RECREATION
アカは言った。「知ってのとおり、名古屋は規模からいえば日本でも有数の大都会だが、同時に狭い街でもある。人は多く、産業も盛んで、ものは豊富だが、選択肢は意外に少ない。おれたちのような人間が自分に正直に生きていくのは、ここではそう簡単なことじゃない。・・・なあ、こういうのって大いなるパラドックスだとは思わないか。おれたちは人生の過程で真の自分を少しずつ発見していく。そして発見すればするほど、自分を喪失していく」(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』より)
■ジャーナリング
電気を消す。パチン、オフ。きみの身の赴くままに。たゆたう。ここは海で、僕はそこで浮かんでいる。退屈している。浮き輪をするりと抜けて、海へと沈むことを考える。海面に差さって揺れる太陽の光を、ただ見つめている。そこは海であり、空であってほしい。沈んだと思ったら、宙に浮かんでいる。浮かんでいると思ったら、深い底にいる。自分がいまどこにいるのか、分からないまま死んでいきたい。分からないまま息をしたい。
生まれてからも何度か、海を感じたことがあった。
きみはどちらがいい?そこでは守られている。けれど狭い。自分の肺を動かすことは、楽しいことかもしれないよ。いつまでもそこにいるわけにはいかないんだ。理不尽だけど、実は「理」がないのが理なんだ。僕はそれを自分に言い聞かせている。そしてなるべく、それとなく、君にも伝えていきたいと思う。
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