ヒモ男が語る超ヒモ理論
私事で恐縮だが、筆者は約3年半ほど世間一般で言うヒモをしている。
そんな生活の中、以下の動画を発見した。
動画の概要はナイチンゲールダンスというお笑いコンビのヤス氏(サムネイルの方)が、自らの経験を元にヒモの極意を伝えるものになっている。
そして、現ヒモである筆者はこの内容に違和感を覚えた。
動画の6:00程から、「飯にはうめぇだけ言え」という格言が飛び出す。
これ自体には賛同というか、ヒモに限らず他人に作ってもらった料理は、嫌な顔せず食べるのが当然だ。さらにヤス氏は、過剰なまでに料理の感想を言い、彼女が喜ぶまでそれを続けると豪語する。そして、その行動の背景にはヒモとして一番大事な可愛げをアピールするため重要だと説くのだ。
まぁここまではいい。だが、この後の発言には全く賛同できない。
家賃を払えてないから、可愛げをアピールする。すなわち、収入がない分、彼女に感謝の気持ちを伝えろと言いたいのだろう。だが、収入の有無に関係なく、日頃から感謝の気持ちを伝えることは重要だ。
加えて、「家賃を払えてないんだから」という発言には、多少の劣等感も含まれている。彼女に養ってもらう、その事に負い目を感じる男はヒモには向いていない。生活費を入れられないから彼女に尽くす、そのようなマインドではただの収入が少なく貧しい彼氏だ。
私が思うに、ヒモとは根拠のない自信に満ち溢れ、一緒にいて楽しい、そして不安を感じさせない朗らかさが大切だ。一言で表すなら、金以外の全てを持っていると断言できる男だ。
自らの経済状況を負い目に感じ、その代償として奉仕する様はヒモのあるべき姿ではない。当然、ヒモという存在は社会的弱者に類する。しかし、彼女の前だけでは傲慢不遜な態度でいいのだ。その内と外でのギャップにこそ、養ってあげたくなる可愛げが生じる。特に女性は、私だけはこの人の魅力を理解していると考えがちだ。したがって、ヒモとは彼女に尽くすことで価値が生まれるのではなく、その情けない生態にこそ意義がある。
断っておくが、何も横柄に振る舞えという訳ではない。当然、彼女に暴力を振るったり、金の無心をする男はどのみち捨てられ、長くは続かない。
一般的なモラルを兼ね備えた上で、笑い飛ばせる範囲で情けなく傲慢であればいい。
また、ヤス氏は動画内でこのようにも語っている。
これは、先ほど挙げた「ヒモに一番大事なのは可愛げだけです」と「家賃払えてないんだから」の間に挟まる発言だ。つまりこれも、家賃を払えてない劣等感や負い目から、尖れなくなってしまったという意味だ。
自身の経済状況とリンクして、生き様が変わる男は非常にダサい。
寄生虫としての誇り高き矜持はどこへ行ったのか。世間一般から罵られても、彼女が承諾するなら胸を張り養ってもらえばいい。
自らのダサい価値観を元に、大きな主語で「尖っているヒモなんていない」と断言するのは間違いである。
この動画のように、ヒモ”だけど”しっかりしています！的な文脈でヒモ自身がそれを解説する様子は滑稽だ。ここまで散々、筆者個人の主観を述べておいて身も蓋もないのだが、カップルにはそれぞれの形がある。必ずしもな正解やあるべき姿は存在しない。当然、私の彼女も含め、ヒモを養っている女性にもそれぞれの考え方や事情があるだろう。
だからこそ、このような「ヒモはこれだけ守ろう！ヒモ鉄の掟」といった絶対的な価値観の押し付けは非常に見苦しい。
今回、敢えて私のヒモ理論を語らせて頂いた。だが、当然彼女にこんな話したことないし、するつもりもない。あくまで、彼女の前では情けない無職の彼氏という姿に徹したいと思う。だが、ヒモも自らの在り方に対して、1年の内1日くらいは真摯に向き合うのだ。そして、一応しっかり考えてヒモ生活を送っていると皆さまに伝えたかった。
最後に一つだけ。当たり前だが、決してヒモは褒められた身分ではない。
だが、彼女の承諾の元で養われているなら、自らを卑下することなく、胸を張り生きていくのが礼儀だ。動画のように、ベラベラとしたり顔で語る男はみっともない。