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HPVワクチン 2010年8月の厚生科学審議会で語られていた問題点

2010年8月27日に開催された「第12回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会」では、HPVワクチンについて非常に重要な問題点が語られていましたが、接種を勧める人たちはそれについて語りません。接種を検討するために必要な情報だと思うので、議事録を掘り起こしました。


2010年8月27日 第12回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 

議事録や資料は、厚労省のサイトで公開されています。

2人の参考人による発言を掘り起こし、一部を引用します。

参考人の発言1

理化学研究所 新興・再興感染症研究NW推進センター
神田忠仁氏
5-2 神田参考人提出資料(PDF)

https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ojc2-att/2r9852000000ojgl.pdf

○神田参考人 HPVワクチンは、現在がんを予防できる夢のワクチンというふれ込みでいろいろ情報が出ておりますが、ウイルス学の立場からこのワクチンを科学的に説明したいと思います。
(中略)
 もう1つ重要なことは、この状態、潜伏している状態では、臨床家が擦過細胞を回収しても検出は期待できません。ですから、HPVDNAが検出されれば感染があるという証拠になりますが、ネガティブというのは、残念ながら感染していない証拠とはなりません。
(中略)
 ところが、HPVは感染すれば潜伏してしまいます。ですから、基本的戦略として、最初の感染そのものを防がなければいけない。HPVワクチンは非常にチャレンジングな、新しいコンセプトのワクチンです。今どういうふうに説明されているかというと、筋肉に3回抗原を打つと、血清中に高い力価の中和抗体が出てきて、それが女性の生殖器の粘膜に常時染み出していて、ウイルスが性行為で感染してくると、そこで止めるという考え方です。そういうふうに説明されていますが、実際に、血中にどのくらいの抗体価があれば、染み出ていって完全に感染を防げるのか、あるいは女の子に打って、その子がだんだん成熟していって、かなりおばちゃんになっても、同じように血中の抗体価と並行して粘膜上抗体が出るのかは、データは全くありません。
 したがって、いま申し上げたのは、このワクチンは、はしかのワクチンとか、いままでうまくいっているワクチンと同じように、「ワクチン」という言葉で括ってはまずい。新しい概念のワクチンである。その効き方に関して、かなり不明な点が残っていますし、まだ効果の継続性に関しては、データがないというのが実情と私は思っております。
 
 もう1つは、いろいろな遺伝子型があるということです。HPVは現在100以上、200と言う人もいますが、見つかっています。大体6割が皮膚から、4割が粘膜から取られています。粘膜から取られたうちの15種類ががんに見つかるので、発がん性のタイプというふうに呼ばれています。遺伝子の塩基配列の相同性で型に分けています。
(中略) 
私がいまいちばん信用しているこの国のデータでは、琉球大学から出てきたデータですが、16型が多く、18型は残念なことにこの国ではあまり多くなくて、30番台、50番台が多いということが示されています。
(中略)
この方法を使って、これは我々のデータですが、病院を訪れた健常人を含む日本人の女性の頸管部の擦過細胞からDNAを取って調べると、いろいろな型が出てきます。疾患との関係はいまのところ解析していません。ただ、いろいろな型が出てくるというだけですが、非常に重要なのは、30%ぐらいが複数のHPV型に感染していることです。
(中略)
 これは臨床検体ですが、複数の感染がある場合、例えば、16型、18型、31型の感染がある場合には、この方法を使うと18型と判定されます。我々はリアルタイムでコピー数を測っていますが、16型に混じって大体10分の1ぐらい18型があると、干渉が起きて18型になってしまいました。あるいは複数の型が存在すると、検出の感度がものすごく悪くなります。要するに、従来のこの国の子宮頸管部の病変に見つかるというタイピングのデータというのは、こういう方法で調べられていたので、はっきり言って、これから本気に調べ直さなければいけないという状態だと思っております。
(中略)
 つまり、非常にチャレンジングなワクチンであるということと、いまワクチンの標的となっている型は、必ずしもいま言われているほどの頻度で、この国の子宮頸がんにはないのではないかという問題があります。
(中略)
しかし、先ほど申し上げたように、このワクチンは新しいコンセプトのワクチンです。いままでにない全く新しいタイプのワクチンで、長期間にわたって感染を防ぐのに必要な抗体のレベルもまだわからないのです。ですから、先ほど今野先生も示しておられましたが、ブースターが必要なのか、3回接種が本当に要るのか、これはまだわからない。このワクチンが入ったら、フォローアップをちゃんとやって、どんな抗体の推移があるのか、実際、プロテクションはどういうふうにかかるのかというデータを取る必要があると思っております。
 
もう1つ、いまのワクチンの最大の問題は、型特異性が異常に高く、少なくとも15種類ある、もう少しあるのかもしれませんが、発がん性を持ったHPVすべてに対応するワクチンを考える必要があると思います。以上です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vxbn.html


