【パトロン】 ファンタジー・ストーリー エモ過多
カサカサカサ……
台所で音がする
なんだまたあいつか…
マサノリは特に気にするまでもないといった様子でリビングに座っていた
カサカサカサ……
毎朝だ、毎朝のことだ
特に害を与えられるわけでもないからいちいちきにすることもないし、仲間を見たこともない、おそらく単体で生活しているのだろう
ただ彼は(もしくは彼女であるのかもしれない。たいていは背中側から見ることになるし、浅黒い。容姿から判断するのは極めて困難だ)この家の台所に毎朝あらわれ、何か気になるものがあればそれを食べ、何も見つからなければ残念そうな様子で何周かして、それでも見つからなければどこかへ帰っていく、それだけのことなのだ
当然それが習慣化すればそれだけ愛着もわく。あえて食料となりそうなものを置いておくこともある
カサカサカサ……
今朝も台所で小さな音がする
何か探してるのだろう
いま何時だ、そうだ、友人がうちに来てだいぶ飲んだんだ、あいつソファーで寝てるだろうな、そろそろ起きる時間だろう、起こしてやろう
そう思い、マサノリはソファーで不規則なイビキをかいている友人を起こしにむかった
「おい、朝だぞ、おきろ」
「ふぁぁ、なんだ、まだおまえんち?あぁ、何時だ、まだ7時だ、ありがとう、でも昨日はよく飲んだな」
「そうだな、パンでも食べるか?すぐ焼けるぞ。用意しとくよ。冷蔵庫から勝手になにか飲んでいいから」
「ありがとう、そうする」
まだ寝ぼけ眼の彼は、おぼつかない足取りで台所へ向かって行った
そういえばまだあいつがいるかもしれないな、マサノリはそう思ったが、なにが迷惑でもあるまい。そう思い、彼にはなにも言わなかった。気づかないかもしれないし。
「うわぁ!!なんだ、え?なに、うわっ!!」
台所から大きな声がした
「なんか食ってるよ!なんか食ってるよ、こいつ!あ、」
どうやら気がついたようだ、なんだよ、結構周りを気にして生きるタイプだったんだな、そうほくそ笑みながら台所に向かった
「どうした、なんかあったの?」あえて聞いてみた
「いや、いやいやいや、どうしたもクソも、え、スンゲェでかぃ、気づいてたの?え、どういうこと?」
「どっかから毎朝うちにくるんだ、鳥肉とか野菜とか鍋にしておくときれいに食べるんだ。ご飯だってあればあるだけ食う。毎日用意できるってわけじゃないけど。それだけだよ」
「そんなこと聞いてない、だって、えーーっ?だって、毎朝いるって、こんな大きな…」
「ちょーしゅぅー」 遮るように、それはそう答えた
「ちょーしゅぅー」それは、確かに、そう言った