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平成深夜コンビニ騒動②相棒編
『ふざけんじゃねぇよ❗️俺、地元の友達に何回も言っちゃったじゃねぇかよ❗️』
深夜のコンビニバイトは2名体制だった、コンビニによっては商品が届くタイミングだけ2名で、基本は1名というコンビニも多かったが、私のバイト先は夜10時〜6時の時間は2名勤務だった。
8時間のうち、商品や本が届いて陳列したり、フライヤー(揚げ物をする機械)を洗ったり掃除したりという時間はせいぜい1.5時間程度だった、残りの時間はスタッフルームで雑談をしながら漫画を読んだりとダラダラと過ごして仮眠を取ったりもしていた。
同じ深夜のメンバーは空白の6.5時間で雑談をする為に、相手の事を知らない事なんて殆ど無い。
眠くならないようにお互いが自分の過去や近況を話しすぎる位に話すからだ。
今日の相方は函館出身の超真面目で天然の佐藤リーダー、4歳年上で目がクルッと大きく、天然パーマでオシャレに気を遣いながらも少し垢抜けない印象の見た目。
お互いに近況で知らない事は無いし話す内容もない…
その時、私の心に悪魔が呟いた…
『大嘘を長期スパンでついてみよう…』
『そして3ヶ月後にネタバレしよう…』
『ネタバレの時にビックリするぞ❗️』
私の静かな挑戦は始まった…
私 「佐藤君、昨日の深夜の音楽番組見ました?」
佐藤リーダー 「見てねぇよ、昨日シフトだろ」
私は見てない事を確認してから大嘘を始めた…
私 「昨日、北海道出身のバンド出てましたよ!」
佐藤リーダー 「別に珍しくねぇだろ、ジュディマリもGLAYも北海道だよ、なんて名前なんだよ?」
私 「…です」
佐藤リーダー 「あ?聞こえないよ」
私 「道産子ケッパレーズです」
佐藤リーダー 「ダサすぎんだろ❗️北海道出身だからドサンコで、頑張るって意味の方言のケッパレを文字ってんのか❓売れねぇんだよ、そんなセンス‼️」
私は思ったよりも佐藤リーダーがセンスの悪さに憤慨していたのでビックリしたのと同時に、その熱に噴き出して笑い転げそうになったが、グッと堪えた。
そして佐藤リーダーがバンドの存在は信じて、その日は終わった。
それから同じシフトの時は毎回、佐藤リーダーに音楽番組やFMを聞いてない事を確認してから、道産子ケッパレーズが出演してたと嘘をつき続け、徐々に売れていってる印象をつけた。
私 「昨日も出てましたよ、売れてきてますね」
その度に佐藤リーダーはセンスが悪いと怒っていた。
それから3ヶ月。
ついにネタバレの日が来た、流石に私も飽きてきたし、徐々に道産子ケッパレーズの情報を求めてくる佐藤リーダーに罪悪感も生まれだした。
私 「今日もヒマですね、今日はお互いでトリビアして、ヘェの回数が多い方が勝ちとかしません?」
佐藤リーダー 「俺、バイト掛け持ちで疲れてんだよ。でもまぁいいよ、1回だけだぞ」
私 「では私から行きますね!道産子ケッパレーズは…」
佐藤リーダー 「はいはい、ケッパレーズね。また出演したとかか?それか何かのプチ情報?」
私 「…存在しない」
佐藤リーダー 「へ?」
佐藤リーダーはまん丸の二重の目をパチパチしながら呆然としている。
私 「道産子ケッパレーズは存在しない。何故ならば私が作りだした架空のバンドだからだ。」
佐藤リーダー 「はい?えっ?何?」
佐藤リーダーは状況を把握できなかった、深夜で頭が回りにくいこともあり、さらに後輩がそんなロングスパンの嘘をつくとも思わず、口をパクパクしている。
もはや、トリビアにちなんだ『ヘェ』というルールすらぶっ飛んでる。
…最高だ!
私はこの瞬間の為に3ヶ月も嘘をつき続けたのだから!!
私 「道産子ケッパレーズは存在しないぃぃ‼️」
佐藤リーダー 「ふざけんじゃねぇよ❗️俺地元の友達に何回も言っちゃったじゃねぇかよ❗️今さらそんな事言えねぇよ‼️」
佐藤リーダーは地元の友人にはその後売れなかった事にしてフワッと道産子ケッパレーズの続報は終わらしたらしい…
そして実は心の中では同郷のバンドを応援していたらしい…
深夜のコンビニバイトの空き時間は、余りに暇な為に人を嘘つきにしてしまう悪魔の囁きの時間が生まれる…