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真夜中の散歩

今日は終電がなくなって、新宿まで歩いた。
まだ道を忘れていなかった。
迷うことなく、少し前にたどり着くことができた。

今、バスタのベンチに座っている。
もうしばらく座っていよう。
タクシーは使いたくないんだ。始発まで待っていよう。

少しホッとしたら、脚がだるくなって、眠くなってきた。

久しぶりだ、こういうの。
前はよく夜遅くまで飲んで、帰っていたよね。
しばらくこういうことからも遠ざかって、無茶することもしなくなった。

歩いている途中で、いろんな風景に遭遇した。

みんなで行った中華料理屋さん。
あの頃は父もまだまだしゃんとしていて、いろいろ出掛けていたな。
今はもう、あの頃のようにはいかないけれど、
あの時、いい時間を過ごせて、本当によかったよね。

いつでもできると思っていたことが、
いつの間にか、もう出来なくなってしまう。
そういうことも最近は増えてきている。
1日1日を大切にしていかないといけないと思う今日この頃。

今日を後から振り返った時、どんな風に見えるんだろう。
出来なくなることが増えても、
心の中の思い出は決して色褪せることはない。

好きだった小料理屋さんもなくなっていた。
修行をしていた若者はどこに行ったんだろう。
美味しい料理を携えて、新しい活躍の場を求めたことだろう。

お昼や夜に、私のお腹を満たしてくれた料理は
今でも私の身体の一部になっているんだろうか。
心の一部になっているんだろうか。

こうして、気がつかぬうちに周りの風景はどんどんと変わっていく。
確実に時が過ぎているんだと思わずにいられない。
私も年を重ねたんだ。大人になったんだ。

私の後ろにはどんな道が出来ているんだろう。
人一人くらい、のびのびと歩ける場所を作ってあげられたんだろうか。

最近、心が震えるような出逢いが少なくなった。
これから、この人と会えてよかったと思える人に何人出会えるだろう。
この先、私と会えてよかったと思ってくれる人に何人出会えるだろう。

これからも感動を忘れたくない。心を震わす繊細さを持ち続けたい。
そして出逢いを前にしたら、満面の笑みで応えていきたい。

そんな風に思いながら、固いベンチに腰掛け、
始発電車が動き出すのを待っている。

空が明るくなってきた。夜明けはもうすぐだ。

今日はもう帰ったら、一睡もせず、お風呂に入って、出勤だな。

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