正覚院 宇治市 毘沙門天立像

 正覚院は住宅街の中のこじんまりとしたお寺です。もちろん観光寺院ではありませんし、この仏様がどこかの仏像の本に出ているのを見かけたこともありませんでした。
 御住職のお母様がお亡なりになる前にそれまでに貯めてこられた大切なお金で仏様を直したいと言われたそうです。御住職はお母様のお考えを聞き届けられ、仏様を博物館に預けられることにされたそうです。しばらくして博物館から電話があり、「江戸時代の修理の際に塗られたけばけばしい彩色の下から、鎌倉時代の繊細で鮮やかな紋様が出てきました。」と告げられたそうです。
 どの仏様でも、それを現在まで伝える為に、たくさんの人の努力があったはずです。素晴らしい仏様に偶然お会い出来た時は、それを今見ることの有り難さと、不思議なご縁とを思わずにいられません。
 拝観させて頂き、保存状態の良さに驚きました。江戸時代の彩色のお陰で鎌倉時代の彩色が守られ、鮮やかな色と、截金模様が像全体にはっきりと残っています。お顔はまるで生きておられるかのように写実的です。さらに、踏んでおられるニ体の邪鬼には玉眼が施されているだけなく、今まで拝見したどの邪鬼より表情や姿勢が生き生きとしていて人に近い感じがしました。
 奈良国立博物館で2月からやっている「毘沙門天展」にこの仏様が出展されていたら人気が出たろうなと思いました。
 尚、御住職のお話ではこの仏様と彩色やお顔などがとても良く似ておられる聖徳太子像が、茨城県水戸市の善重寺というお寺にお祀りされているそうです。


   [拝観される方へ]
 宇治市には同名のお寺がありますので、お間違えになりません様お気を付けください。