文徒ジャーナル Vol.42
Index------------------------------------------------------
1)NHK字幕「捏造」事件 誰も納得していないNHKの調査報告
2)私が豊崎由美を大切にしたい理由
3)橋下徹が提案!朝日新聞記者を外人部隊としてウクライナに送れ
4)戦争とメディア 広告規制は日本にも無縁ではない
5)テレ朝!今度は報道局デスクが詐欺容疑で逮捕
6)吉川英治文学賞、同新人賞、同文庫賞が決まった
----------------------------------------2022.2.28-3.4 Shuppanjin
1)NHK字幕「捏造」事件 誰も納得していないNHKの調査報告
朝日新聞デジタルは2月24日付で「字幕の罪 問われる公共放送NHK記事 第2回 8年前の教訓生きず NHK字幕『真実性』チェックの態勢あったのに」を掲載している。
《匿名チェックシートは「なぜ匿名にするのか」や「取材先をどう確認したか」などの項目を記載して提出する。安易な匿名化によって裏付けが不十分な情報を流さないようにするため、インタビューを匿名で伝える必要があるときに、必要性や内容の真実性を上司とともに判断するための仕組みだ。》
《ところが今回は使われていなかった。調査報告書によれば、番組のチーフ・プロデューサーは男性が顔を出すことを承諾して取材に応じていたことから、その後の制作過程で配慮が必要だと判断して顔に「ぼかし」を入れることになっても、匿名チェックシートの活用を検討していなかった。報告書は「ルールが守られず、チェック機能が働かなかった」とした。》
《一方の「複眼的試写」は、新たな視点からチェックするため、取材制作にあたった担当者とは別の担当者や上司、局内で高い専門性を持つ人が試写に参加する仕組み。》
《今回の番組でも16日間の間に段階を経て6回の試写が行われたが、立ち会ったのは担当ディレクターとプロデューサー、その上司の専任部長で、番組に関わらない第三者的な視点を持つ管理職の試写はなかったという。》
https://digital.asahi.com/articles/ASQ2P4DJGQ2CUCVL00Q.html
匿名チェックシートの存在を軽く見ていたのである。これでは制度を導入した意味がなくなるというものだ。
同紙は2月25日付で「字幕の罪 問われる公共放送NHK記事 第3回『先入観』なかったか 誤認と中傷が拡散 NHK字幕問題の罪深さ」を掲載している。「吉野教授」とは元フジテレビのプロデューサーで筑紫女学園大学教授の吉野嘉高のことである。
《あるNHK関係者は「局内には五輪に対する無意識な肯定感があった。例えば、『五輪“賛成”デモにお金をもらって行っている』だったら、チーフ・プロデューサーも部長も不十分な確認だけでスルーしていないのでは?」と話す。
吉野教授も「業界の中ではNHKが番組内容のチェックに特に厳しいことは有名。それにもかかわらず問題が起きたということは、反対デモへの先入観があったのだろう」と指摘する。》
《NHKの調査報告について吉野教授が問題視することの一つは、あの男性を登場させた理由がはっきり書かれていないことだ。
「この男性でなければならない理由があった、と考えると、この番組の設計図のようなものが浮かび上がってくるのではないか。五輪反対派は、民意の外にいる異端者で、何者かにお金で動員されているというストーリー。それが暗黙の了解になっていたのでは。何の違和感もなくこのシーンを見ることができたから、チェックが甘くなったという側面があるのではないか」。NHK自身の調査では「自分たちの組織の構造的な問題に切り込むことはできない」と、BPOによる調査に期待する。》
https://digital.asahi.com/articles/ASQ2P4GW0Q2GUCVL02S.html
NHKは東京五輪の加担者としての価値観しか持てなかったのである。
元NHKの相澤冬樹は2月25日付「日刊SPA!」に「何の意図もなく『五輪字幕問題』を起こしてしまうNHKの希薄さ」を発表し、調査報告書を公表した5日後、部外秘で内部の全管理職を対象に開かれたオンライン説明会でNHK副会長の正籬聡が次のように発言したと紹介している。
《・・・さらに深刻だと正籬副会長がとらえているのは次のことについてだ。
「2点目は、これは本当に深刻だと思う。みなさんの疑問ももっともだが、調査チームの話を聞く限り、深い事情はない。本当にこの程度なのか、ファクトの確認、真実に迫る姿勢がNHKはこんなレベルなのかと、そのことのダメージは非常に大きいと思う。これは皆、悔しい思い、信じられない思いの人が多くいると思います。私もそうです。そういう目で視聴者は見ている、そういう事態に陥ったという意味で今回の事案は相当重い、深刻なものだと思っている。そのうえで前に向かって進んでいかなければならない」》
https://nikkan-spa.jp/1814519
相澤冬樹は「週刊文春」3月3日号にも「NHK五輪字幕捏造説明会で露呈した深刻すぎる危機」を発表している。
《今回の問題で一番NHKが反省すべきは「説明不足」だ。内部調査の報告書について「なるほど」と納得した方はほとんどいないと思う。》
《NHKの報告書は財務省よりはマシのようだが、肝心のことが伝わらないという意味では同じだ。何とか事を小さく見せて終わらせたいという「事なかれ」意識が共通している。その象徴が前田晃伸会長の国会答弁、「意図的にやるなら、もっとちゃんとやる」に表れ、責任を制作現場の大阪に押し付け東京は「我関せず」というそぶりにも見えている。何とか皆さんに納得してもらおうという真剣さに欠けているのである。》
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b2509
結局、BPOに期待するしかないのか。
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