文徒インフォメーション Vol.34
Index------------------------------------------------------
1)【Book】「日本国紀文庫版」は浮世博史の指摘を300箇所以上こっそり採用
2)【Publisher】2022年は紙の雑誌最終戦争?新聞は2025年くらい?
3)【Advertising】高橋まつりの過労自殺から6年、鬼十則を再読する
4)【Digital】今年はNFTがいよいよテイクオフするのかもしれない
5)【Magazine】中国人コラムニストが日本の雑誌に送ったエール
6)【Marketing】各社、宝島式付録ビジネスにない付録を模索している
7)【Comic】ウェブトゥーンにどう取り組むかで日本漫画の未来が変わるだろう
8)【TV, Radio, Movie& Music】紅白歌合戦・箱根駅伝ともに視聴率は低下
9)【Journalism】「Choose Life Project」事件は津田大介たちの告発で始まった
10)【Person】80歳の角川春樹はいまなお「現役」の凄みを湛えている
11)【Bookstore&More】「街の書店、コロナ特需に陰り SNSとの相乗効果カギ」
----------------------------------------2021.12.27, 2022.1.5-7 Shuppanjin
1)【Book】「日本国紀文庫版」は浮世博史の指摘を300箇所以上こっそり採用
◎「ブックリスタ年間ランキング2021」が発表された。
総合
1位:『転生したらスライムだった件(17)』伏瀬、川上泰樹、みっつばー/講談社
2位:『進撃の巨人(34)』諫山創/講談社
3位:『転生したらスライムだった件(18)』伏瀬、川上泰樹、みっつばー/講談社
4位:『進撃の巨人(33)』諫山創/講談社
5位:『呪術廻戦 14』芥見下々/集英社
6位:『呪術廻戦 15』芥見下々/集英社
7位:『呪術廻戦 16』芥見下々/集英社
8位:『キングダム 60』原泰久/集英社
9位:『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐 』吾峠呼世晴/集英社
10位:『キングダム 61』原泰久/集英社
小説部門
1位:『わたしの幸せな結婚』顎木あくみ、月岡月穂/KADOKAWA
2位:『三体』劉 慈欣、大森 望、光吉 さくら、ワン チャイ、立原 透耶/早川書房
3位:『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』澤村御影/KADOKAWA
4位:『神様の御用人』浅葉なつ/KADOKAWA
5位:『後宮の烏』白川紺子、香魚子/集英社
6位:『天使たちの課外活動』茅田砂胡/中央公論新社
7位:『今度は絶対に邪魔しませんっ!』空谷玲奈、はるかわ陽/幻冬舎コミックス
8位:『高校事変』松岡圭祐/KADOKAWA
9位:『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ/中央公論新社
10位:『invert 城塚翡翠倒叙集』相沢沙呼/講談社
コミック部門
1位:『呪術廻戦』芥見下々/集英社
2位:『東京卍リベンジャーズ』和久井健/講談社
3位:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴/集英社
4位:『キングダム』原泰久/集英社
5位:『進撃の巨人』諫山創/講談社
6位:『転生したらスライムだった件』伏瀬、川上泰樹、みっつばー/講談社
7位:『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』フジカワユカ、理不尽な孫の手、シロタカ/KADOKAWA
8位:『ミステリと言う勿れ』田村由美/小学館
9位:『はじめの一歩』森川ジョージ/講談社
10位:『転生賢者の異世界ライフ~第二の職業を得て、世界最強になりました~』進行諸島、彭傑、風花風花/スクウェア・エニックス
ライトノベル部門
1位:『転生したらスライムだった件』伏瀬、みっつばー/マイクロマガジン社
2位:『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』理不尽な孫の手、シロタカ/KADOKAWA
3位:『月が導く異世界道中』あずみ圭、マツモトミツアキ/アルファポリス
4位:『【小説】本好きの下剋上』香月美夜、椎名優/TOブックス
5位:『蜘蛛ですが、なにか?』馬場翁、輝竜司/KADOKAWA
6位:『聖女の魔力は万能です』橘由華、珠梨やすゆき/KADOKAWA
7位:『薬屋のひとりごと』日向夏、しのとうこ/主婦の友社
8位:『精霊幻想記』北山結莉、Riv/ホビージャパン
