親の前では...
17回忌のご尊父様の仏事支援をさせていただいた時の事です。ご参列は長男家族、次男家族でした。
南無阿弥陀仏と記された掛け軸の御本尊のもとに置かれたご遺影と、私の目の前に座られた次男さんのお顔が瓜二つでした。思わず「お父様によく似ていますね」と仏事支援が始まる前に声をかけました。
「よく言われます。髪の毛が無くなっちゃうところは似たくなかっ
たなぁ」
との発言に、その場にいた全員が声を出して笑いました。長男さんが
「お前は気が短いところもそっくりだ!」
と言われると
「頑固な所は兄貴が似たよな!」
と、それぞれが思う事を言い出されました。子供のころの昔話も含めた兄弟喧嘩が始まりました。時間ばかりが過ぎ「どうしよう」と思っていた矢先、長男の奥様が
「いい加減にして、お義父さんが呆れていますよ」
と声をかけてくださいました。胸を撫で下ろしたのもつかの間
、何かにつけ
「あの時、兄貴はこうだった!」
「あの時は、お前が余計な事を言ったからだ!」
と一向に口喧嘩は止まりませんでした。結果お手紙を書いていただく時間がなくなりました。お二人が子供の頃、毎日たわいないケンカをして、その度にご両親に怒られている、その情景が思い浮かびました。
仏さまとなられたご尊父様と出遭い直すことで、子供の頃の気持ちに戻り、言いたい事をお互い言い合えたのかなと思いました。喜寿を過ぎ、子も孫もいるお二人も、親の前では幾つになっても子は子で、親は親なのだと思いました。そして「亡き人から案じられている私」という法語がふと思い浮かんだ仏事支援でした。