ファイザー社は、正式承認後も緊急使用許可ワクチンを生産
前回の記事で、ファイザー社製の小児用ワクチンと大人用ワクチンは、添加剤に違いがあることを取り上げました。FDAの資料を見ると、大人用にも添加剤が違うバイアルがあります。その違いを調べてみると、どうやら日本で接種しているのは、アメリカでは生産終了になったタイプのバイアルのようです。調べれば調べるほど、頭が混乱!
正式承認と緊急使用許可
FDA(アメリカ食品医薬品局)のファクトシートでは、EUA(緊急使用許可)ワクチンは「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine」、正式承認されたワクチンは「Comirnaty」と書き分けられています。私はずっと、このことが気になっていました。なぜならば、2021年8月にFDAで正式承認されたなら、その後は正式承認のワクチンに切り替わり、緊急使用許可のワクチンについて書く必要はなくなると思っていたからです。
下記の裁判でも、そのことがポイントとなっていました。
添加剤の違い
FDAのサイトに、ファイザー社のワクチンに関する「よくある質問」のページがあります
そこには、下記のように書かれています。
ポイント
・正式承認されたComirnatyと緊急使用許可されたPfizer-BioNTech COVID-19は、互換性がある。
・小児用の Pfizer-BioNTech COVID-19は、大人用とは製剤が異なり、 Comirnatyと互換性を持って使用するべきではない。
やはり、子どもに大人用を薄めて使用するなど、やってはいけないことです。
では、成分のどこが違うのでしょうか。
FDAのサイトには患者向けのファクトシートがあり、その中にも「よくある質問」とその回答があります。
For Recipients and Caregivers 12 years of age and older May 17, 2022
ワクチンに関するよくある質問として、
WHAT ARE THE INGREDIENTS IN THE VACCINES?
(ワクチンの成分は何ですか?)があります。
「OR」がたくさん出てきますが、共通する成分のほか、添加剤に違いがあり、12歳以上向けは全部で4バージョンあることがわかります。
共通の成分
• mRNA and lipids ((4-hydroxybutyl)azanediyl)bis(hexane-6,1-diyl)bis(2-
hexyldecanoate), 2 [(polyethylene glycol)-2000]-N,N-ditetradecylacetamide, 1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine, and cholesterol).
日本の添付文書で見ると、下記の部分だと思います。
[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカン酸エステル) 3.23mg 2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド 0.4mg
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン 0.7mg
コレステロール 1.4mg
添付文書は下記のページで見られます。
次に、「12歳以上向けのPfizer-BioNTech COVID-19ワクチンには、以下の追加成分のうちどちらかが含まれています。どちらのバージョンが投与されているか、接種者に尋ねてください」、と書かれています。
どちらが含まれているか質問しないとわからないなんて、普通はあり得ないでしょう。
• potassium chloride, monobasic potassium phosphate, sodium chloride, dibasic sodium phosphate dihydrate, and sucrose
OR
• tromethamine, tromethamine hydrochloride, and sucrose
さらに、「COMIRNATYには、以下の追加成分のうちどちらかが含まれています。どちらの成分が含まれているかは、接種者に尋ねてください」とあります。
• potassium chloride, monobasic potassium phosphate, sodium chloride, dibasic sodium phosphate dihydrate, and sucrose
OR
• tromethamine, tromethamine hydrochloride, and sucrose
日本の添付文書を見る限りトロメタミンは入っていないので、日本で今接種しているのは「 potassium chloride, monobasic potassium phosphate, sodium chloride, dibasic sodium phosphate dihydrate, and sucrose」のバージョンのようです。
紫キャップとグレーキャップ
FDAによると、ファイザー社のワクチンは紫キャップ、グレーキャップ、オレンジキャップの3種類あります。オレンジキャップは小児用ですが、紫キャップとグレーキャップは大人用です。その違いは、希釈するかと保管方法にあるようです。
ポイントはmust diluteかno dilution。
紫キャップ(要希釈) For Healthcare Providers 12 years of age and older, purple cap (must dilute) June 1, 2022 より
グレーキャップ(希釈不要) For Healthcare Providers 12 years of age and older, gray cap (no dilution) May 17, 2022 より
オレンジキャップ(要希釈) For Healthcare Providers 5 - 11 years of age, orange cap (must dilute) May 17, 2022
グレーキャップのみ、希釈不要となっています。日本ではコミナティ筋注は希釈して使うように書かれているので、大人用はFDAの資料でいう紫キャップと思われます。
ワクチンの商品コード
紫キャップとグレーキャップについて、アメリカのCDC(疾病対策予防センター)が出している資料から、いくつかの情報を読み取ることができました。
CDCのサイトに、「COVID-19 Vaccine Codes」が書かれたページがあります。下記に出てくるNDCとは、医薬品に割り当てられた10桁の数字コードです。
このページには、上段に緊急使用許可された(EUA)ワクチン、下段に正式承認された(BAL)ワクチンが書かれています。その間に、上記の文章があります。
そこには、「下段に書かれたワクチン(正式承認)は、上段のEUA認可およびラベル付けされた製品と同じ製剤を表しているかもしれないが、EUA製品が利用可能である間はメーカーにより生産されていないため、別々にリストアップされている」と書かれています。
オリジナルの製剤(=紫キャップ)で正式承認されたものは、生産されていないと書かれています!!
