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「肺炎球菌ワクチンがレプリコン」という根拠不明の情報をなぜ調べずに拡散するのか?

数日前にXで、「肺炎球菌ワクチンがレプリコン」だという情報が拡散され始めました。ただ封筒の画像があるだけで、根拠も示されていないのに、なぜ信じて拡散してしまうのでしょうか。


医師が発信した根拠不明の情報

Xで「レプリコンの名前を隠して、肺炎球菌感染症予防接種と名前を変えて、65歳以上の方々へ通知が届いています!」などと書かれたポストが拡散されています。レプリコン(自己増殖型)の根拠となる資料はなく、SNSでのやりとりと思われる画像が貼られていて、そこには肺炎球菌感染症予防接種のお知らせが入った封筒の画像があるだけです。

そのポストについたコメントの中には「根拠が示されていない」と書いている人もいますが、多くは「情報ありがとうございます」「拡散します!」などとそのまま信じて調べようとしていません。このような情報を、なぜ「おかしい」と思わずに信じてしまうのでしょうか。

拡散元は、医学博士を名乗るアカウントですが、彼は以前にも根拠不明の情報を拡散していました(下記参照)。

このときも、「『厚労省に電話で質問した』として投稿した医師は、毎日新聞の取材に『ネット言説をコピーしただけ』と答えた」と書かれていました。

そもそも医師がこのような不確実な情報を発信するべきではないですが、医師が発信した情報だからといって、そのまま信じてしまう人が多いことに驚きました。自分が不確実な情報を拡散してしまうことで、誰かに迷惑をかけてしまうこともあるのです。根拠不明の情報には疑いを持ち、必ず自分でも調べる習慣をつけなければ、本当に重要な情報を発信したときに「またデマか」と信じてもらえなくなってしまう恐れもあります。

それにしても、肺炎球菌感染症予防接種は以前から行われているのに、「レプリコンの名前を隠して、肺炎球菌感染症予防接種と名前を変えた」という話がどこからでてきたのか謎です。肺炎球菌感染症予防接種が以前から行われていることを知らなかった人が、勝手にそう思っただけのことを、医師が拡散してしまったのではないでしょうか。


https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001086212.pdf

2024(令和6)年度以降は1,2、もしくは3の方が定期接種の対象です。
対象者1:65歳の方
対象者2:60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方
対象者3:60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
※65歳を超える方を対象とした経過措置は2024(令和6)年3月31日に終了

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html

「65歳を超える方を対象とした経過措置は2024(令和6)年3月31日に終了」と書かれているので、「65歳以上の方々へ通知が届いています」というのも、正確な情報ではないように思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001086212.pdf

私は肺炎球菌ワクチンを勧めているわけではありませんが、正確な情報を確認するために取り上げています。


そして、今秋から接種が開始される予定のレプリコン(自己増殖型)ワクチンは、Meiji Seika ファルマ社の「ARCT-154(コスタイベ筋注用)」であり、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンです。

Meiji Seika ファルマ社のリリースに、

今回の承認は、次世代mRNA ワクチン(レプリコン)として世界で初めての承認となります。

https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/pressrelease/2023/detail/pdf/231128_02.pdf

と書かれているので、肺炎球菌ワクチンがレプリコンだということは、通常では考えられません。

今後、レプリコンになる可能性はあると思いますが、承認されてもいないのに今年からということはさすがにないでしょう。

裏で何かが起きている可能性も否定できないので、絶対にないとは言い切れませんが、そうであるなら根拠となる資料等を示して発信するべきです。封筒の画像だけでは、何もわかりません。

もし肺炎球菌ワクチンのリスクを伝えたいなら、きちんと情報源を示して説明するべきだと思います。このような根拠不明の情報で混乱させては、「どうせ反ワクチンのデマ」だと思われて余計に信じてもらいにくくなってしまうでしょう。

本当にワクチンの危険性を伝えたいなら、資料も情報源も示されていない発信は、安易に拡散しないように気をつけなければならないと思います。