【モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書】/尾原 和啓
新規性 :★★★☆☆
有益性 :★★★☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
■この本で解決できること
上の世代と、30代以下の世代のモチベーションの差を明らかにし、上の世代(一般的なマネジメント世代)に対しては部下マネジメントやチームづくりのポイントを提示し、下の世代(一般的な若手)に対しては、これからの時代に求められることは何かを提示しています。
■この本で伝えたいこと
●世代間のモチベーションの相違
団塊世代※より10年以上も上の世代は、戦後の何もない時代を育ちました。そのため、世の中の空白を埋めるように仕事を行い、欲望と共に成功に向かって走っていました。何かを達成することによる自己成長と、社会貢献がダイレクトに繋がっており、彼らのモチベーションは国や社会を動かし、支えていくという「大きな枠」で作られていました。
※団塊世代:第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代を指す。第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれて、文化的な面や思想的な面で共通している戦後世代のことである。
一方で30代以下の世代は、すでに何でもある時代を育ちました。そのため、“自分の好き”を追求し、モチベーションは「家族」「友人」「自分」という「小さくて身近な枠」で作り上げられています。なぜなら、上の世代がある程度社会を作ってしまったので、「すでに作り上げられた社会」の上に立たされているからです。「大きな枠」はもやは変えようがないから「小さくて身近な枠」を大切に生きていくのです。
こうした育った時代の構造が異なることで、何にモチベーションを感じるのかも異なっています。この「モチベーションの相違」を理解しないことには、世代間のマネジメントや同じチームで働くことは非常に難しくなります。
ポジティブ心理学のマーティン・セリグマンが提唱した幸せの5つの軸では、
・達成(Achievement)
・快楽(Positive emotion)
・没頭(Engagement)
・良好な人間関係(Relationships)
・意味合い(Meaning)
があり、上の世代は「達成」と「快楽」を追求する人が多いです。まさに「目標を達成してワインで美女と乾杯」です。つまり「快楽」を満たすための手段として「達成」でした。
一方30代以下では「良好な人間関係」や「意味合い」を重視する人が非常に多いのが特徴です。仕事よりも個人や友人との時間が大事。何気ない作業のなかにも“今、自分がこの作業をやっている意味”を見いだせないとやる気が起きなくなる。つまり没頭タイプは「いくら稼げるか」よりも「仕事に夢中になって時間を忘れる」ことに喜びを感じます。
どっちが良くてどっちが悪いということではなく、
この違いを認識し、30代以下は自分だけにしかできないことを突き詰め、楽しみをお金に変えていくことができるということを理解しなくてはなりません。
●これからの時代に求められる偏愛
AI(人工知能)の発達によって、効率的・合理的に仕事を進めるうえでは人間はロボットに勝てなくなります。世界を変えるような新しいサービスや画期的なイノベーションは、人間の偏愛によって生まれます。
したがってこれからの時代は、この偏愛こそが人間の価値になります。これを大事に育てていビジネスに変えていけるかが問われる時代になります。
時代の混乱を呼び起こす4つの革命
・グローバル革命
今まで日本人は国内だけで比較されてきたが、これからは世界中のハングリーな若者と比較されるようになる時代
・インターネット革命
上のグローバル革命を加速させたのがこれで、コミュニケーションや発信にかかる時間と距離をゼロにした
・人工知能革命
世界間で競争をしている間にロボットがそれらの仕事を横からさらっていく時代
・実世界指向革命
電子書籍の登場によって本のデジタル化が進んでいるが、紙の良さを求める層によって本がなくならないという出版社の主張の根幹を揺るがす革命です。紙のリアルな質感やインクの適度な濃さ、ページをめくる楽しみなどデジタルで再現させることはすでに可能です。これに加えて、今後は表紙を自由に変えることで本棚の内容をカスタマイズすることができれば、他人へのアピールをしたいという欲求を満たすことができるかもしれません。そうすると出版社もいよいよあぐらをかいてはいられなくなります。
こうした変化の時代だからこそ、人間の「好き」を突き詰めて、その「好き」に共感する人が「ありがとう」とお金を払ってくれる”偏愛・嗜好性の循環”が残っていくでしょう。
●これからの時代に求められるチームづくり
みんなが一致団結して同じ目標を目指していた時代では、リーダーが決めたことを守り、決められた目標を達成していくことが求められました。
しかり、時代は変化することが当たり前となりました。
昨今はこの時代のことを「VUCA」の時代と呼んでいます。
Volatility(変動が大きく)
Uncertainty(不確実で)
Complexity(複雑に絡み合い)
Ambiguity(曖昧)
こうした時代ではトップダウンではなく、現場最前線で変化に気づいた営業担当が上司の許可を取る時間をワープしてすぐにアイデアを形にできる体制が重要になります。
また、チームや組織の理想としてはゴレンジャーのようにそれぞれの異なる強みによって戦いに打ち勝つことができるメンバーです。
こうしたチームをつくる具体的な方法として3つ紹介します。
①ストレングスファインダーで強みを見せ合う
5つの強みのうち、すべての強みが異なるメンバーは自分にとって学ぶべきところが多い、先生のような人で弱みを補完しあえる関係。
またメンバーのうちだれも持っていない強みはチームにとって宝物になります。
②偏愛マップをつくる
好きなものを掘り下げていき、そこを紹介しあいます。
深いところで共感が生まれると、強固な絆ができます。
③自分のトリセツをつくる
1.この会社に入ろうと思った動機につながる最も古い記憶について
2.自分が120%頑張っちゃうこと・ときは?
3.「これだけはダメ、嫌」自分の取り扱い注意ポイントは?
※ストレングスファインダー:アメリカの統計調査会社ギャラップ社が人の強みを34種類にパターン化させたものを基に作られた診断テスト
また、これらは相手のことを知るだけでなく、信頼関係を構築することにも活用できます。そしてのこの「信頼」が変化のスピードに追い付くのに重要な要素となります。
●個人の働き方
こらからは、評判が可視化される時代に入ります。
どういうことかと言うと、Airnbを利用したことがある方はわかると思いますが、借り手と貸し手の双方のレビューが公開されており、評判が良い借り手は安くて良い部屋を借りることができたり、貸し手は信頼性が高いため借り手からの利用が集まりやすくなります。
この時代においては、コツコツと好きなことをやる姿も可視化されるため、それに共感をする人が現れます。そして次第に応援して(お金を払って)くれる人に変わるでしょう。
また自立とは孤立するようなイメージを持ちがちですが、実は依存先を増やすことが自立の条件とも言えます。なぜなら、今自分が勤めている企業がもしロボットに代替してしまったら、路頭に迷うことになります。
つまり変化する時代を自由に自立して生きていくということは、何にも依存しないということではなく、むしろ依存先を一カ所に絞らずに複数もつことが大事になります。
「ないものがない」時代を育った世代は、既存のモノに「新しい意味」を提供することで「今あるものが全く違う魅力あるものになる」という新しいビジネスの在り方を提示していくでしょう。
そしてこの「新しい意味」をもたらすものは、人との違いやズレから生じる「好き」や「歪み」です。これを育てる生き方をすることで、人間ならではのイノベーションを生むことができるでしょう。
■この本から得た教訓
気づき
・モチベーションが異なることは自分自身を見つめると確かにと思える部分が多く、自分の好きなことを徹底してやる経験がもっと必要なのかもしれない。
・上の世代に自分のモチベーションを伝えられるようになれば、自分自身も働きやすくなり成果も上げやすくなると感じた。
明日からできること
環境依存しない、自分だけで保つことができる強いモチベーションは何なのかを探す。