一心寺 お骨仏
大阪ではよく名前を耳にするお寺なので、近くを通りかかった時、お参りに立ち寄りました。
まず最初に思ったのは、お彼岸でもないのに、なぜこのお寺にはこんなに人が多いのだろう?と云うことでした。
その疑問は、頂いたパンフレットを読んですぐに解けました。
このお寺に人が多い理由は、恐らく大阪ではこのお寺にしかないものがあるからでした。
実は、このお寺は亡くなった方のご遺骨を預かり、そのご遺骨で仏様を作ってお祀りしているお寺なのです。
「粉末にしたご遺骨以外は固める為の布海苔だけです」、と係の方がおっしゃっていました。骨で出来ているので、出来たばかりの時は白いのですが、線香やろうそくの煤でだんだん黒くなるのだそうです。
太平洋戦争の時、空襲で6体のお骨仏様が焼けてしまい、現在、8体のお骨仏様がお祀りされています。お骨仏様は基本は阿弥陀如来様のお姿ですが、お顔もお身体も一体ずつ違っています。
ところで、どうしてこのお寺はお骨仏を作るようになったかと言えば、次の様な理由からです。
昔から、多くのお寺では、施餓鬼(せがき)という先祖供養の行事をしますが、通常、それは年に一回です。ですが、このお寺では、江戸時代、地方から大阪に奉公に来て、菩提寺やお墓のないの多くの人の為に、毎日、施餓鬼の法要をすることにしたそうです。すると、たくさんのご遺骨が集まるようになり、明治20年になって、たくさんのご遺骨をどうするかを考えられた当時の御住職が、ご遺骨で仏様を作ることを思いつかれたそうです。。
これなら、仏様をお参りすると同時に先祖供養もできる。と云うことで、それ以来、10年毎にお骨仏を作ることになったそうです。ちなみに、次のお骨仏は2027年開眼予定だそうです。
現在では、交通の便が悪い場所にあるお墓を、お参りがしにくいなどの理由で、墓じまいする方が増えています。その点、都心にあり、駅からすぐ近くにある一心寺はお参りするのに大変便利なので、そういった方に人気があるようです。
でも、そんな話を聞いて心配になったことがあります。10年に一体ずつ作るとしても、何百年か先には安置するところが無くなってしまうのではないか、と云うことです。
祥月命日にお墓の前で故人を偲び、思い出にふけったり、また、故人と話をしたりといったことが当たり前の、私の様な古い人間にとっては、少し受け入れがたい気がするのも事実です。
しかし、高額な永代供養料や少子化のことを考えると、今の時代には必要なのだと思います。。
お参りを終え、青銅製の現代彫刻の様な仁王様が見下ろしている、ガラスと鉄骨で出来た近代的な山門を、複雑な思いでくぐりました。