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ついに日本でも農業従事者がトラクターでデモ行進! 島根県・吉賀町

2024年は、EUによる環境規制や自国の農業政策に不満を持つ農家による抗議活動がヨーロッパ各地で起きました。そしてついに、日本でも12月18日に島根県吉賀町の農業者ら約40人が、22台のトラクターで町内をデモ行進し、国や県に対して農畜産物価格への資材費転嫁や耕作放棄地の解消に取り組むよう訴えたそうです。

農業者に寄り添った農政を!

吉賀町のデモについて大手メディアは報じていないようですが、山陰中央新報デジタル、日本農業新聞、農業協同組合新聞が報じています。


農家に寄り添った政策訴え 吉賀でトラクター連ねデモ行進
山陰中央新報デジタル 2024/12/19 05:00

島根県吉賀町の農業者ら約40人が18日、町内を約3キロにわたり22台のトラクターでデモ行進し、国や県に対して農畜産物価格への資材費転嫁や耕作放棄地の解消に取り組むよう訴えた。

一行は同町六日市のJAしまね六日市農産物集出荷場を出発。「自給率の大幅アップにつながる国消国産、米をはじめとした農畜産物の安定した価格維持を訴えていく」と呼びかけ、町内を巡回した。
 近くの町役場本庁舎前で、デモ行進を主催した町農政会議の斎藤一栄会長(74)が「農業、すなわち食料を守れない国に未来はない」と声明文を読み上げた。

 受け取った岩本一巳町長は「農業は町の基幹産業であり、町村会などを通して皆さんの思いを国政に届けたい」と述べた。
 斎藤会長は「米価は上昇したものの生産者に大きな利益はない。生産者と消費者がけんかするようになるのではないか」と話した。

 町によると、町内の耕作放棄地は2023年度228ヘクタールで農地面積の約2割を占め、20年度の119ヘクタールから2倍近く増えた。農家数は農林水産省統計で15年度の835戸から20年度は702戸に落ち込んだ。

https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/699136

約1分の動画です。

動画の中で斎藤一栄氏(デモ主催者)は、下記のように語っています。

「たとえ武器弾薬を溜め込んだとしても、食料がなければ国や民を守ることはできません。農業、すなわち食料を守れない国に未来はありません。なぜなら、世の中で食べない人はいないからであります」

「農業、すなわち食料を守れない国に未来はない」
本当にその通りだと思います。

日本農業新聞

約1分の動画です。


https://www.youtube.com/watch?v=XHF1glUhgPA&t=9s


https://www.youtube.com/watch?v=XHF1glUhgPA&t=9s

保育園のそばを通過した際には園児らが、野菜が描かれた旗を振って見送ったとのことで、子どもたちも盛り上がり、海外のデモとは違った雰囲気のようです。


農業協同組合新聞

吉賀町農政会議の斎藤会長は「農産物の価格、特に主食である米は、国が責任をもって価格を決めてほしい。米価が上がったといわれるが、生産資材、特に肥料の高騰で生産者は厳しい。トラクター・パレードは子どもたちも盛り上がり、やって良かった。岩本町長は、今度、全国町村会でも農業者の声を伝えたいと言ってくれ、みんな励まされた。このうねりを広げ、農業者の声を国に伝えるため国会議事堂をむしろ旗で包囲し、消費者理解を広げるため銀座4丁目でもパレードをしたい」と語った。

https://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2024/12/241219-78450.php

「農業者の声を国に伝えるため国会議事堂をむしろ旗で包囲し、消費者理解を広げるため銀座4丁目でもパレードをしたい」と語る斎藤氏の思いが全国の農業者に届くことを願い、この記事を書きました。

吉賀町農政会議 会長 齋藤一栄氏の声明

【持続可能な農業、農村に向けた声明】
申し上げたい事は山程ありますが、私達は、中山間地域で農畜産業を営む農業者として、国民の食を支えているという自負心があります。
しかしながら、我が国の酪農家は今年1万戸を割り、農家数もこの20年で半減し、88万3000戸にまで減少しました。今や国土、農地を守ことが出来る戸数ではなく、山々が耕地を飲み込んでいる状況にあります。
他にも農業を取り巻く厳しい環境が続く中、私達農業者は本日、国消国産に依る自給率アップ、増え続ける耕作放棄地の解消、早急なる少子高齢化対策、農地の多面的機能の回復、農畜産物価格への資材費等の転嫁など、農業者に寄り添った農政の実現を求め、トラクターパレードを実施したものです。
こうした農政運動が島根県全土に広がり、更には全国へのうねりとなって全ての農業者の団結に繋がる一歩になればと考えております。
たとえ武器弾薬を溜め込んだとしても食料が無ければ国や民を守ることはできず、農業すなわち食料を守れない国に未来はありません。なぜなら、世の中食べない人はいないからです。
今回の行動は小さな一歩かもしれませんが、この中山間地で農畜産業を営む私達農業者は、持続可能な農業、農村の実現に向けて全ての農業者に呼びかけるものです。
つきましては、私達農業者に対するより一層の暖かいご支援とご理解をお願い申し上げます。
令和六年十二月十八日
吉賀町農政会議   会長 齋藤 一栄

https://www.jacom.or.jp/noukyo/news/2024/12/241219-78450.php



欧州全域で農業従事者が意思表示

2024年は、欧州全域で農業従事者が抗議の声を上げ、各地でデモが行われました。

約1分40秒の動画です。
パリに続く高速道路などをトラクターで封鎖 農家らが「生活苦」訴えデモ(2024年1月27日)

約1分の動画です。
農家抗議デモ ヨーロッパ全域に拡大・激化(2024年2月2日)

CNNの記事(2024.02.06 )より

EU全域の農業従事者は、エネルギーや肥料、輸送のコストが跳ね上がっていると口をそろえる。とりわけロシアによるウクライナでの戦争が影響を及ぼしているという。これに加え、各国政府はインフレの中で食料品価格の上昇を押さえ込もうとしている。
EU統計局(ユーロスタット)のデータによると、農業従事者らが自分たちの生産した農産物で得る対価は2022年をピークに下がり続けている。同年第3四半期から23年第3四半期までの間に平均で9%近く下落したという。

https://www.cnn.co.jp/world/35214889.html

ドイツのトラクターデモ

文春オンラインの記事(2024/02/01)より

「土壌中の栄養損失を少なくとも50%削減し、2030年までに肥料の使用量を少なくとも20%削減すること」などが掲げられている。わかりやすくいうと、バイオ技術などのふんだんな投入によりEU圏の農地を「絶対に痩せない」土地にする予定なのだ。
 これは一見素晴らしい計画のように思えるが、裏を返せば「そういうハイテクな土地のセットアップが出来ない者はEU圏で農業をやっちゃダメ」という話なのである。そんなお金のかかるセットアップが出来るのは実際には巨大資本をベースとした高度な産業組織のみであり、中小の自作農はそのシステムに呑み込まれる未来しかない。

https://bunshun.jp/articles/-/68664?page=2

このように、各国で農業従事者が立ち上がっています!
オランダでは、2023年に農民市民運動党(BBB)が記録的な勝利を収めました。

一方、日本では、持続可能な農業や食の安全について関心を持たない人が、まだまだ多いように感じます。「農業(食料)を守れない国」に「未来」はないのです。まずは関心を持つことが、未来のための第1歩だと思います。