文徒インフォメーション vol.14

Index------------------------------------------------------
1)【Book】ロバート・ウェッブの回顧録『「男らしさ」はつらいよ』
2)【Publisher】乃木坂46が各社横断26誌とのコラボ企画
3)【Advertising】東京メトロは内海聡「医師が教える新型コロナワクチンの正体」の車内広告を撤去
4)【Digital】デジタル庁事務方トップに〝エプスタイン人脈〟伊藤穰一起用
5)【Journalism】東京五輪2020に試されるジャーナリズム
6)【Magazine】「文春オンライン」特集班の新スクープは〝オリパラ事務局のドン〟
7)【Comic】漫画家サトウサンペイが死去、91歳
8)【TV, Radio & Movie】米国メディアは東京五輪をどう総括したか
9)【Newspaper】NYタイムズ売上高23%増、売上過半数はデジタル広告
10)【Marketing】アニメ化、ノベライズ、コミカライズ、マーチャンダイズ
11)【Store】TSUTAYA中万々店(高知市)発の「山中賞」
----------------------------------------2021.8.10-13 Shuppanjin

1)【Book】ロバート・ウェッブの回顧録『「男らしさ」はつらいよ』

◎イギリスでコメディアンとして活躍するロバート・ウェッブが半生を振り返る「『男らしさ』はつらいよ」の帯には「『生きづらさ』は誰かを傷つける免罪符ではない」と書かれているそうだ。双葉社 翻訳出版担当がこの帯の文言を引用しながら次のようにツイートしている。
《『「男らしさ」はつらいよ』の帯にこんな言葉を掲載しています。
どんなつらさがあろうと他者を傷つけていい理由にはならず、まして「女性を狙った」と本人も述べる性差別犯罪の側面を他者が勝手に「生きづらさ」でコーティングしてしまうことは、差別構造を隠蔽し延命させるだけではないでしょうか。》
https://twitter.com/ftb_honyaku/status/1423858477273780224
このツイートが拡散され始めた!双葉社 翻訳出版担当が再び投稿を開始する。
《えっ、伸びてる...
補足すると、ここで問題にしているのは実際に被害者が存在する事件において加害者側の「生きづらさ」をなぜか第三者が物語ることによって女性嫌悪犯罪の側面とその加害がぼやける可能性であり、それぞれの方が感じる個別で多様な「生きづらさ」を牽制するものでは一切ありません。》
《ほとんどの「生きづらさ」は個人の責ではなく実は社会構造の産物で、それは等しく是正されるべきものです。そのことと「他者を傷つけていい理由にはならない」という倫理は両立し得るものの、本来は攻撃性に変わる前に誰もが「生きづらさ」をケアしていける社会のあり方が先に探られるべき話です。》
《『「男らしさ」はつらいよ』は男性性についての本なのでその点においてのみ書くと、親の暴力や周囲の男性性規範の抑圧を綴った幼少期を経て、中盤以降はそうした経験が著者に植え付けた「生きづらさ」をどうすれば他者に対する攻撃性として再生産しないですむかという葛藤が主題になってきます。》
《それは独力での克服は困難なほど個人に深く内在化したもので、他者の客観視も受け入れながらその状況を生む構造の中にいる自分を顧みる大変な道のりですが、そんなことをおそらく社会全体がやっていかなければならないのだと思います。その超個人的な中間報告として、よろしければお読みください。》
《いちおう宣伝アカウントなのでリンクも貼っときますね...》
https://twitter.com/ftb_honyaku/status/1424125775691669507

https://twitter.com/ftb_honyaku/status/1424125780422922240
日本経済新聞が5月8日付で大前粟生による書評を掲載している。
《本書を読むと、ことジェンダーに関しての「らしくあれ」という抑圧は、国が違っても同じなのだな、と実感する。男性もつらいし、言うまでもなく、女性もつらい。そこに程度の差はもちろんあるし、差を無視するべきではないが、男性中心社会の圧力によって苦しんでいるという点では男性も女性も同じだ。同じだということは、時に慰めにもなり得る。この気持ちを味わっているのは自分だけではないと相対化することができ、その分だけ、我々を抑圧するものの馬鹿(ばか)らしさがわかるかもしれない。》
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO71637470X00C21A5MY5000/?unlock=1
町田ヒロチカの表紙イラストがいいね!
http://hirochikamachida.com/2021/03/19/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%96%E8%91%97-%E7%94%B7%E3%82%89%E3%81%97%E3%81%95%E3%81%AF%E3%81%A4%E3%82%89%E3%81%84%E3%82%88-%E6%9B%B8%E7%B1%8D/
安東嵩史がツイートしている。
《本日発売、英国の俳優/作家ロバート・ウェッブの回顧録『「男らしさ」はつらいよ』(原題:How Not to be a Boy、2017年)を版権買付&編集しました。翻訳は夏目大さん。
「まずは、鏡に映る男から変えないか」と帯文に書いてあり、つまりそういう本です。よろしくお願いします。》
https://twitter.com/adtkfm/status/1372011958405230592
「『男らしさ』はつらいよ」で印象に残るフレーズは、これだろうな。
《フェミニズムは常に不利だった。何しろ、審判が勃起したペニスだったからだ。》

◎片山修の「山崎正和の遺言」(東洋経済新報社)を岩瀬達哉が「週刊ポスト」8月13日号で書評している。
《徒党を組むことを嫌った山崎の「原像の秘密」は、満州での敗戦と引き揚げ体験だ。「子供にとっては、あからさまな性教育の場」というほど、ソ連兵はどこでもかしこでも婦女子を犯していた。
無政府状態がいかに恐ろしいかを知って、「どんなに悪い政府でも、無政府状態よりはましだという信念の持ち主」となる。「モーレツからビューティフルへ」と移行した時代、その信念を「筋のいい学者」に伝え、「民の力」で育んだ地域文化を顕彰するため、プロデュースしたのがサントリー文化財団だった。》
https://www.news-postseven.com/archives/20210804_1680225.html?DETAIL
現首相や前首相は山崎正和の著書を読んだことがあるのだろうか。

ここから先は

25,798字
デイリー・メールマガジン「文徒」はマスコミ・広告業界の契約法人にクローズドで配信されている。2013年より月〜金のデイリーで発行し続けており、2021年6月で通巻2000号を数えた。出版業界人の間ではスピーチのネタとして用いられることが多く、あまりにも多くの出版人が本誌を引用するせいで「業界全体が〝イマイ社長〟になっちゃったね」などと噂されることも。

マスコミ・広告業界の契約法人に配信されているクローズドなデイリーメールマガジン「文徒」をオープン化する試み。配信されるメールのうち、出版・…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?