国内初の経鼻投与インフルエンザ予防ワクチン「フルミスト」
2023年3月に、国内で初めてとなる経鼻投与によるインフルエンザ予防ワクチン(2歳~19歳未満)が承認されました。今シーズンから接種が開始されるこのワクチンは、伝播に関する評価が行われています。
日本での承認まで約6年
経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」は、第一三共がアストラゼネカ社の子会社であるMedImmuneLLC(メディミューン)との間で、国内における開発・販売に関するライセンス契約を締結。2016年6月に承認申請をして、部会通過まで6年以上かかっています。
アストラゼネカ社のプレスリリース(2015年9月 02日)
アストラゼネカ 日本における鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチンの開発・商業化に関するライセンス契約を第一三共と締結
第一三共のプレスリリース(2023 年 3 月 27 日)
経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト®点鼻液」の
国内における製造販売承認取得のお知らせ
ミクスOnline(2023/02/28)より一部引用。承認される前の記事です。
部会通過まで6年以上かかった理由について、「承認申請後に追加データが必要となり、企業が国内試験を追加で行った」と書かれています。
審査報告書・添付文書など
審査報告書などはPMDAのサイトで公開されています。
添付文書PDF(2024年08月19日)
添付文書にワクチンウイルスの水平伝播の可能性があると書かれているので、これについては後述します。
「経鼻接種において」、使用前例のない新添加剤が使用されていると書かれています。
副反応(鼻づまりや鼻水、咳、喉の痛み、頭痛など)の発現頻度が67.9%というのは、かなり高いのではないでしょうか。
審査報告書にも有害事象として収集された「インフルエンザ」についての項目があり、「本剤由来のインフルエンザウイルスによるインフルエンザの発症は副反応として注意が必要である」と書かれています。
インフルエンザを予防するために接種して、副反応でインフルエンザを発症する可能性があるとなると、添付文書の「4.効能又は効果」として「インフルエンザの予防」といえるのでしょうか。
PMDAのサイトには、患者向医薬品ガイドも公開されています。
患者向医薬品ガイド フルミスト点鼻液
ここにも伝播について書かれていますが、接種する人だけでなく、このような可能性があることは広く知らせておくべきではないのでしょうか。
審査報告書にも伝播リスクの評価について書かれていましたが、申請資料概要の方が短くまとまっていたのでこちらを引用します。
フィンランドで1999年~2000年に行われたもので、人数が少ないですし、託児所でのデータだけですが、可能性が低くても添付文書に注意喚起することが適切であると書かれています。接種する医師は、ここまできちんと説明するのでしょうか。
そしてこのような評価は、遺伝子治療等に含まれるとされるmRNAワクチンやレプリコンワクチンでもする必要があると思うのですが、なぜしないのでしょうか。
「フルミスト」の有効性は28.8%
2024年5月23日に開催された「第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会」の資料の中にも、フルミストに関する資料が公開されています。
05【資料2】小児に対するインフルエンザウイルスワクチンについて
鼻水などの副作用の発現率が67.9%で、有効性が28.8%。メリットが上回ると言えるのでしょうか。
不活化ワクチンとの比較は、国によってばらつきがあります。
追記:2024年9月17日
クリニックのHPに書かれている「フルミストの効果が1年間持続」するという件について、記事をまとめました。
開発中の粘膜ワクチン
フルミストは6年以上もかかって承認されましたが、それが去年だったということにも何か意味があるように思えます。
日本医療研究開発機構のサイトに「粘膜ワクチン開発状況」という資料がありました。
粘膜ワクチン開発状況 2024/03/28公開
これからどんどん、注射器を使わずに簡単に接種できるワクチンが開発されていくようです。ウイルスベクターも遺伝子治療に含まれると思うのですが、伝播の評価はされるのでしょうか。
資料4-1: 内田参考人説明資料
「フルミスト」については、下記の記事でも取り上げました。下記の記事では、インフルエンザワクチンの添加剤についても取り上げています。
下記の記事でも、フルミストを取り上げていました。