rockin'on sonic 2日目 ①音楽
先日、rockin'on sonic に参加した。rockin'on sonic は今年から開催したフェスで、ロッキング・オンとクリエイティブマンの共催となっている。今回はその備忘録も含めて、「音楽」と「音楽以外(服装・持ち物・タイムスケジュール・雰囲気)」の2回にわたって記事を書いていこうと思う。今回は「音楽」についてである。
ラインナップ
いわゆる大型フェスのように、大人気ミュージシャンがひしめく訳ではない。むしろ洋楽のコアなファン向けであり、年齢層も40〜50代がメインターゲットと想定される。主に1990〜2000年代に活動を開始したバンドを中心としつつ、新人ミュージシャンも招かれており、不思議な感じであった。
Monobloc
初来日の新人バンド。歌い方が The Strokes のジュリアン・カサブランカスを思わせ、特に『Where Is My Garden』は Joy Division の『Disorder』の影響を感じずには居られない。ガレージロック・リバイバルの雰囲気を存分にまとっており、これからの活躍に期待したい。
The Jesus And Mary Chain
シューゲイザーの走りと言っても過言ではないだろう。しっかり聴いてみると、オルタナティブ・ロックの本流へと交わってきた歴史を感じ取り、ピクシーズやスマッシング・パンプキンズとの交点を感じずには居られない。正直なことを言うと、彼らの代表曲である『Just Like Honey』『April Skies』くらいしかしっかり聴いていなかったので、もう少し掘り下げてみたい。
Manic Street Preachers
私がかねてから好きであったUKロックバンド。説明的な表題、詩的だが捉えやすい歌詞、みんなで歌いたくなる楽曲。現代社会への風刺を描いた『Motorcycle Emptiness』のサビ("Under neon loneliness Motorcycle emptiness";享楽都市の孤独 ガス欠のオートバイ)は、案の定大合唱となった。『Decline & Fall』『Your Love Alone Is Not Enough』は、ライブの方が迫力があり、公演後にこの2曲を交互にリピートした。
改めて見ると、『Motorcycle Emptiness』の MV の舞台が桜木町だ。
Death Cab for Cutie
実はあまり聴いたことがなかったが、事前の予習として聴いたときに案外ハマってしまったミュージシャンである。音源で聴くと静かな音色の印象だったが、ライブではダイナミックな演奏と音響で、印象が大きく変わった。Sigur Ros や Mogwai のようなポストロックとの向き合い方に近いかもしれない。
名盤とも名高いアルバム『Transatlanticism』からは、新年にふさわしい『The New Year』と、8分間にもわたる壮大な演奏が美しい『Transatlanticism』が演奏された。"I need you so much closer." をひたすら繰り返す間奏に心を持っていかれた。ちなみに私はこのアルバムなら『The Sound Of Settling』が好きだ(演奏はされなかった)。
Cigarettes after sex
バンド名を直訳すると「セックス後のタバコ」。この言葉が意味するニュアンスを音楽で表現したようなバンドで、存在自体は知っていたが、改めて聴いてみると、ドリーム・ポップのように聞こえる。この時間はステージの近くで夕飯を食べていたが、音色自体は聞こえており、疲れた身体をメロディに委ねていた。彼らの代表曲である『Apocalypse』は本当に素敵な曲だ。
Weezer
2日目のヘッドライナーで私の大本命である。パワー・ポップの代表的なバンドで、我らが陰キャラオタクの味方だ。『Beverly Hills』『Perfect Situation』等、往年の名曲を演奏しつつ、後半は「ブルー・アルバムをやる」と宣言し、本当にブルー・アルバムの曲しか演奏しなかった。『Buddy Holly』『Undone - the Sweater Song』『Say It Ain't So』……ロックの名盤たる所以をまざまざと見せつけられた。
特に印象的だったのは『Island In The Sun』が始まる前に、テストの音出しで鳴らしたギターの音色で観客が湧き上がった時。私も思わずガッツポーズしてしまった。
2枚目のアルバム『pinkerton』からの選曲も多かった。浮世絵のようなジャケットが日本的で美しい1枚。Weezer でアルバムを1枚選ぶならば、ブルー・アルバムよりもこちらが好きだ。『You Gave Your Love To Me Softly』のピッチの速い演奏は、スピッツの『8823』を思わせる豪快さ。
今回は演奏されなかったが、Weezer だと『I Just Threw Out The Love Of My Dreams』が最も好きだ。2022年に ASIAN KUNG-FU GENERATION が Tempalay の AAAMYYY とともにカバーしてくれた。こちらも素晴らしい。
Weezer は日本人にとってかなり親しみやすいと思うので、洋楽ロックが気になる方にはぜひおすすめしたいミュージシャンだ。
終わりに
大型フェスとは大きく趣向が異なったラインナップだからこそ、本当にロックを楽しみたい人にとって満足度の高いフェスであったと感じる。また、年始はいつも暇になりがちであったので、そのタイミングで開催するフェスというのも都合がつきやすく、来年以降の開催も熱望する。
欲を言えば1日目も参加したかった。特にエモの重鎮 Jimmy Eat World は好きで、アルバム『Bleed American』は幾度となく聴き通した。また、ブリット・ポップも全体的に好きなので、Manic Street Preachers だけでなく Pulp もかなり聴きたかった。
出演ミュージシャンの希望を述べるならば、ヘッドライナークラスなら、詩人としての才能が群を抜いて素晴らしい Morrissey (The Smiths) や SUMMER SONIC 2020 で来日予定だったはずの Tame Impala あたりが嬉しい。それ以外だと、最近復活した Catfish and the Bottlemen、最近のシューゲイザーシーンの中心にいる Alvvays、ニュージーランド出身の宅録ミュージシャン Fazerdaze などが来てくれたら嬉しいなと思う。