ダダダイアリー、主に映画。2024/10/2ー10/14
10月2日
急遽家にある要らないタオルをかき集めて西荻窪へ。
「ことカフェ」で能登に送るタオルを集めているとの事で持っていく。
ついでに出店してたpicnicの発酵バターのパウンドケーキをお土産に購入。
それで駅前で見かけたウズベキスタンワインショップ「キャラバン」で本日のサモサ(ほうれん草とチーズのサモサ)とコーヒーのセットで一服。サモサって三角って意味で、元々はペルシャの宮廷料理だったのがインドなどに伝わり拡まった、といった話を店主から伺う。それにしてもパンとコーヒーとタバコって最高のトライアングルだな。西荻来たらまた寄ろう。
新宿に移動。
新宿武蔵野館にて邦画2本鑑賞。
東かほり監督「とりつくしま」
トリケラトプス、青いの、レンズ、ロージンとしての終わりまでの猶予期間。物質に魂が宿る可笑しみと切なさ。秋から冬にかけての季節にピッタリのほっこりとさせる小さな物語をキョンキョンの大きな愛で包み込んだ作品。キョンキョン目当てで慌てて観たけど良かった。
上映後には東監督と出演者によるトーク付き。撮影エピソードやそれぞれに取り憑きたいものなどの話。監督の母親の東直子原作との事で原作本も読んでみたくなった。
五十嵐耕平監督「SUPER HAPPY FOREVER」
5年の歳月を巻き戻す愛と追憶のバカンス。スーパーなハトヤホテル、赤いキャップのハッピーな着地、嘗てない程絶妙な「Beyond the Sea」のフォーエバー度。どこか遠い海の彼方で全映画ファンが待ちわびていた様な手応えしかない傑作。これは待った甲斐あった。
上映後に五十嵐監督と批評家の三浦哲哉氏によるトーク付き。キャストのパーソナリティを発展させたキャラクター造形や動きの演出、編集・大川恵子の貢献やあの落雷のシーンとか色々聞けた。三浦氏が「喰らった」と言ってたけど、これ観て何も喰らわない映画ファンなんて皆無だろう。早くまた観たい。
10月5日
「パレスチナのための東京マーチ」へ。
都民の城に集合して表参道、明治神宮周りで渋谷に戻ってくる停戦の呼びかけパレード。あいにくの天気だったけど休日を楽しむ人々が少しでも関心持ってくれたらいいなと思いながら声上げてきた。上げた声は残る。続けよう。
パレード解散後はシアターイメージフォーラムへ。
アンダース・エンブレム監督「ヒューマン・ポジション」鑑賞。
ちょっとブルーなアスタとコケティッシュなライヴと子猫。ほんのりと絶望してる世界への小さな抗いの様な静かな暮らし。
全てのカットをポストカードにしたくなる絶妙なコンポジションで構成された、批評性と余白に満ちたスローシネマ。これはa-haに並ぶノルウェーの財産だな。
続いて大久保に移動。
ライブハウスひかりのうまにて開催「湯澤ひかりPlay in a band」へ。
アルバム「星は見える?」発売記念ワンマン。岡愛子(鉄火)、藤原寛(ex.andymori)、後藤大樹(ex.andymori)を従えてのバンドセットによる爆音オルタナ仕様。
やっぱり爆音は良い。そして「灯りを消そう」はこの時代のアンセムになりうる名曲だ。超満員の轟音の中をひかりのうまの様に駆け抜けた素晴らしいライブだった。
10月6日
千葉市生涯学習センターにて開催の「ちば映画祭」へ。
先ずは嶺豪一監督「故郷の詩」鑑賞。
熊本出身者の為の学生寮有斐学舎を丸ごと舞台にしたオールバカ夢の競演な青春グラフティ。オープニングとエンディングのバカ具合の秀逸さ。リアルと現実がぼんやりとした演出、「ドキュメント72時間」の様な貴重な映像。嶺豪一にしか作れない独自過ぎる行ける行けるな展開。ポレポレ以来10年振りに観たけど鮮度衰えていなかった。早起きしてわざわざ千葉まで観にくる価値ある作品。
