600字で綴る⑦「"短い"70年にできるだろうか」
「庭園を極めるには100年じゃ足りん、でも今日死んでも悔いはない。」そう語るのは国内外で"庭師"として活躍される73歳、江頭博明(エトウヒロアキ)さんである。庭造りの腕と実績が認められ、今やアメリカの大富豪から声がかかるほどである。▶生まれは久留米。北九州に移り、高校で造園業を学びながら、造園家である父の下3年間経験を積んだ。「本場を学びたい」という思いから京都に移り、修行に励んだ。そのレベルの高さに自信を失いながらも、庭園への情熱は途絶えることなく73歳になる今日までプロの庭師として庭を造り続けた。人は歳を重ねると「何をしてきたか」を語り勝ちだが、江頭さんは自分のことはそっちのけで茶庭の話に夢中。苦労話ひとつも聞き出せなかった私はインタビュアー失格である。「"本物"の茶庭を日本、そしてアメリカに広めたい」と夢を膨らませる姿は、茶庭に詳しくない私の心にも強く訴えかけるものがあった。▶江頭さんはこれまでを振り返り、「アメリカで庭が造れるとは夢にも思わなかった。」と話す。夢や情熱が想像もしていなかったような場所に人を連れていく。それは容易に国境を超えるのだ。「人生100年は短い」、「今日死んでもいい」と思えるほど夢中になれるものにこそ人生を賭ける価値があるのだろう。一度きりの人生。江頭さんのように、70歳を超えても夢と情熱を語る自分でいたいものである。