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600字で綴る②筑肥線

福岡県筑肥線から眺める景色に心奪われる。盛る博多から少し離れた、今宿駅から下山門駅の間、ぼんやりとしていれば見逃してしまう束の間の贅沢がある。澄清な空と群青な博多湾、両脇の小戸と今津、奥の方には能古島の緑に溢れ、青と緑のコントラストが映える、いかにも日本らしい美しい景色が車窓いっぱいに広がる。難しい顔でスマホを覗き込む人々も皆顔をあげ、束の間のひとときを楽しんでいるようだ。▶ふと社会に視線を戻すと、新型コロナウイルスによる不景気で倒産する企業が相次ぎ、失業者数は増加、中国とアメリカを筆頭に国際情勢にも不穏な雰囲気が漂う。その一方で、コロナ禍にITビジネスで一旗あげようと多くのスタートアップが立ち上がり多くのオンラインサービスが誕生している。時代は大きなうねりをあげ、慌しく変化していく。めぐまぐるしく移り変わる景色に置いてかれぬよう、人もまた駆け足で急ぐ。そんな中、忘れがちではあるが、筑肥線の車窓から見える風景ような変わらない良さ、美しさも在る。時代の波に乗る柔軟さや決断力も重要だが、自らの信念に従い、変わらずに「信じ続ける」力も同様に必要になるのではないか。答えは時代にあらず、自らの心にあり。今日も種々雑多の人に溢れる博多にて歩を進める。荒波に乗りながらも、流されるべからず、筑肥線の車窓から見えるあの景色のような、変わらずに在るものの美しさを大切にしたい。

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