<短編日記>MEMORIES
季節は忘れた
運転していると
時々水中にいる様に視界が歪む
車は傷が多い
生きている実感を何とか保っている
生きる屍のようだと 1日に何度も思う
すっかりサボり癖がついてしまっていた
どうしようもない気持ちになった時
会社から少し離れた海へ行く
松林を抜けた先の小さな浜辺
いつもの灰色の空と海
白く曇った空気
小雨が降ったり止んだり
車から降りて 階段を登り
まずは海全体を眺める
人気は少なく
人と会うときは大抵 犬の散歩か
同じようにサボる人たちが 車の中で寝ている
海を視界に入れながら
コンクリートで舗装された場所を歩き続ける
海岸の真ん中あたりまで歩くと
浜辺へ下る階段がある
革靴に砂が入ることを躊躇わず踏み入れる
一気に波打ち際まで歩き進める
波を見つめ 石や貝殻を見る
長めの流木を拾い 引き摺りながら
波に沿って歩く
周りには誰もいない
大声で歌う
やっとしかめっ面が緩む
涙が出たり乾いたりしている
わずかに空が赤くなり始めた
2015.7~9