9位:『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』愛七ひろ、shri/KADOKAWA
10位:『八男って、それはないでしょう!』Y.A、藤ちょこ/KADOKAWA
雑誌部門
1位:『週プレ』週刊プレイボーイ編集部/集英社
2位:『FRIDAY(フライデー)』FRIDAY編集部/講談社
3位:『料理王国』ジャパン・フード&リカー・アライアンス/ジャパン・フード&リカー・アライアンス
4位:『週刊アスキー』週刊アスキー編集部/角川アスキー総合研究所
5位:『FLASH(フラッシュ)』光文社/光文社
6位:『文藝春秋』藤原正彦、池上彰、角田光代ほか/文藝春秋
7位:『NHKラジオ ラジオ英会話【リフロー版】』NHK出版/NHK出版
8位:『anan』anan編集部/マガジンハウス
9位:『週刊大衆』週刊大衆編集部/双葉社
10位:『週刊現代』週刊現代編集部/講談社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000379.000006388.html
講談社が強く、小学館がどのベスト10にも入っていないのが特徴だ。講談社は総合で4位までを独占している。小説、ラノベではKADOKAWAが強い。
【お詫びと訂正】本日配信号の【本日の一行情報】のうち、「ブックリスタ年間ランキング2021」の件につき、「小学館がどのベスト10にも入っていない」と書きましたが、「コミック部門 8位:『ミステリと言う勿れ』田村由美/小学館」に入っておりました。ここに訂正とともに心からお詫び申し上げます。(出版人・今井照容)
(※上記の通り、この項の誤りを訂正する号外を配信した)
◎「デイリー新潮」は12月24日付で「『菅前首相』が暴露本出版の日テレ記者に激怒 『喋ってしまった菅さんが悪い』の声」を発表している。話題にしているのは日テレ記者・柳沢高志が文藝春秋から刊行した「孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか」だ。
《続いて記者Bは、「当然ですが、菅さんにとって内緒にしておきたかった“不都合な真実”もつまびらかになっていますよね」と指摘してこう続ける。
「『小池(都知事)が、またいろいろ動こうとしているみたいだな』と電話で言ったり、『岸田さんが総理になる可能性が高い。それでは国のためにはならない』と話したり、『俺は来年の総裁選に出ようと思っているから』と決断を伝えてみたり。また、新型コロナの感染者数が激増していく中でかけた超弱気の電話なんて話も……。いちご農家から徒手空拳で上京し、上り詰めて行った苦労人というイメージをもはや信じている国民はあまりいないとはいえ、菅さんのこれまでのイメージを覆したり壊したりするような中身ですよね」》
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/12240601/?all=1
私は小学館の飯田昌宏に薦められて読んだのだが、凡百のヨイショ本とは一線を画す内容に引き込まれてしまった。
◎文藝春秋の「オール讀物」が立ち上げた「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」。第一回の受賞作は島本理生の「2020年の恋人たち」( 中央公論新社)に決まった。文藝春秋を版元とする作品ではなかった!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000137.000043732.html
◎出版科学研究所によれば2021年の紙の出版物(書籍と雑誌の合計)の推定販売金額は前年比約1%減の1兆2100億円台となることがわかった。2021年1~11月期の紙の出版物販売金額は前年同期比0.4%減。上半期はプラスで推移したが、下半期は書籍、雑誌ともにマイナスが続いている。コロナ禍以前の2019年1~11月期と比較すると2.2%減。
ただし、電子出版市場は前年を2割程度上回ると見込まれ、紙と電子を合わせた市場はプラスとなることが確実だという。
https://shuppankagaku.shop-pro.jp/?pid=165828798
◎世界文化社は12月7日に発売した「ヨックモックの贈るクッキーレシピ」の重版を決定した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001229.000009728.html
◎大藪春彦賞の候補作が決まった。
伊吹亜門「幻月と探偵」 KADOKAWA.、武内 涼「阿修羅草紙」新潮社 、辻堂ゆめ「トリカゴ」 東京創元社 、西尾 潤「マルチの子」 徳間書店
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000397.000016935.html
