TakeshiYoshida

173cm 69kg/Judo Black Belt/Kamakura Gymnasium

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希望の春

集中治療室 (ICU ) 一日めで、両どなりのうちの三人が亡くなった。 看護師のあいだでは笑いがたえない。ふた袋のポテトチップスをほお張って2交替勤務にはいる男性の看護師、「イトウさん、大変だったね。ゆっくり眠ってね」と言った瞬間かん高く笑う昭和大学短期大学部看護学科21才(知らんけど)女性、ソプラノ的な歌を歌い続ける吉村志穂クラスとさまざまだ。 しかし、その狂気と酸素と麻酔のはざまにいるぼくたちもやはり ...。 医師は上の階で指示をだしているようで、誰かが死んだらお

    • 立体靴下をめぐる冒険

      午後5時、退社して駅へ向かう。社員通用口へのエレベーターを降りるたびに、僕の勝ち目が薄れていることに気がつく。なかなか考えがまとまらないときにそうするように、溜池山王まで歩くことにする。六本木交差点を抜け、赤坂見附付近に向かってどんどん歩く。そろそろ、ダブリナーズが見えてくる頃だ。生ギネスが飲みたい。よろよろ歩くうちに、ふと、見かけない看板が目に入ってきた。近づいてみる。白地に赤いペンキで殴り書きのような文字が目に入る。 「立体靴下専門店」 立体靴下…。ふむ…。立体靴下?

      • 猫の名前

        9才から二十歳くらいのときに、実家で猫を飼っていた。死んだときは、本当に悲しかった。 ある日、僕が縁側で納豆掛けご飯を食べていると、猫はひょいと隣家との柵から顔をのぞかせ、こちらを見た。3秒くらい見つめ合っていたように思う。そして猫はそのまま優雅な足取りで僕のほうまで来て、膝の上に乗ってごろんごろんとじゃれた。試しに、僕が食べていた納豆掛けご飯をあげたら、こういうの前から食べているよという風に食べた。もしかしたら彼は長旅を経て、我が家にやってきたのかもしれない。彼にはなんだ

        • 村上春樹ミックス

          生きるためには考え続けなくちゃならない。明日の天気のことから 、風呂の栓のサイズまでね。 三人目の相手は大学の図書館で知り合った仏文科の女子学生だったが 、彼女は翌年の春休みにテニス・コ ートの脇にあるみすぼらしい雑木林の中で首を吊って死んだ。彼女の死体は新学期が始まるまで誰にも気づかれず 、まるまる二週間風に吹かれてぶら下がっていた。今では日が暮れると誰もその林には近づかない。 何故彼女が死んだのかは誰にもわからない。彼女自身もわかっていたのかどうかさえ怪しいものだ 、

          書くことの不安 (『波』誌より転載)

          人は文章を書く。書いては書きなおす。さらに書きなおしてやがて完成ということになる。だが、不意に奇妙な疑問に捉えられる。この文章を書いたのは、本当に私だろうか。確かにひとつの想念に捉えられていたのは私だ。その想念が一つの文章になったのだ。だが、想念と文章とは正確に一致しているのだろうか。いや、そもそもかつて捉えられていた想念というのは、つまり今では文章から遡って思い描かれるほかない想念でしかないのだが、それは果たしてかつて私が捉えられていたというあの想念なのだろうか。そもそもそ

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          ラバー・ソウル

          夕方にポールズ・バーで探していたビートルズのシングル「ドライブ・マイ・カー」を、今YouTube で探している。 この曲は好きで、繰り返しステレオで聴いていた。つまり、当時の彼女の部屋でということになる。 この曲が収められた『ラバー・ソウル』には、村上春樹の小説と同じタイトルの「ノルウェイの森」という曲も入っている。小説のほうは何人かが死ぬ話だ。曲の歌詞ではたぶん誰も死なない。 彼女は「死ぬまでの行為に興味がある」と言っていた。「死ぬ衝動を抑えきれない」とも言った。 僕が

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