「実際に、血中にどのくらいの抗体価があれば、染み出ていって完全に感染を防げるのか、(中略)データは全くありません」

2010年の審議会なのでサーバリックスはすでに承認されていますが、これでも「予防ワクチン」として承認されるとは驚きました。

さらに対応する型についても、「これから本気に調べ直さなければいけないという状態」と言っています。

これで、「予防効果がある」といって国が勧めてよいレベルなのでしょうか。

「HPVDNAが検出されれば感染があるという証拠になりますが、ネガティブというのは、残念ながら感染していない証拠とはなりません」ということは、臨床試験で陰性だとしても、感染していないとは言い切れないということではないでしょうか。そうなると、臨床試験の結果だけでは、本当に予防効果があるかどうかはわからないのではないでしょうか。

○神田参考人 いままでの臨床試験のデータでは、長期間に効くだろうと考えられています。
臨床試験での血中の抗体価は、一旦ピューッと上がって、バッと下がるけれども、そこからプラトーになることから、かなり長期間に効くだろうと推定されています。私の立場では、感染してからがんになるまで10年、15年、20年とかかる。その間、女性は年を取っていくわけで、その間もずっと同じなのかどうかという問題が気になります。つまり、血中の抗体価と生殖器の粘膜上の抗体価というのが、子供もおばちゃんも同じなのかという疑問があります。正確に言えば、データがないというのが現状だと思います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vxbn.html

「子供もおばちゃんも同じなのかという疑問」は、解消されたのでしょうか。

参考人の神田氏は、承認前の2008年にも下記の記事で同じようなことを書いています。以下、一部引用です。

IASR Vol.29 No.9(No.343)September 2008

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン
国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター 神田忠仁
(Vol. 29 p. 250-251: 2008年9月号)

これらのワクチンは開発されたばかりであり、未解決の課題は多い。どの程度の血清中の中和抗体価があれば感染が阻止できるか不明なので、3回のワクチン接種が必要なのか、あるいは追加免疫が必要ないのか等のプロトコールの最適化が終わっていない。効果判定の指標にHPV DNAの有無を使った場合、HPVの潜伏感染は無症状でDNA の検出も困難なため、DNAを検出できなかったからといって感染を否定することはできない。数カ月おきに連続して採取した試料を使うことが提案されているが、どのような間隔で何回試料を採取すべきかはっきりしない。思春期の女児を対象とすべきか、男児は接種対象とすべきか、胎児への影響はあるか、等々は今後の臨床試験のデータに基づいて議論しなければならない。そして最大の課題は、ワクチンの誘導する抗体は型特異性が高く、限定的な交差性が示されているが、基本的にGardasilは6、11、16、18型に、Cervarixは16、18型にのみ有効で、他の型のHPVの感染阻止はほとんど期待できないことである。L2蛋白質に存在する型共通中和エピトープをワクチン抗原に応用する研究も進められている。

https://idsc.niid.go.jp/iasr/29/343/dj3437.html

「他の型のHPVの感染阻止はほとんど期待できない」と、はっきり書かれています。

神田氏について調べてみたところ、興味深い記事がありました。

武田、子宮頸がん予防ワクチンに参入 研究に着手 
2010年10月14日 0:12 NIKKEI

武田薬品工業は13日、子宮頸(けい)がん予防ワクチンに参入すると発表した。理化学研究所の神田忠仁氏が国立感染症研究所時代に発明したワクチンの特許を全世界で独占的に使用できる権利をこのほど取得。今後製品化に向け研究に着手する。
同ワクチンは子宮頸がんの主な原因である高リスク型ヒト・パピローマウイルス(HPV)15種類すべてに有効となる可能性がある。既存のものに比べ有効性が高い。武田は子宮頸がんの万能ワクチンになる可能性があると判断し、ライセンス契約の締結を決めた。

https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD130F4_T11C10A0TJ1000/

これがどうなったのかとさらに調べてみたところ、契約は武田から化血研へ継承されたようです。

HPVワクチンに関する独占的実施権許諾契約を化血研へ承継-武田薬品
2015年03月12日 PM05:00
武田薬品工業株式会社は3月10日、同社と公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団(HS財団)が締結していたヒト・パピローマウイルス・ワクチン(HPVワクチン)にかかる全世界における独占的実施権許諾に関するライセンス契約について、同契約に基づく全ての権利を同社から化学及血清療法研究所(化血研)に承継すると発表した。

契約の対象となったHPVワクチンは、国立感染症研究所で長年HPVワクチンの研究に従事し、現在、理化学研究所に所属している神田忠仁氏が発明したもの。2010年10月、武田薬品は、子宮頸がんの予防ワクチンの開発に関する契約をHS財団と締結し、前臨床の研究を実施していた。
今回の権利の承継に伴い、今後は化血研が同ワクチンの製品化に向け研究を実施することになる。

https://www.qlifepro.com/news/20150312/the-succession-an-exclusive-license-agreement-related-to-hpv-vaccine-to-of-blood-research.html