さらに、表の右端にある文章を読んでみます。
ファイザー社の声明
「ファイザー社は2021年8月23日に16歳以上用COVID-19ワクチン(COMIRNATY)の最初のFDAによるBLAライセンスを取得しました。その際、FDAはBLAの添付文書に、承認された新しいCOVID-19ワクチンの商品名COMIRNATYを記載し、新しい2つのNDC(0069-1000-03、0069-1000-02)と新しい商品名のラベルの画像を掲載しています。
しかし、これらのNDCは生産されません。その後BLAで承認されたtris-sucrose formulation のNDCのみが生産される予定です。
「tris-sucrose formulation」とは何か調べて見ると、Tris Sucroseのバイアルはグレーのキャップで、希釈の必要がなく、12歳以上を対象に、現行の製剤(紫キャップ)に替わるものだと下記の資料に書かれています。トロメタミンの慣用名が、トリス(tris)というようです。
ニューヨーク市の衛生局が、2021年12月15日に「ワクチン製剤の変更に関する重要なお知らせ」を出しています。
Updates for NYC Vaccine Providers→
New Pfizer COVID-19 Vaccine Formulation (PDF, December 15, 2021)
この資料では、「ファイザー社の Tris Sucroseと呼ばれる新しい製剤の配布は、2021年12月末に開始される予定」だとも言っています。さらに、紫キャップワクチンは、2021年12月23日で出荷を終了。2 つの製品を同時に扱うとミスが起きるので、紫キャップの在庫を使い切ってからグレーキャップを注文するようにと書かれています。
本当にグレーキャップに切り替わったのか調べて見ると、例えば、フィラデルフィア市公衆衛生局のサイトには、2021年12月29日付でこんなお知らせがありました。
https://vax.phila.gov/index.php/notices/6823/
紫のキャップのワクチンが販売終了となり、大人/青少年用の新しい製剤のファイザーワクチンが間もなく発売される予定。今週オーダーすると、来週には、新しいグレーキャップのワクチンが受け取れると書かれています。
販売状況を検索
NDCコードを入れると、いつから販売されているかわかるサイトがありました。
下段に書かれている正式承認「30 mcg/0.3 mL for adult 16+ (original formula)」のコード2つ(0069-1000-02、00069-1000-03)を入れてみると、「No results found」となります。やはり、販売されていないようです。
一方、上段にあるものを入れてみます。
●紫キャップ(EUA)「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine (PURPLE CAP)(Original product formulation)」
コード(59267-1000-2、59267-1000-3)
Marketing Category :EMERGENCY USE AUTHORIZATION(EUA)
Start Marketing Date: 12-12-2020
Listing Expiration Date: 12-31-2023
(掲載有効期限)
●グレーキャップ(EUA)「Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine (GRAY CAP)(Tris-sucrose formulation)」
コード(59267-1025-3、59267-1025-4)
Marketing Category :EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA)
Start Marketing Date :10-30-2021
Listing Expiration Date :12-31-2023
●グレーキャップ(BAL)30 mcg/0.3 mL for adult 16+ (Same as EUA tris sucrose formula)
コード(0069-2025-10、0069-2025-25)
Marketing Category BLA : A product marketed under an approved Biologic License Application.(BAL)
FDA Application Number :BLA125742
Start Marketing Date: 05-18-2022 ←EUAの方が先に販売!?
Listing Expiration Date :12-31-2023
希釈不要のグレーキャップは、正式承認となっているものもありますが、販売開始日が2022年5月18日です。ここでまた疑問なのですが、正式承認後にグレーキャップに切り替えるなら、グレーキャップはBALだけでよいはずですが、なぜかEUAが2021年10月30日に販売開始と書かれています。なぜ、すべてを正式承認バイアルに切り替えないのでしょうか?
そうなると、グレーキャップだからといって、正式承認バイアルとは限らないということになります。紫キャップのときのように、実は流通していないという可能性もあるかもしれません。
そして、新たな疑問。日本では、いつグレーキャップ(希釈不要)に切り替わるのでしょうか?
昨年8月に、アメリカで正式承認されたというニュースは日本のテレビでも報じられました。けれども、もし正式承認のバイアル(紫キャップ)が本当に生産されていなかったのなら、これは詐欺のような話です。「アメリカで正式承認されたなら安心」と思って、接種した人もいるかもしれません。
成分に互換性があるのに、FDAが正式承認と緊急使用許可を書き分けていることには、法的な理由があるはずです。
何も問題がなければ、正式承認した後は、普通にすべて正式承認バイアルとして販売すればよいと思います。これほどややこしいことを行う必要があるということは、何か問題があるからではないでしょうか。