岸岡くんのこと
2019年シーズン、大学ラグビー界における№1SOが岸岡選手であることに大学ラグビーファンの多くが同意してくれると思う。
岸岡くんは別格だ。同世代の優れたSOはたくさんいるけど、やっぱり岸岡くんは頭一つ飛びぬけている。京平とはスタイルが違いすぎて比べられない。っていうか私は京平については、公正な評価ができる立ち位置にいない。
彼が高校生の時は、春の選抜で溺愛する深谷高校が仰星にタコ殴りにあっておもしろくなかったのと、花園でも順当に勝ち上がっていく様子がちょっとかわいげがなくて、スマートすぎ、達者すぎて、正直あんまり好きじゃなかった。
そうやって、岸岡くんに近づくことがないまま、今年の春を迎えた。前年の対抗戦での隙のない戦いぶりは目についてたけど、すごい選手だなとは思ってたよ。でも4年間ずっと、お近づきにはならなかった。
これまで、試合の写真を通じてつながった選手たちや指導者の方がたくさんいる。選手はSNSのアイコンや、シーズン終わりのファンへのごあいさつ用写真に使ってくれたり。本当に光栄なことです。でも、まさか岸岡くんみたいな人がその一人になるとは思ってなかった。
Twitterにあげた写真を岸岡くんが使ってくれて、DMのやりとりをするようになった。8月の菅平での練習試合、対抗戦の開幕戦も撮りに行った。
その間に岸岡くんはインスタライブで早稲田の選手を紹介してくれたり、質問箱で高校生ラガーマンの質問に答えたり。彼の書くnoteは完成度が高く、特に戦術やルール、試合の解説を読むのが楽しみになった。
試合運びも見ていて面白い。早稲田のラグビーを展開力だけで見ていた私は、岸岡くん中心に見ることで楽しみ方が変わったと思う。
もともと私は頭のいい人が好きだ。ラグビーで非凡な才能を持ち、しかも礼儀正しく、リプの中にもセンスが光る賢い子。好きになるに決まってるじゃないですか。いや、むしろ尊敬している。岸岡くんはそんなちょっと特別な存在になった。
ワールドカップが始まって、日々の熱戦について話したり、岸岡くんの記事を私がリツイしたものがちょいバズったりしてる中で、早明戦のチケット争奪に負けた。それを愚痴ったら、少しして「チケットとりましょうか」って連絡があって…なんと岸岡くんにチケットとってもらえることになってしまった。
いや、岸岡くんのすごいところは、私が元々京平を、箸本くんを溺愛していること、伝統校OB連中のヤジが大嫌いなことを気遣い、早稲田サイドしか用意できなくて申し訳ないですけど、と断りを入れたうえで申し出てくれたこと。なんと懐の深い。
そのあと京平もチケットあるよ~って言ってくれて、行きたがってた友だちの分を手配してもらったりしたんだけど、それとはレベルが違う話。
でも、岸岡くんがとってくれたチケットで観戦した早明戦は、彼の気持ちを思うと私まで心を引き裂かれるような試合だった。試合中、何度も隣に座っている夫の膝を握りしめた。
でも、彼はまた失意の中から立ち上がり、いよいよ明日11日、再度明治と戦うことになる。国立という最高の舞台で。
山沢に勝つ!と宣言してくれたこと。半年前に、京平がSOになったのは正直こわい、って言ってくれたこと。どちらも京平にとって最高のほめ言葉だと思うの。
明日はどうか、大学選手権決勝に関わるすべての選手が、持てるものを出し切り、悔いのない戦いができますように。
岸岡くん、本当に今までありがとう。最後の戦いを国立で見守ります。