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利他の精神性
Netflix で公開されている『グランメゾン東京』を1ヶ月ほどかけて見通した。品川「カンテサンス」の岸田周三シェフが監修を務めており、登場する料理全てがユニークで食欲をそそる。世の中にはこんな食材の組み合わせ方があるのか、と勉強になるとともに感心してしまう。
話は大きく変わるが、今年のゴールデン・ウィークに妻と浜松へ旅行する機会があり、そこでドロフィーズ・キャンパスという場所を訪れた。北欧風の街並みが特徴的なこの場所は、地元の建設会社である都田建設が主となって街作りを進めている。日本では殆ど見られない光景で、心の根元から洗われるひとときであった。
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そんなドロフィーズ・キャンパスの書店にて、都田建設の社長(蓬台浩明氏)が著した書籍を記念に購入した。世の中のビジネス書は大企業出身の方によって書かれたものが多く、どれも似たりよったりで最近は辟易していたので、気分転換にも良いなと思っていた。
この両者を鑑賞していて、それぞれ独立した作品として素晴らしいものであったと思うが、特に「利他の精神性」に於いて似通った部分があり、自分の人生の参考にもなると思ったので、ここで紹介したい。なお、『グランメゾン東京』に関するネタバレを一部含む点はご了承いただきたい。
包み隠さず分け与える
一流のシェフはね、レシピが外に出ることを気にしないんだよ。自分がそれを一番美味しくできる自信があるから。
フレンチの経験を一切持たない芹田が、グランメゾン東京で魚も触らせてもらえない腹いせに敵店の gaku にレシピを売り込んでおり、そのことを芹田が謝罪する場面で京野が発した言葉である。これこそがプロフェッショナルと思いつつ、ここに仕事に誇りを持つヒントがあるのでは? と感じた。
時は流れた先の最終話。グランメゾン東京が提携している猟師の肉をどうしても手に入れたい gaku。敵店にも関わらず、グランメゾン東京は手を貸す。一方で、仕込みに必要なセリの到着が間に合わず慌てるグランメゾン東京。そこへ敵店の gaku がセリを分けてくれる。両者ともに、必要な素材を相手に渡したとしても料理で勝てる、という強い自信を感じた。これこそがプロフェッショナルなのだろうと確信した。困っているときには惜しみなく分け与えてあげる。ここに利他の精神性が見える。
一方、蓬台氏は著書の中で、会社が持つべきものは利他の精神であることを力強く説いている。特に地元に根ざした会社で、周りとの距離感が近いからこそそのように言えるかもしれないが、何も会社の規模によらず社会に関与する企業すべてが等しく認識する必要がある、と主張する。特に蓬台氏は、環境に対する配慮を、コストを掛けてでも続けていかなければ、そのうち会社としてやっていけなくなるだろうと予測している。以前に私も「現代社会の本質課題は持続可能な世界の実現だ」という記事を書いたことがあったが、まさにその通りだと思う。「利他」の「他」は、人だけでなくあらゆるモノに当てはまる。その代表例が「環境」だ。
専門性 ≒ 他者に知識を盗られても勝てる力
過去に「本当の専門性とは何か」という記事を執筆した。
「人より多くの物事を知っている」ことではなく「アプローチの引き出しをたくさん持っている」ことこそが専門性の本質ではないか、と当時考察した。別に自分が知っている知識が他人に知れ渡っても問題ない。むしろ、それで困っている人を助けられるなら喜ばしいことだ。しかし、言語化できない嗅覚や勘こそが専門性の正体だ。これは時間をかけて本気で多量の対象と向き合ってきたからこそ芽生えるものだ。
終わりに
自分の立場を守るために、知識を隠し持つようなことはしたくない。むしろ利他の精神を常に実践しながら、自身の専門性(≒ 対象に対する嗅覚や勘)を鍛えることは十分にできる。これこそ仕事に誇りを持つことなのだと思う。