ところが化血研は2018年に、医薬品製造販売業をKMバイオロジクス株式会社に譲渡。明治グループのKMバイオロジクスは、 Meiji Seika ファルマと新型コロナ用不活化ワクチンの開発を進めていることが知られていますが、神田氏のHPVワクチンはその後どうなったのでしょうか。調べてみましたが、情報が見つかりませんでした。

2023年3月の情報では、神田氏は国立感染症研究所 名誉所員(AMED 新興・再興感染症研究基盤創生事業プログラムスーパーバイザー)となっているようです。

第5回先進的研究開発戦略センター戦略推進会合 文部科学省研究振興局



参考人の発言2

自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科
今野 良氏

5-1 今野参考人提出資料(PDF)

https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ojc2-att/2r9852000000ojge.pdf

○今野参考人 また心配される安全性に関しては、コントロールはA型肝炎ワクチンですが、パピローマウイルスのワクチンと比べた場合に、すべての特定外症状、医学的に問題になる症状、その他、同等の結果です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vxbn.html

前回の記事でも書きましたが、安全性を調べるためのコントロール群になぜ他のワクチンを使うのでしょうか。なぜ、生理食塩水ではないのでしょうか。


○今野参考人 ワクチンというのは、開発された途端に、このワクチンは10年もちます、20年もちますということはあり得ないのです。このワクチンが開発されて、10年経ちました、10年間予防ができました、抗体価が持続できましたということによって10年効いたという証明ができる。

 現在、先ほどの冊子にも付いていると思いますが、6.4年経ったところで論文がまとめられて、臨床試験の成績として出ているので、6.4年効きますということは確認されていますという表現になっています。
 実際に、いまの神田先生のような慎重な立場をとられれば、時が経っていかないとこの結果は出てこないということになります。ただ、それでは学問として皆さん方の要望に応えられないということがあるわけで、モデリングという学問があります。そういう意味で言うと、2価ワクチンのモデリングでは、最低20年は抗体価は維持できるだろう、持続性ができるだろう。4価ワクチンに関しても、全く計算方法は違いますが、30年はいけるだろうということで、すでにわかっているデータという意味ではありませんが、推測という学問の上での評価は出ているということです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vxbn.html


「このワクチンが開発されて、10年経ちました、10年間予防ができました、抗体価が持続できましたということによって10年効いたという証明ができる」ということは、発売から何年経ったかが重要ということになります。世界での発売は、それぞれ下記になります。

ガーダシル 2006年→2023年(17年)
サーバリックス 2007年→2023年(16年)
シルガード9 2014年→2023年(9年)

発売されてからすぐに接種した人でも、17年しか経っていないということです。シルガード9については、まだ10年経っていません。本当に効果がわかるのは、まだまだ先ということです。

参考人だった今野氏の活動を調べてみると、下記のような講演を行っています。

参考人2人も結局、推進派だったということですね。本心から危険性について指摘する人は、参考人として呼ばれないということなのでしょう。


がん対策推進室長の発言

5-3 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関する論点整理(案)(PDF) より

https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ojc2-att/2r9852000000ojgs.pdf


https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ojc2-att/2r9852000000ojgs.pdf


https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000ojc2-att/2r9852000000ojgs.pdf


○がん対策推進室長 資料5-3、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関する論点整理(案)ということでまとめております。
(中略)
一方、2つ目のポツですが、HPVワクチン自体は、定期的な子宮頸がん検診の代わりになるものではないということです。ワクチン接種に加えまして、正しい子宮頸がんの知識、何よりも早期発見のためのがん検診を定期的に受診することが重要ということです。やはり、検診とHPVワクチンの接種を関連づけ、より高い検診の受診率を目指し、効果的ながん対策のあり方を検討すべきではないかということを考えているところです。
 3つ目のポツで、子宮頸がんの発生は性交渉と関係しているということがありますので、対象者への性教育や保護者への正しい知識の普及を重視すべきではないか。こういったことから、現在公費助成が行われている自治体において、いま現在、接種対象者、被接種対象者に対する教育方法、がん検診との連携のあり方等々、さまざまな形で行われていますので、今後はこれらの知見を収集する必要があるのではないかと考えたところです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vxbn.html

「対象者への性教育や保護者への正しい知識の普及を重視すべきではないか」、これは実行されているのでしょうか。

厚労省のサイトには、下記のように書かれています。


HPVの持続感染と子宮頸がんの危険因子
・低年齢での最初の性交渉
・複数のパートナーとの性交渉
・喫煙
・免疫不全状態(例えば、HIV感染者はHPV感染症の危険性がより高く、たくさんの型のHPVに感染している)

https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2016/06081122.html

このことについて周知させるだけでも、かなり予防できるのではないでしょうか。まずそれをせずに、「とにかくワクチン」なのはなぜなのでしょうか。