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人の不幸は蜜の味:ひとのふこうはミツの味 #186 辞書の生き物

人の不幸はミツの味

 他人の失敗や不幸なできごとを聞いて喜びを感じてしまうことを表す慣用句です。蜜は甘いものとして喜びの代名詞として使われています。

 芸能人のスキャンダル、有名人や大金持ちの失敗や事件など、妬み半分もあり、うれしさを感じる人間の心理を表しています。
 誰の不幸でもよいというわけではなく、自分と親しい人の不幸ではなく、自分とは関係なく起こったできごとで、その人が死んでしまったなどという重大な事件でない場合に感じるのが「蜜の味」で、親しい人が事故にあったという場合にはこの感情はわいてきません。

 ドイツ語でも"Schadenfreude(シャーデンフロイデ)"という単語があり、「不幸」などを意する "Schaden" と「喜び」を意する "Freude"を組み合わせた造語です。
 ちなみに "Freude"はベートーベンの第九交響曲の合唱「歓喜の歌」の歌詞に何度も登場する「歓喜」のフロイデです。

 英語でも"Roman Holiday"という言い方があります。
オードリー・ヘップバーンとグレゴリーペックが主演の映画「ローマの休日」の原題です。
 本来なら"Holiday in Rome"とすべきところでしょうが、"Roman Holiday"とした意図があったのではと思います。

 "Roman Holiday"はそのまま「ローマ人の休日」の意味がありますが、当時のローマ人は、コロッセオで人とライオンや人同士を戦わせて喜んでいました。生死をかけて戦う戦士(グラディエーター)の不幸を喜んでいたわけで、まさに「人の不幸は蜜の味」だったのでしょう。

 「ローマの休日」では、王女も新聞記者も自分の分を守り、他人の不幸を喜ばないことにしたということで、"Roman Holiday"にならずに済んだという逆の意味の題名になっているのではと思います。


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