◎紀伊國屋書店は、「紀伊國屋じんぶん大賞2022 読者と選ぶ人文書ベスト30」を発表した。ベスト10は次の通り。
大賞 岸政彦(編)「東京の生活史」筑摩書房
2位 北丸雄二「愛と差別と友情とLGBTQ+」人々舎
3位 川添愛「言語学バーリ・トゥード」東京大学出版会
4位 松本俊彦「誰がために医師はいる」みすず書房
5位 國分功一郎/熊谷晋一郎「<責任>の生成」新曜社
6位 マイケル・サンデル/鬼澤忍「実力も運のうち」早川書房
7位 アケミ・ジョンソン/真田由美子「アメリカンビレッジの夜」紀伊国屋書店
8位 岩間一弘「中国料理の世界史」慶應義塾大学出版会
9位 松村圭一郎「くらしのアナキズム」ミシマ社
10位 小川公代「ケアの倫理とエンパワメント」講談社
https://corp.kinokuniya.co.jp/kino-jinbuntaisho-2022/
◎「好書好日」は12月21日付で浮世博史が幻戯書房から刊行した「もう一つ上の日本史 『日本国紀』読書ノート」の編集を担当した名嘉真春紀による「読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(前編)」を公開している。
《読み始めてすぐ、(オヤオヤ)と思いました。浮世さんが誤りを指摘したいくつもの箇所が、その指摘通りに変更されていたからです。それも、単に史実に合わせたというわけではなく、元版では踏まえられていなかった浮世さんの指摘の複雑で繊細なニュアンスを、正確に汲み取りなぞったかたちで。
でも、参考文献一覧に浮世博史さんの名前はありません。まあ、それくらいのことはあるかな、とは予想していました。『もう一つ上の日本史』には刊行以来、百田さんや編集担当の有本香さんからは一切言及がなく、「読んでいない」という体裁になっていたからです。けど実は、百田さん(あるいは実務的な編集者)が、コッソリ熱心に読んでくれていたのかな、と思うと、つい微笑ましい気持ちになりました。》
《『もう一つ上の日本史』の指摘に対する反応を、採用/無視/反論、の三パターンに分けながら読んでいったのです。その結果、次のような数が得られました。
採用:300箇所以上
無視:100箇所以上
反論:50箇所以上》
https://book.asahi.com/jinbun/article/14502731
◎毎日新聞は12月28日付で「写真家・初沢亜利さん コロナ禍『匿名化する東京』 おやっ? でシャッター切った」(鈴木琢磨)を掲載している。
《2021年が暮れていく。友人でもある写真家の初沢亜利さん(48)と2年分の忘年会をやろうと思った。新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)される首都・東京をカメラで追い続け、写真集「東京二〇二〇、二〇二一。」(徳間書店)を出版したばかりの彼に聞いてみたかったのだ。コロナ禍で東京は変わったか、と。》
《収録168カットのうち、これぞ、という自信の作品を問うたら、すぐさまモノクロの1枚をあげた。千駄ケ谷の国立競技場そばの墓地から上空を飛行するブルーインパルスをとらえている。「パラリンピック開会式の当日でした。どこからどう飛んでくるかもわからず、カメラを構えていたら、小さな機体が2機ずつ3組にわかれて飛び去っていった。失敗したなとチェックしてみると、右端に飛び立つカラスがくっきり。なんだかもの悲しい大会を象徴する写真になりました」。》
https://mainichi.jp/articles/20211228/dde/012/040/013000c
山尾志桜里改め菅野志桜里がツイートしている。
《「この2年、何が変わり変わらなかったのか」問いかける初沢亜利さんの写真集。結局自ら手に入れたものは残り、他者から与えられたものは消えた。民主主義も法の支配も、コロナ禍であっという間に消えたしね。でも、自由は社会のシステムじゃなく個人の持ち物だから、人によっては残るんだなあ!》
https://twitter.com/ShioriYamao/status/1476699876503461891
◎「キノベス!2022」紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30が発表された。ベスト10は次の通りだ。
1位「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬(早川書房)
2位「正欲」朝井リョウ(新潮社)
3位「テスカトリポカ」佐藤究(KADOKAWA)
4位『スモールワールズ』一穂ミチ(講談社)
5位「夜が明ける」西加奈子(新潮社)
6位「常識のない喫茶店」僕のマリ(柏書房)
7位「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン/服部京子(東京創元社)
