『暑寒を制す』⑭部屋の外より室内が暑いという寝苦しい夜。あの「熱帯夜の怪」はどうして起こるのかを理解したら、最善の対策が見えてきた。
真夏の寝苦しい夜。
昼間より外気温は確実に下がっているはず。
なのに部屋の中が暑くてたまらない。
炎天下の熱さとも、サウナの熱さとも違うあの独特の熱さ。
体の芯から熱せられているような気がしませんか。
ぷらす湿気による不快感。
たまらず外へ出てみると、なんと外の方が涼しいではないか!
なんてことが一昔前まではよくありましたよね。
最近はエアコンをつけて寝る人が多いのであまりわからないかもしれませんが。
日本のほとんどの建物の壁内には断熱材というモノが入ってます。実はこれがくせもの。熱を溜め込んで室内外に熱が伝わらないようにする、というのが原理です。
冬場は熱を溜めておいてくれるのはありがたいのですが、夏は勘弁願いたいものです。もっとも、冬と夏では室内外が逆転するので、室外の暑い熱を室内に伝えない、という理屈も成り立つのですが、実際はそううまくはいきません。
夏場は確かに室外の高熱を溜めて、室内に伝えないようにしてくれます。でも限界を超えると放熱を始めるんです。これが夜中に室内の方が暑くなることの原因です。
熱のもう一つの大原則。
熱は温度の高いところから低いところへと移動するということ。水の流れと一緒です。温度差があれば必ず高い方から低い方へ移動しようとします。
輻射熱の世界では恐ろしいことが起こっています。真夏のエアコン。吹き出し口から冷たく冷やされた空気がガンガン吹き出しています。
でも、必ず壁や窓、天井の方が温度が高いので、冷たく冷やされた空気に向かって輻射熱の嵐が襲いかかるのです。エアコンの室内機にもです。その分冷やすのに余分な労力がかかっているんですね。
室内にいる人間の方が体温が低ければ、建物の輻射熱は人間に襲いかかってきます。もちろん、襲われているなんて感覚はありません。
余談ですが、極寒の中寒さを凌ぐために抱き合ったとしても、体温の高いヒトから体温の低いヒトへ熱はどんどん移動するのです。
しかも、それで体温の低いヒトがなかなか暖まらないのは、そのヒトよりも更に温度の低い外気などへ温度が逃げていくからです。こういうときは、体温の低いヒトの保温をしっかりすることが肝となります。
断熱材の性質が大きな原因となって、昼間溜め込んだ熱を涼しくなった夜になって吐き出す、という現象が起こります。だから室内が暑くなって外の方が涼しくなったりするのです。
もちろん室外にも熱の放出は行われていますが、室内のようにこもらない分わかりにくいのです。
次回は断熱材の仕組みについて説明します。