併映された短編「黙黙」はカメラに映らないヒロインをフィルムに収めようとするカメラマンの精神を具象化した様な全く違うテイストの不思議な作品。言語化出来ない感情や常態を定着させようとした実験作だった。松浦祐也の相変わらずのトゥーマッチぶりも見どころ。
上映後には嶺監督、出演の飯田芳さん、音楽担当今村左悶さんによるトーク付き。制作経緯や撮影エピソードや飯田芳の感想戦な賑やかな展開。「黙黙」はUFOからの、「故郷の詩」は学舎からの視点という今村左悶の指摘が1番腑に落ちた。
しかし嶺&飯田コンビ相変わらずで良かった。
続いて工藤梨穂監督「裸足で鳴らしてみせろ」鑑賞。
イグアスの滝、青の洞窟、アンテロープキャニオン、行った事のない場所を想像しながら裸足で鳴らしてみせる架空の世界旅行。反発し合う事でしか触れ合えない2人の切なさとホロ苦さ。どこにでも行けたはずの2人の別れ道。誰もの生涯に爪痕を残す決定的な傑作。サルベーションドーターズの架空の音楽を頭で鳴らしながら2年振りに観たけど、相変わらず素晴らしかった。
上映後には工藤監督と主演の佐々木詩音さん、諏訪珠理さんによるトーク付き。制作経緯、撮影エピソード、そして風吹ジュンについて。主演の2人にとっても生涯レベルのエポックな作品だった事が知れて良かった。更にロビーで工藤監督と久し振りに話せた。昨日の東京マーチとかの話も出来て次は路上での再会を約束。
毎回ナイスセレクションで気になってた「ちば映画祭」。初めて行ったけどアットホームな感じで良かった。遠かったけど。
10月8日
シネスイッチ銀座にて、松本路子監督「Viva Nikiタロット・ガーデンへの道」鑑賞。
70年代から女性アーティストを撮り続ける写真家松本が最も深く交流したニキ・ド・サンファルの生涯と彼女の集大成となるタロットガーデンの全貌に迫る様をキョンキョンのナレーションで綴った夢の様なドキュメンタリー。射撃絵画で射抜かれて以来のニキ好きとしては眼福のひと時だった。
帰宅後、NHKスペシャル「"正義"はどこに ~ガザ攻撃1年 先鋭化するイスラエル~ 」録画鑑賞。
ハマスへの報復と自衛という大義のもとパレスチナへの虐殺と入植行為を続けるイスラエルの歪んだ正義。それを後押しするアメリカ。イスラエル政府と右翼の身勝手な主張に耳を傾ける事によってその愚かさと無知ぶりを顕在化させた踏み込んだ番組。これは何度も再放送してもらいたい。
「これは今後数世代を決定づける重要な分岐点なのだ
平和を手に入れるのか
暴力に歯止めが効かない世界になるのか
世界の誰もが傍観者であってはならない」
カリム・カーン
10月9日
映像の世紀バタフライエフェクト「I DON'T LIKE MONDAYS月曜日の物語」録画鑑賞。
株価大暴落、地下鉄サリン、サンディエゴの銃乱射事件、マンデーナイトフットボールのから騒ぎの最中にジョン・レノンは暗殺された。なぜ悲劇は月曜日に起きるのか。世界一好きな曲「哀愁のマンデイ」のモデルとなったブレンダ・スペンサーの現在が興味深かった。
ホワイトシネクイントにて、ヨルゴス・ランティモス監督「憐れみの3章」鑑賞。
RMFを巡る3つの異なる物語を同一のキャストで演じ分けたオムニバス。エマのダンスシーン以外は観る価値無い作品。頭おかしい人たちの話ばかりでほんとウンザリした。いい加減エマも映画界もランティモス評価するのやめた方がいいよ。ただの変態オヤジだろ。と言うよりこんな作品評価するハリウッドがクズ過ぎるって事かな。まぁエマは楽しそうだったけど。
とはいえせっかくなんで無機質カフェのカフェモノクロームで期間限定でやってるコラボメニューを食べに行く。KINDS OF KINDNESS set憐れみ抹茶プリン+マンゴーベリーソーダ。オリジナルコースター1枚とクリアファイル付き。映画の内容と販促物やコラボ商品は全く別物。と言うわけでこっちの方は大満足だった。
