【書評】橘玲『幸福の「資本」論』
橘玲氏の『幸福の「資本」論』を読みました。幸福を資本・資産の観点から考える点が面白いですね。幸福になるためにどうすればいいか、という戦術・戦略を考えられるようになる点で示唆に富みますので、まとめることにしました。このようなご時世ですので、幸福になりたいですし幸福な人が増えてほしいものです。
■本書の内容
1 幸福のための3つの資本
人が幸福を得る手段として、下記の3つの資本が挙げられます。
①金融資産=現金や不動産など(自由)
②人的資本=個人の能力や働く行為(自己実現)
③社会資本=他人との繋がり(共同体)
【3つの資産のバランス】
すべての資産が満ちる(橘氏はこの状態を「超充」と呼んでいます。)ことが理想です。
しかしながら、それぞれの倫理が反することがあるため、3つすべてを充実した状態で有するになるのは難しいでしょう。他方で1つに依存するとその一つを失ったときに幸福の素をすべて失ってしまうのでリスキーです。
そうすると幸福になるためには、上記の2つを充実させもう一つもほどほどに充実させるというのが一番現実的でしょう。
2 3つの資産の確立のために
3つの資産を充実させるために、それぞれの資産の作り方のポイントがありますのでそれぞれ概要を下記いたします。
(1)金融資産
・サラリーマンは一生で一億円以上納税する、税制の観点から最も有利なのは中小企業オーナー。
・個人年収800万円、世帯年収1500万円、金融資産1億円までは増収=幸福度上昇、それ以降は資産の上昇が幸福に与える影響が逓減する。
→上記の段階に達していない場合、幸福度上昇のために収入を増やすことはとても有効。上記に達していたら他の充実を考える。
・現状はマイナス金利、日本円は長期的に見ればリスク。
→投資等で大きく儲けようとするより守り増やしていく方が重要。一極集中でなく、インデックス投資などでドルユーロに分散して保有した方がよい。
(2)人的資本
・仕事は収益と自己実現で構成されている。
・資本主義的には収益と安定性であるべきだが、人間性がそこで複雑にしている
・拡張可能な仕事かどうか。例えば、医者や弁護士は単価は高いが、自分が働いた分しか稼げない点では拡張不可能。
・他方で、会社で自己実現を目指すのは必ずしも奨められない。自分の幸福の基準が他者の承認(出世)になってしまう。
→自分基準:好きなことに人的資本を投下すべき。
・弱者の戦略は「小さな土俵」「複雑さで勝負」「変化に早く」。シンプルなゲームでは強者に有利になるので個人は苦しい戦いを強いられる。
→フリーエージェントとして成功する道
①好きなことに集中する
②ニッチな市場を見つける
③官僚化した大企業から収益を得る(※)
※組織発展にはイノベーションが必要だが、官僚化した組織はリスクが取りづらいのでイノベーションが起きにくい。そこで外注せざるを得なくなる。
(3) 社会資本
・幸福は社会資本からしか生まれない
・愛情空間、友情空間、貨幣空間。愛情と友情の外の人間との関係とは経済圏における関係性(例:家のコップを作ったのは中国の誰か)。
・友情とは平等感によって生まれる。
・欧米人は「個人」型、アジア人は「間人」型。人とは関係性の中にある存在。
・フリーエージェント戦略:特定のグループに属さず、薄いつながりで自由と利益の両方を得る
→・BOBOS(ブルジョア+ボヘミアン)と呼ばれる現代的なフリーエージェントリッチが誕生している。高収入+自由な生き方を模索しており、彼/彼女らが欲しいのは知的コミュニティにおける評判。
・「幸せな選択、不幸な選択」
…楽しいともだちとは近づき、楽しくない友達からは離れる。体重を減らしたければ痩せている友人に近づき、太っている友人からは離れる。近い関係ほど「伝染効果」がある
3 幸福の戦略
(金融資産)
・経済的充実のためには、分散投資と拡張可能な仕事。
・経済的充実により自由を生む。
(人的資本)
・好きな事に集中する。
(社会資本)
愛情・友情空間の肥大は問題の種>小さい愛情・友情空間+広大な貨幣空間
■自分はどうか?
橘氏の本から自分はどうすべきかという点も少し考えてみました。
【現状】
(金融資産)
・いわゆる準富裕層に該当。
・投資スタイルは、全世界株インデックスファンドとバランスファンドの組み合わせで長期積立てしていくスタイル。
・資産のポートフォリオは現金に偏っている。
(人的資本)
・社内弁護士:給与所得者としては稼ぎは悪くないが拡張性は小さい状況。
・法務の仕事は割と好き。しんどいことも多いが、問題に向き合い解決することや分析・調査が好きなため、今の仕事に就いてから職種を変えたいと思ったことはない。
(社会資本)
・独身、単身
・友人はいるが、多くが既婚、子持ちになったため生活リズムに差。
…たまに飲みに行こう等はあるが旅行等まで一緒に行ける友人は少ない。
【今後の方向性】
上記の現状を踏まえると方向性としては下記かなと思っております。時間は有限ですので、自身の価値観に則り優先順位をつけ具体的な行動まで落とし込めるかが肝ですね。
①人的資本と金融資産の充実。
・法務の仕事は好きなので続ける。
・昨年転職して、会社規模は大きいのに一人法務に近しい状況のため、経営に近い距離で日常の法務業務に加え、制度設計にも関与。今の会社での仕事に専心してバックオフィス全般に理解があり、かつ前線にも立てる人材として市場価値を高める。
・法務の知識を活かせ個人でもできるストック型ビジネスを実施する。
=人的資本とは別の金融資本を生む手段&「好きなことに注力する」
②社会資本の充実
・会社以外のつながりを広げる
→社外の勉強会に積極的に参加する、上記のビジネスを始めそのコミュニティに参加してみる等
・パートナーを持つ
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