積極的勧奨が中止となっていたHPVワクチンは、ワクチンの成分が変わったわけでもなく、接種後の健康被害とワクチンの因果関係がないことが証明されたわけでもなく、2022年4月に積極的勧奨が再開されました。再開された背景に、WHOの意見と製薬会社から「警告文書」があったことがわかっています。2021年の議事録などを掘り起こしてみたら、ワクチンに「国を動かす力」があることがよくわかりました。
製薬会社からの警告文書
前回の記事でVioxxの薬害について取り上げ、製造販売元であるメルク社がどのような対応をしたかを掘り起こしました。
メルク社はHPVワクチン(ガーダシル、シルガード9)の製造販売元であり、日本での製造販売元はメルク社の日本法人「MSD株式会社」です。記事のコメント欄に、薬害オンブズパースン会議のメンバーでもある隈本邦彦氏からMSDに関する情報をいただきました。今回の記事は、それをもとに掘り起こした情報をまとめたものです。非常に重要なので記録として残す意味もあり、長めに引用しています。
まず、2021年8月28日に公開されたBuzzFeed Newsの記事を引用します。長いですが重要なところを太字にしたので、そこを中心にご一読ください。
まだ積極的勧奨を再開すると決めてもいないはずの時期に、2021年10月の積極的勧奨再開に向けて製造し、出荷されていたというのでしょうか。そうなると、かなり前に水面下でGOサインが出ていたということになります。
そして気になったのは、記事の情報源です。調べてみたのですが、この「警告文書」というのは公開されていません。後述する議事録にも文書があることは語られていますが、詳しい内容は明かされていません。それなのに、なぜこの記事の筆者は「警告文書」の存在や内容を知っているのでしょうか。他のメディアでは、この「警告文書」について報じている記事は見当たりません。
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、田村厚労大臣(当時)に「警告文書」を公表を求める意見書を提出しています。
「警告文書」は公表されていないのですが、8月30日の厚労大臣会見でもそれについて触れられています。
記事に出ている8月27日の会見から確認しました。
2021年8月27日
「厚労省が10月にも積極的勧奨の再開に向けた議論を始めると報じられている」と言っていますが、厚労大臣は「今10月からというような話はあるわけではございません」と言っています。つまり、表向きはこの時点で10月から再開する話は出ていなかったことになっています。
「WHOからもHPVワクチンを積極勧奨しないことに対していろいろとご意見をいただいている」というのも、おかしなことです。日本には日本の考えがあって積極的勧奨を中止していたのに、なぜWHOは干渉してくるのでしょうか。
そして31日の会見では、下記のように語られました。
2021年8月31日
要望書を提出したのは、自民党の「HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟」だと、下記の記事に書かれています。この記事もBuzzFeed Newsです。
メーカーと自民議連との間において、勧奨再開に向けた不透明な協議が行われてきたことが推測されるとのことで、この件についてもHPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団が公開質問書を提出しています。
会見の続きです。
質疑の部分は動画がないので、この記者がどこの媒体かわかりませんが、BuzzFeed Newsなのではないかと思われます。記者なのに「文書が大臣に提出されたところです」と断言していて、大臣も「製薬メーカーのご意見」だと文書の存在を認めていると読み取れます。
さらに、9月16日に開催された「医薬品等行政評価・監視委員会」の中でも「警告文書」について触れられています。
2021年9月16日
まずは、積極的な勧奨再開に向けて安全性の根拠となるデータがあるかという質問です。
佐藤委員の質問に対して、予防接種室評価分析専門官が答えていますが、最初に引用した記事に「2022年4月までのキャッチアップ接種開始を前提に、厚労省予防接種室からの要請を受けて、接種率が回復しても支障をきたさない程度の量のワクチンを日本向けに確保したとしている」と書かれていました。
予防接種室評価分析専門官は「これから審議会で評価していく」と答えているのに、あの記事が事実なら、すでに発注しているのはおかしな話です。
佐藤委員は、新型コロナワクチンの安全性について疑問を呈し、心筋炎のリスクを周知するべきだと言っていた方です(下記参照)。この後、「新型コロナワクチン予防接種についての説明書」が、ファイザー社、モデルナ社ともに更新されていました。
佐藤委員は、「新薬学者集団 2022 年度講演会」でもHPVワクチンの積極的勧奨再開について語っています。
「最近の医薬品行政の問題点:HPV ワクチン・新型コロナワクチンを中心に」(その 1)佐藤 嗣道
けれども、このような委員は少数派です。なぜこのような意見はかき消されてしまうのでしょうか。
「警告文書」については、別の委員が質問しています。
MSDと直接のやり取りして意見交換等があったのか、あったなら内容や経緯を示してほしいと言っています。
国民の命や健康に関わることなのに、なぜ文書の中身を明かせないのでしょうか。コロナワクチンやパンデミック条約(仮称)などと同じで、国民の知らないところで重要なことが決められているのは大きな問題です。
私もこのことが気になっていました。アメリカでは完全に9価に切り替わっていて、4価は販売されていません。本当に予防効果があるなら、4種類より9種類予防できる9価の方がいいはずです。
MSDのサイトに、「各国のHPVワクチン接種プログラム」をまとめた表がありました。
日本は2019年度のデータとありますが、2023年4月から9価も公費で接種できるようになっています。けれども、9価に切り替わるのではなく4価も継続。2価は、グラクソ・スミスクライン社のワクチンです。
カナダやフランス、イギリスも4価から9価に切り替えています。なぜ日本だけ4価を接種し続けているのでしょうか。しかも、男子への費用助成で4価を接種させようとしています。4価と9価の安全性が同程度なら、なぜ日本も4価をやめて9価に切り替えないのでしょうか。やはり、積極的勧奨を中止していたときの在庫処分なのではないでしょうか。
2019年4月には発注していたのか?
HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、製薬会社による不透明な働きかけを批判する会見を2021年9月3日に行っています。
前述の質問に対しては「審議会マター」だと答えていたのに、水面下で協議していたなら矛盾しています。
製薬会社と厚労省
10月の再開に向けて準備してきたMSDの担当幹部にインタビューした記事が、BuzzFeed Newsにありました。記事に書かれた幹部の経歴を見ると、厚労相やWHO本部と書かれています。堂々と書かれていますが、このような人事で公正な協議ができるのでしょうか。
以下、インタビューのポイントを書き出しました。
2021年9月2日 BuzzFeed News より
Q:MSDからの「警告文書」はなぜこのタイミングだったのか?
→この文書は正式に提出したものではないので、この内容の質問については答えを差し控えさせていただく。
Q:MSDは9月1日「HPV ワクチンの積極的な接種勧奨再開に関する厚生労働大臣の発言についてMSD 株式会社のステートメント」を発表。再開時期などについて厚労省との合意があったのか?
→予防接種法でワクチンの確保は国の責務であり、我々企業はその供給に協力する責務がある。緊密に協力し、話し合いをするのは普通のこと。今回の件も国との信頼関係の中で対話をして、我々としては10月の再開のために緊密な協力をしてきた。
Q:10月という具体的な数字が警告の文書にもステートメントにも書かれているのは、厚労省との緊密な協力の中でその数字が出ているということで間違いないか?
→そういったコミュニケーションは協力関係の中でしている。キャッチアップを含めて積極的勧奨のために必要な量のワクチンを準備してきている。各国の配分は必要なタイミングで決定し、日本向けはだいぶ前の段階で決める。我々としては必要な量を確保して準備を進めてきた。
Q:確保している量はどれくらいなのか?
→確保している具体量については公表していない。積極的勧奨の再開をした後に見込まれる接種率の伸び、積極的勧奨を控えていた間に接種を逃した方のキャッチアップ接種の必要量、公衆衛生学的観点からの必要性も考えて、欠品が起こることのないように十分日本向けに確保している。
Q:もし再開が遅れて、ワクチンを廃棄することになったら、どのような批判が予想されるか?
→廃棄されたワクチンで救うことのできた命が他国で失われることになる。他国で失われた命や女性の健康は回復できない。
詳細は、ぜひ記事で確認してください。
審議会など関係なく、交渉が進められていることが明白です。しかも、その内容は「明かせない」と言っています。そんなこと、あっていいのでしょうか。
日本は、WHOや製薬会社の言いなりでワクチンを接種する国になってしまったということです。用意されたワクチンの量さえも明かせないのは、なぜなのでしょうか。
元ファイザー臨床開発統括部長がワクチン分科会の委員をしているなど、厚労省と製薬会社は水面下で協議ができるルートができてしまっているのです(下記参照)。
結局、HPVワクチンの積極的勧奨は、順次廃棄となるとMSDが警告した期限ギリギリの2022年4月に再開されました。安全性が確認できたわけでもないのに、なぜこの時期だったのか不思議でしたが、MSDに言われたからだったのですね。
「警告文書」から始まって、それに関するBuzzFeed Newsによる記事、厚労大臣の会見、自民議連の要望、執行役員のインタビューまでのすべてが、MSDのマーケティング戦略だったように思えます。
「3時間に1人が子宮頸がんで亡くなる」というタイトルで不安を煽り、「廃棄されたワクチンで救うことのできた命が他国で失われるわけです。他国で失われた命や女性の健康は回復できないと思っています」という言葉で日本人の感情に訴えかけています。
一方で、接種後に死亡したり健康を回復できない人たちのことは「接種と関係ない」として、治療法を見つけようともしていません。
「○時間に○人が亡くなる」とか「2人に1人ががんになる」などという表現は、どのように計算したかを考えることも必要です。
例えば、「2人に1人がガンになる」という表現は、生命保険のCMや勧誘、検診を勧めるパンフレットなどでよく見かけます。下記の記事では、「2人に1人がガンになる」というのは80歳から天寿を全うするまでの間のことであり、ほかの要因も含めて死亡のリスクが高まる世代になってからである、と説明しています。
以下、「がん情報サービス」より
子宮頸がんの死亡数、年齢階級別死亡率
子宮頸がんの死亡率は、70代後半から高くなっていきます。このようなデータを、単純に「3時間に1人死亡する」などと換算するのは印象操作ではないでしょうか。
このワクチンを接種すれば、絶対に子宮頸がんにならないというわけでもありませんし、予防効果があるとしてもいつまで続くかはわかっていません。接種して、70代、80代になった人はまだいません。
HPVは珍しいウイルスではなく、 多くの女性が人生で一度は感染する可能性があり、感染したからといって必ずがんになるわけではありません。それなのに、ワクチンを接種しなければ死んでしまうような印象を与えています。
以前の記事にも書きましたが、性交渉以外の感染経路も明らかにされていません(下記参照)。
ウイルスに感染しても子宮頸がんを発症する人としない人の違いは、どこにあるのでしょうか。ワクチンに頼るばかりではなく、他の予防方法について研究することも、国民の命を守るために必要ではないのでしょうか。
WHOや製薬会社の言いなりになっている日本は、国民を守ろうとしていると言えるのでしょうか。
すでにWHOや製薬会社の言いなりになっているのですから、このままではパンデミック条約(仮称)やIHR改正によってさらに悪い状況になっていくでしょう。