その後はHMVレコードショップ2FのBankrobberLABOにて開催中の中原昌也個展「BEST PUNKS WHOLE THE WORLD」へ。
何はともあれ個展を開催出来るまでに快復して嬉しい。もう何でも良いから元気になって世間に毒付いたりボヤいたり怒ったりして欲しい。そしてお金に余裕のある人は作品を購入して貰いたい。
個展見たついでに店内ぶらっとしてたら何と以前の「アナログばか一代」ブライアン・ウィルソン特集で騒然となったあのビーチボーイズのあの名シングル盤があったので即ゲットした。樋口さんが処分したのかな。
10月12日
井口奈己監督「ニシノユキヒコの恋と冒険」レンタル鑑賞。
竹野内豊がモテまくる映画なんて見る気が全く起きなくスルーしてたが井口監督作品なので観てみたら、ジャック&ベティをはじめとするロケーションの素晴らしさや、デカいおにぎりとか美術や細部のこだわりなど井口監督らしさが溢れ、オノマチがとてもキュートで七尾旅人によるエンディング曲も良くて楽しめた。
10月14日
Nスペ「If I must dieガザ絶望から生まれた詩」 録画鑑賞。
もし私が死ななければならないのなら
あなたは生きなければならない
私の物語を伝えるために
リフアト・アライールが最後に伝えたかった事。反ユダヤに陥る事なく希望を伝える。武器は消えても詩は残る。無知で愚かな世界に向けて声を上げ続ける。坂本美雨のナレーションも良かった。
映像の世紀バタフライエフェクト「壁 世界を分断するもの」録画鑑賞。
21世紀を境に逆向きに後退し始めた愚かな世界。ベルリンの壁崩壊時よりも多くなり今も増え続けている世界を分断する壁。富裕層と貧困層を隔てるメキシコの壁、イスラエルの分離壁の醜悪さ。分断は憎しみしか生まない。再び壁をぶち壊し世界を繋げるターンに入るべきだと実感。
NHK映像ファイル「あの人に会いたい 柳ジョージ」録画鑑賞。
グループサウンズ、サラリーマンを経てのレイニーウッド。ジョージの人柄が伝わる巻き返しの人生を凝縮。やっぱりオレはクラプトンより柳だな。
寺尾紗穂「彗星の孤独」読了。
歌手としてシングルマザーとしていつもスポンティニアスに振る舞い人と出逢い繋がり拡がっていく人生の風景。細やかなスケッチとジャーナリスティックな視点。零れ落ちてしまう小さなものや声を掬い取る言葉。父・寺尾次郎と音楽ライター吉原聖洋の追悼エッセイが特に素晴らしかった。
横浜シネマリンにて五十嵐耕平監督「SUPER HAPPY FOREVER」鑑賞。
2回目。野郎2人の倦怠のバケーションが運命的なトキメキのバカンスに横滑りするスリル。この映画に使われる為に64年間海の彼方でボビー・ダーリンが待ち続けていた様な「Beyond the Sea」の永遠性。追憶が希望に反転するマジック。何度も観る価値ある作品。やっぱり素晴らしい。
上映後には五十嵐監督によるティーチイン付き。映画の経緯の説明の後は質問タイム。リピーターが多かったのかマニアックな質問が矢継ぎ早に繰り出され、さすがシネマリン客筋が良いなぁと久々に来て感心。気になってた嶺豪一を今回も発見出来ずこれはまた観ないといけない。
そして「SUPER HAPPY FOREVERシナリオブック」読了。
映画では描かれていなかった佐野が持って行った宮田のゴールデンリングの行方が明らかになる決定稿。赤キャップの行方だけでなく、スパハピは指輪を巡る物語でもあったのだ。
ヘアカットサロンによって散髪して、ベローチェに寄ってから帰宅。
帰宅後、おとなのEテレタイムマシン「テロはなぜ生まれるのか緒方貞子ニューヨークで語る」録画鑑賞。
911直後の2001年に放送された番組の再放送。世界があたふたして視野が狭くなっている時期に冷静に状況を分析。この時点でイスラエル、パレスチナ問題にも言及しており今こそ有効な番組だと思った。