8位「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」福井県立図書館(講談社)
9位「死にたがりの君に贈る物語」綾崎隼(ポプラ社)
10位「ここはとても速い川」井戸川射子(講談社)
https://store.kinokuniya.co.jp/event/kinobest2022_20211224/
講談社から3点もランクインしている。また1位となった「同志少女よ、敵を撃て」は直木賞にもノミネートされている。
◎「ダイヤモンドオンライン」が12月30日付で発表している「本好きの度肝を抜く! 年末年始に必読の『世界史スゴ本』ラスボス的一冊 『独学大全』私はこう読んだ/世界史対談・読書猿×Dain」で読書猿の次のような発言を読めば、「岩波講座 世界歴史」の第一巻「世界史とは何か」を私が購入していなかったことをただただ悔いるしかあるまい。
《で、今回の第1巻は、編集責任者が小川幸司さんです。ご存じの方もおられると思いますが、この人は高校の世界史の先生なんです。現在は長野県蘇南高等学校の校長をされているようですけど、『世界史との対話』っていう授業を元にした分厚い3巻本を書かれていて、これを読むとこの方の歴史の授業はすごいものだというのがわかる。告白すると、第1巻を手にした時、私は小川さんという方がどんな人か知らなかったのですが、冒頭論文を読んでいると、どんどん違和感が蓄積していったんです。また怒られそうなことをいうと、「おかしい、歴史研究者にしてはあまりにも視野が広すぎる」と(笑)。
それで論文の最後の方に「第三期の『岩波講座 世界歴史』の第一巻の編集責任を大学の研究者でない私が担っているのは……」という一文に出会って、迂闊にもびっくりしてしまって。いや、『岩波講座 世界歴史』っていうのは、ほんとに歴史学会が総力をあげて取り組む大プロジェクトで、その第一巻はさっき言ったとおり、シリーズ全体の総括巻ですよ。
「岩波書店、攻めてきたな」と思いましたね。
ただ納得もしたんです。学校の世界史担当の先生は「教える専門家」です。専門は「教える」ことなので、「ある時代だけやります」という訳にはいかない。扱う分野は幅広くなる。要は人類の歴史のすべてを扱うわけです。》
https://diamond.jp/articles/-/292084
https://www.iwanami.co.jp/news/n43810.html
◎「ENCOUNT」が12月31日付で公開している「【Producers TODAY】紅白出場YOASOBI 出版Pが明かす関連書籍大ヒットの理由は“短尺”“デジタル融合”“アジア”」で双葉社の編集局次長・統括編集長の出版プロデューサー・渡辺拓滋は次のように語っている。
《小説の文字数の工夫です。TikTokの動画は当初60秒という短尺だったことで若者たちに受け入れられたと思いますが、小説も短いものの方が若い方々には最適なのではないかと考えました。小説は通常10万字や12万字、あるいはそれ以上ですが、『大正浪漫』は約8万字です。あえて短い文字数で出版したことが今の時代に合ったのではないかと思います。最後の3つ目は、テクノロジー。
原作募集コンテスト『夜遊びコンテストvol.2』にて、大賞を受賞したNATSUMIさんの作品『大正ロマンス』が加筆されて『大正浪漫』という小説や楽曲となり、YOASOBIさんやスタッフの皆様すべてのお力で、そして楽曲とテクノロジーを掛け合わせることでVRミュージックビデオや街と関わる音声ARコラボといった領域にも広がっていきました。1つのストーリーからITテクノロジー領域までコラボが発展したのも今までの出版業界にはなかったことで大変勉強になりました。》
https://encount.press/archives/261598/
「大正浪漫」にしてもそうだが、インターネットの読み放題サービスなどで提供されているTLやBLといった小説は「新言文一致運動」としか言いようのない特徴を持っているように思えてならない。私自身が最近、読んだ小説に「筋肉隆々」という言葉が出て来た。「文」においては「筋骨隆々」が慣用句だが、その作家の「言」においては「筋肉隆々」だということもあり得るのである。従来の文学からすれば「筋肉隆々」は誤用にほかならないだろうが、新・言文一致という観点からすれば「筋肉隆々」で良いのではあるまいか。「筋肉隆々」という「新語」は「骨」の欠如において、まさに時代の聖痕を刻印されているのである。
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マスコミ・広告業界の契約法人に配信されているクローズドなデイリーメールマガジン「文徒」をオープン化する試み。配信されるメールのうち、出版・…
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