金持ちの景色 〜目指せセレブの会2〜
2024年11月2日
やおい
男性の同性愛をテーマにした創作物をそう呼ぶ。
しかしながら本来の意味は『山なし落ちなし意味なし』という言葉の略から来ているという。
なぜつまらない創作物を意味していたやおいが男性同性愛創作物の総称になったのか……
恐らくWikipediaなんかを調べれば詳しい経緯が載っているだろうし、上記解釈がそもそも間違っていた、ということもあるだろう。
だが今経緯というのはどうでもいい。
ここから先に書く話は全てやおい――『山なし落ちなし意味なし』であることを言いたかっただけである。
※前回の記事を先にどうぞ
別荘に到着した我々を出迎えてくれた女性スタッフは、別荘の使い方・アメニティの場所・部屋の配置・風呂が複数あること・天気こっからヤベーからテラスでBBQはキチィし離れの中でやった方がいいぜ的なチュートリアルを丁寧に説明し、どこかにある事務所へ帰っていった。
つまるところここからが宴の始まりである。
テラスはすごい。
庭にソファーがあってそこでBBQ?
ちょっとわれわれ庶民には思いつきすらしなかった感覚だ。
本来はここでBBQをしたいところだが、残念ながらこれから雷雨90パーセントなので、小雨の今眺めることが精一杯である。天気、金持ちにも貧乏人にも容赦ない。
部屋もすごい。
コーヒーマシン(高級豆付き)もあれば、ウォーターサーバーもあれば、間接照明がふんだんに使われている。そして当然のようにオーシャン・ビューだ。
われわれ庶民はとりあえずソファに座ってみるしかない。
メインベッドはなんだこれ?撮影素人の俺でもPOPEYEとかに載ってそうな写真を撮れてしまうではないか。
小さい棟の予備のようなベッドも、サイズは小さめながらフカフカで、とても快適な空間に仕上がっている。ロフトにある予備布団ですらウチの布団よりいいモノに違いない。
風呂もすごい。
そもそもふたつある上に、先程の小さい棟にもシャワー専用ルームが別途ある。
サブの風呂を撮ったが、サブですらきちんとスチームサウナが付いている。スチームサウナなんて高級なホテルでも無いところは無いぞ?
兄・PNRAは昔キセルを吸っていた。
しかしながら準備が大変なのと、本人がめったに煙草を吸わないタチなので、物置の奥にしまい込んでいた。
だが今日は違う。今日は数年に一度あるかないかの『ハレの日』。今日吸わずにいつ吸うんだとばかりに引っ張り出して小粋の葉っぱを詰め込んで火を灯している。
俺はいつも通り相棒のラッキーストライクをスパスパ吸った。
とりあえず乾杯をしようじゃないか
われわれ庶民は庶民なりに考えて買ったワインをグラスに注ぎ、雨が小雨なうちにBBQテラスへと足を運ぶ。
乾杯の音頭はかつて高円寺で双子と共に3人暮らしをしていたターチが務める。
「皆様、目指せセレブの会へお越しいただき、誠にありがとうございます。それでは乾杯!」
曇天を極めた空の下で男達がグラスを掲げる。
外でBBQは出来ないにしても、俺達には離れがある。
離れで美味い飯を食うのは必須任務だった。
普段から自炊に励む双子が調理担当になったのだが、キッチンを見て恐れおののく。
双子は曲がりなりにも毎日自炊に励んでいる。
それは生活のためでもあるが、根本的に料理が趣味であるからこその自炊。趣味なので当然調理器具もある程度こだわるし、相当マイナーな調理器具でなければ大抵家に揃っている自信がある。というかマイナーなのも大抵はある(柳刃包丁とかダッチオーブンとか)。
しかしこの別荘のキッチン、無いものが見つからないぐらいなんでもある。
「調理器具足りなかったらやべーな」と色々持ち込んできた我々を嘲笑うかのようになんでも揃っている。くやしい。この家に住みたい。
焼肉とカレーの時間だ!!
外は案の定雷雨というか、誇張でもなんでもなく真横に雨が降ってっけどそんなもん気にしたってしゃーないぜ!!
肉を喰らい、カレーも喰らい、地元産の野菜やジビエも飲み込んでいく。
別荘はともかく、飯という物はいかに金持ちでもベットできる金額に上限がある。『この地域のスーパーや道の駅で手に入る最高級なもの』であれば庶民でもちょっと頑張れば手に届く。
今宵の食事は恐らく金持ちが遊びに来たとしてもほぼ同じ食事構成になっていただろう。
今俺たちは一瞬だけ金持ちと肩を並べている。
金持ちとか庶民とか書くのがそろそろかったるくなってきた。
食事が終わり、その頃になってやっと「そういえば夜勤明けからずっとノンストップでここまで来たんだった」と正気に戻り。
双子以外のメンバーはゆっくり風呂タイム、双子はその間仮眠という流れになった。寝ている間に色々後片付けをしてくれた皆様にはこの場を借りて感謝を。次似たようなことがあれば代わりに私がやりましょう。
1時間ほどの仮眠から起き、小さい棟のベッドで仮眠している兄・PNRAを起こしに行った。
疲れなのか酔いなのかその両方なのか。
彼は枕を顔の上に乗せ、微動だにせず夢の世界を満喫していた。
(続く)