシャツはデザイン的にカッコいいものが多いが同時にメッセージ性も強いので、その音楽性さらには思想が好きではないと着るのは厳しいな、というのは感じ取っていた。
そして90年代半ばからは自意識が邪魔してバンドT着れない期に入っていく…。
次回につづく!
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