キャリア概要3/5(2011〜2015年)
短編テーマとしてキャリア史『5部作』を書き連ねています。
キャリア概要1/5(〜2008年)
キャリア概要2/5(2008〜2011年)
キャリア概要3/5(2011〜2015年)◀︎イマココ
キャリア概要4/5(2015〜2017年)
キャリア概要5/5(2017年〜現在)
第三遍、開幕です。
新参者だと臆しない
それまで競合他社だったところに身を置くというのはとても不思議な感覚ですが、周りはとてもよくしてくれました。入社日初日にして終電過ぎまで飲みに誘っていただいたり、特に営業チームは何かと皆気にかけてくれました。
仕事の内容は変わっていないので一切の不安はありませんでした。事業規模も比較するとやや小さくなり、自分がチームを引っ張っていこうと考えていました。月次の社員定例会で新人として挨拶があり、私は臆せず「このチームを会社で一番にする」と言ったと思います。無難な挨拶として「いち早く仕事に慣れて皆様の力になれるように…」なんて挨拶もありますが、それは採用してくれた会社に失礼だと思います。自分が何者でどう力を発揮するか、それが新卒であっても言葉にするのが、あなたのことをよりよく知ってもらう言葉として適切です。
入社当初は営業同行や展示会の対応、出荷対応、顧客向けの技術サポートや教育などなど、前職と変わらず少人数でなんでもやるという感じでしたが、しばらくするとチーム内で分業制にしようという話になり、私はポストセールスつまり顧客の技術サポートをメインを担当することになりました。
チームビルディング
この会社では様々な出会いがありました。メーカーのPeterさんやEmiさんは将来の上司になりますし、私のもとで技術サポートを対応してくれた福井さん、塚越くん、櫻井くんはいま役割はそれぞれ違うものの同じ会社で働いています。
前職とは違い私もビジネスの中核を担う1人です。過去の上司の教えで「みんなが羨ましいと思うようなチームにする」という言葉を私も目標にチームビルディングに励み、闇雲に忙しいながらも活気があらチームに育てていきました。
一番嬉しかったのが派遣できていたメンバーが、私の負担をできるだけ軽くするためにどうすればいいか、知恵を絞って仕事に取り組んでくれたことです。私も高いモチベーションを持っていましたが、それを支えてくれたのは上司や同僚ではなく派遣のメンバーだったのです。そんな仕事への積極的な姿勢も評価されて、私は四半期のMVP賞もいただきました。しかしこれはチームで獲得したもので、当時チームのメンバーに還元したと思います(…たぶん)。
疲弊する毎日
サポートという仕事は裏方でやりがいがないように感じる人もいるかもしれませんが、そういうことはありません。確かにいきなり緊迫した状況に陥ってしまう場合もあり精神的なタフさが必要ですが、決して裏方の仕事というわけではなく、表舞台を自分たちでセッティングすればいくらでもプレゼンスを発揮できます。過去の経験では表舞台としてユーザー会を企画してトレーニングを行ったこともありました。(そのあと飲み会を企画すれば良かったと今更ながら後悔しています…)
しかし次第にやりたいことをやるのが難しい状況に追い詰められていきました。仕事は増える一方なのに、協力的だった派遣さんは他の役割に取られてしまいます。私は新しいメンバーを育てながら毎月80件もの新規問い合わせを個人で捌いていました。トラブルにトラブルが続き、そしてトラブル。終電で報告書書きながら帰宅するような日もありました。それでも効率よく仕事を回せていたのは、問い合わせに取り掛かる前に問題の中核(Issue)を特定し、仮説を行った上で対応にあたるというロジカルシンキングの基礎が私の基礎的なキャラクターとして備わっていたからだと思います。また仕事への姿勢にマッチしたタスク管理ツールを見つけることができたのも大きいです。
そんな中、致命的な欠陥が浮き彫りになります。ある日上司との定例会で「もっと数字をオープンにして欲しい。自分たちのビジネスがどこで儲けていて、どこに投資しているのか知りたい」と進言したところ、上司からの返答は『そんなこと知らなくていいんだよ』…上司にはどこか後ろめたさでもあったのでしょうか、たしかに私にも不満がたくさんありました。しかしここでは自分たちのビジネスがどこに舵を取っているのかを知ることで、自分の我慢が報われるのかお門違いなことをしているのか…全体像を把握して仕事への姿勢やモチベーションをメンテナンスするために知りたかったのに…。それを無碍にされた一言で、もうこの人の下で働くことはできないと考えました。
コンサルティングファームからのお誘い
エンジニアとして続けていくのは良い環境でした。特に給与面は一部上場している同業他社と比べても高く設定されていたので、私には文句のつけどころはありませんでした。しかし毎日頭が痛くなるまで働きづくめ、新しいチャレンジの意欲も薄れつつある中でどうやってまたエキサイティングな日々を取り戻そうかと考えていた時、LinkedIn(ビジネスマンや転職のためのSNS)経由できたひとつのメッセージに目が止まりました。
グローバルの会計監査事務所(いわゆるBig4)系のコンサルティングファームで、新しくサイバーセキュリティのコンサルティングチームを立ち上げる予定で、その一員に加わらないかという内容でした。
お誘いを聞いて正直驚きました。この先のキャリアをエンジニアか管理職かのどちらかでしか考えていなかった私に、新しい選択肢が与えられました。さらにポストセールスのように事後対応の役割でなく、市場でリーダーシップを発揮できる仕事です。
これまでにない苦労が待ち受けていると予想していましたが、このまま今の会社で仕事に埋没されても埒があかない。そう腹をくくり、『絶対にこのファームに転職する』『もし落ちたら今のチームで新しい製品も担当する』という、どちらに転んでも新しい一歩が踏み出せるように準備を進めました。その間他の転職活動は全く行いませんでした。私は変化を求めていたものの、この時は転職そのものを望んでいたわけではなかったのです。
結果はファームへの転職となりました。
辞める上で多方面に迷惑をかけたと思います。そんなことを個人が気にする必要なんて微塵もないのですが、私を採用してくれた本部長には足を向けて寝ることはこれからも許されないと思います。最終出社日…強面の副本部長から「出戻りでもいいぞ」「また連絡くれ」という言葉をいただき、少し切なくもあり、また別の形でお返ししたいと思う次第でした。
東京にきて2回目の転職ですが、迷惑はかけながらも私は最大限の配慮をして仲違いすることなく旅立ったと思います。結果として過去の同僚や上司、取引先の関係者とは今でも関係は続いており、後々のビジネスでも重要な引き寄せを生むことになります。次回につづく。