長寿寺 可愛い動物の置物
琵琶湖の南、滋賀県湖南市にある、天台宗のお寺です。
大変古いお寺で、本堂は国宝です。収蔵庫の中にいらっしゃる、丈六の阿弥陀如来様の他にも、何体もの重要文化財の仏様がいらっしゃいます。
すぐ隣の長寿寺の鎮守社、白山神社の拝殿も、重要文化財です。
春は新緑がきれいです。夏は伺ったことがありませんが、秋になり、境内あちこちに植えられたカエデが一斉に色づくと、たくさんの参拝者が訪れます。そして、冬になり、木の葉がすべて落ちると、山門からすぐ本堂が見え、その景色がまた、素敵です。
歴史もあり、いつお邪魔しても、その時々に、風情があるお寺なのです。
でも、このお寺にはもう一つ、他にはない大きな魅力があります。
それは、参道の両脇にさり気なく並べられた、かわいい動物などの置物です。入口にはたぬきさんがいます。山から流れてくる小さな沢には、いくつもカエルが置かれています。また、本堂の近くには石づくりのフクロウが石づくりのとまり木にとまっています。これらの動物は、いくつかがまとまって置かれているので、じっと見ていると、動物同士の会話が聞こえてきそうです。さらに、小さなお地蔵さんもあちこちにお祀りされています。
そのそれぞれが、どなたかが、お寺の為に特別に作られたものと云うより、私達が普段、お店で目にするものなのです。これらは全て、御住職の奥様が、拝観に来られた人が、少しでも過ごしやすい様にと考えられ、置かれているのだそうです。
また、本堂や阿弥陀如来様が祀られている収蔵庫の周りには、さまざまな草花が四季折々の花を咲かせているのですが、これも奥様がこつこつと植えられたものだそうです。
さらに、あちこちに掛けられている拝観者へのお知らせ等も、その多くは手書きです。
そして、手水舎には、洗いたての清潔なタオルが掛けられています。本堂にはスロープが有り、参道のあちこちに、椅子が有ります。
とにかく境内の隅々にまで、拝観者への心くばり、人の手の温もりが感じられるのです。それらが特に、お金をかけて飾り立てたりするような感じでは無いので、このお寺を訪れた人たちはほっこりし、和まされるのです。
それが、他のお寺には無い、長寿寺だけの大きな魅力だと思います。
ところで、このお寺には室町時代、仁王門と三重塔がありました。しかし、それらを両方とも、戦国の武将、織田信長が持って行ってしまったそうです。(三重塔は安土城跡に今でも建っています。)そんなお話を、奥様が、「もうほんとに」等と憤慨されながら、最近あったことの様に話されるのを聞かせて頂いていると、織田信長という歴史上の人物が、何だか身近に思えてきて、とても不思議な感じがしました。