「まだ、そう遠くへは行っていない」
(コウガイビルという名前の生き物が出てきます。写真は載せていませんが、人によっては、お嫌いな方もいらっしゃると思います。お調べになる時はご注意下さい。念の為おことわりさせていただきます)
子どもがまだ小学生の時のことです。
早川いくをさんの「へんないきもの」という本の話を子どもたちにしていたところ、
子どもが、「それ、学校にいる」というではないですか。
それとは、コウガイビルのことです。
ヒルという名がついていますが、理科の教科書に出ているプラナリアに近い仲間です。
陸性で、湿った場所の石の下などにいます。
頭が三味線のバチのような形をしていて、長さは50センチくらい、幅は5ミリほどで平たく、薄茶色で細い縦筋があります。
スルスルと滑るように移動し、ミミズやナメクジを食べます。
(苦手な方がいらっしゃるかと思い、写真は載せません)
本物を見たくなった私は、小学校に行き、子どもが見たというところに案内してもらいました。
いました。
竹の交じる藪の平たい石の下に、「できるだけ小さくなってみましたが何か?」という感じで絡み合った紐のように、グニャグニャ、ぬめぬめ、していました。
連れて帰ってもう少しだけ見てみようと、家に持ち帰りました。
湿らせた草を入れたケースにコウガイビルを移し、夕食まで観察していました。
夕食が済んで、そろそろ寝ようとしたとき、女房が
「おれへんで」と騒ぎ出しました。
明日には逃がすので、サクランボが入っていたケースに入れておいたのですが、平たい身体なので隙間を見つけて逃げたようでした。
「あんな気持ち悪いものがいると思ったら、私寝られへん」
女房が泣きそうな声で訴えました。
私は、困ったなぁとは思いましたが冷静に
「まだ、
そう遠くへは行っていない」と言い、探索を開始しました。
夕食前にはいましたので、ほんとにそんなに遠くには行けないはずですので、ケースを置いていた本棚の後ろを懐中電灯で照らすと・・いました
ホコリまみれになって、絡まりあったコウガイビルがモゾモゾしていました。
すぐに見つかったので、女房はホッとした様子で、
「まだ、遠くへは行っていないって、その通りやったな。あー良かった。明日絶対逃がしてきてや」と言って寝に行きました。
それから我が家では、ゴキブリを取り逃がしたりすると
「まだそう遠くへは行っていない」が、ギャグのように使われるようになりました。