私のラデュレ
昨日、デパートのお菓子売り場を歩いていたら、
本当に久しぶりに遭遇した。
前はよく見かけたこのケーキ。
最近はあまり見かけなくて、
お店のあるところを通りかかるたびに、
「ないかな~」と見るのが習慣になっていた。
もうかなり前になるけれど、
ある職場で、お掃除のパートをされている方と仲良くなった。
ちょうどその頃、ラデュレが日本に初めてやってきた。
どういういきさつだったは覚えていないけれど、
「一度は食べてみたいな」と、その方に私が話したことがあったようだ。
それに気づくのは、私がその職場を去ることになった直前。
「もし今日ちょっと時間があったら、私の控室に来てくれる?」
何だろう?と思いながら、ドアをノックした。
目の前に薄いエメラルドグリーンの箱が二つ置いてあった。
一つはマカロンの入っている、小さめの箱。
もう一つはもう少し大きな箱。
「えっ? これは??」
「もうすぐここを離れるんでしょ? だから渡そうと思って。開けてみて」
大きな方の箱には、私が一度食べてみたいと思っていた
薄いピンクの二段になった美しいケーキが二つ入っていた。
「いいんですか?」
「もちろん!」
私の何気ない雑談を、覚えていてくださっていた。
私は忘れていたのに。
その場で早速一つは美味しくいただいて、
もう一つはマカロンと一緒に家に持ち帰った。
その時の箱は今でも大切に持っている。
あの時の、あの方の気持ちをずっと忘れたくないから。