【東京五輪マラソンコースあれこれ(3)】 最南端の上り坂は地球からの贈り物
今回のコースは平坦だといわれますが、最高地点と最低地点では約45mの標高差があります。とはいえ、走っている人にはほとんど分からない程度かもしれませんね。
でも1カ所だけ、ちょっとキツい上り坂があります。前半に走る最南端、中の島から平岸街道への上り坂です。約200mの距離で標高差14mを上がるなかなかの勾配で、毎年の北海道マラソンでも難所としておなじみです。なぜこの坂道ができたのでしょうか。
今の支笏湖はもともと、一つの大きな山でした。それが約4万年前に大噴火し、道央全域に火砕流が広がったのです。札幌の平地はすっぽりと覆いつくされてしまいました。
火砕流で覆われた大地の上を、豊平川が流れます。川は大雨のたびに流路を東へ西へと変えながら、3万年以上かけて地面を削り、流れてきた土や砂などが堆積して、扇のような平野「扇状地」を作りました。扇状地の西は藻岩山、東は地下鉄南北線高架部分の東側まで広がっていたのです。
1万年ほど前に氷河期が終わり、暖かい気候になると、豊平川の水量が増えます。流れが速くなり、扇状地をさらに深くえぐり始めました。約4,000年前にほぼ現在の位置に落ち着いたそうです。新しく低い扇状地(札幌面)の東端は現在の精進川までで、平岸には古く高い扇状地(平岸面)が削られずに残りました。だから、平岸は一段高いのです。
道路は坂道になっていますが、精進川をよく見ると、平岸側がはっきりとした段差の崖になっているのが見えます。ちなみに、崖のことをアイヌ語で「ピラ」と言い、平岸や豊平の地名の由来にもなっています。