最後のガラケーユーザーになりたい

私はガラケーユーザーだ。docomoのP-10A。縦方向のみならず横方向にも開くことが出来る優れもので、ワンセグを見ることが出来るFOMAだ。FOMAなんていう単語を久しぶりにお聞きになった方が殆どだろう。今の中高生はひょっとしてFOMA自体知らないかもしれない。

いつ購入したか、何年使っているかはもう記憶の彼方だ。2008年には前の機種だった記憶がある。2010年前後だろうか。とすると10年以上使っている計算になる。最後に赤外線通信をしたのはいつだろう。職場で新しい人と知り合ってもメールするほどの仲ではないため、電話番号の交換だけで済んでしまっていた。現在は新しい知り合いが出来たらiPadでLINEしている(iPadは電話契約しておらずWi-Fiを拾う必要があるので、一旦IDをきいといて自宅に帰ってから友達申請している)

時代の流れでどうやら、各社ガラケーが順次サービス提供を終了していくそうだ。docomoは2026年の予定らしい。数年前に「該当機種の部品の製造を終了したのでもう修理はできません」みたいな連絡が来た。そこから今に至るまでに電池パックの蓋のパッキンみたいな部分がボロボロになって蓋を閉められなくなり、充電口の蓋が取れて紛失し、そして先程充電器の「ツメを引っ込めるボタン」みたいなのが左右付いているうちの片方が破損した。充電器が抜けない?!と一瞬焦ったが、格闘の末なんとか抜くことが出来た。今後は充電するたびにいちいちこの格闘をしないといけない。ガラケーの販売が終わるとアナウンスされたタイミングでその時点での最新のガラケーに機種変する方法もあったが、今使っているガラケーが壊れているわけでもなく、なんとなくもったいなかったのでその方法は選ばなかった。2026年までこのガラケー一本で勝負しないといけない。

なんで私はスマホに替えないか。「えっ、まだガラケーなんですか?!」と驚かれた後に毎回訊かれるので、変人だと思われないような理由説明を模索している。スマホに替えない理由は幾つかある。まず電池の持ちの良さ。日本は災害大国であり、災害時にある種ライフラインとも言える通信機器の電源が落ちてしまうのは致命的だ。私は満タンに充電した替えの電池パックを鞄の中に入れている。二点目、「アプリをダウンロード出来ない」というのはむしろ大きなメリットだと思っている。携帯にアプリが入っていると出先で遊び呆けてしまう。出先で手持ち無沙汰になった時何の気無しにスマホをいじる方が多いと思うが、そこで鞄の中に語学学習のテキストとか入れておけば「よし、暇だし復習するか」というモチベーションになる。あと利用料が安い。月3000円程度で済んでいる。ただ最近は通信各社が利用料を下げる流れになっているので、スマホに乗り換えたら私のデータ使用量だとひょっとしたら1000円台くらいになるかもしれない。そしてなんとなく、まだ使えるものを破棄してしまうのは忍びない。もったいない精神である。

8年くらい前、当時の上司と「どちらがより長くガラケーを持ち続けられるか」というサドンデスをやっていたのだが私が転職してしまったのであの上司が2021年現在もガラケーなのかどうか確認する術がない。15年来の友人が以前「私はガラケーを貫く。iPodをスマホ代わりに出来るからそれでなんとかなってる」と言っていた割に5年くらい前に「スマホに替えました」という連絡が来た。令和になっても愚直にガラケーを貫いている私は化石のような存在なのかもしれない。

docomoから「はじめてスマホプラン」みたいなののセールス電話がかかってきたことがあるが、セールスって普通下手に出ると思うんだけどなかなか失礼なおばちゃんオペレーターで、ガラケーを使っていることに対して終始ものすごく馬鹿にしたような感じで話をされた。私だって実はiPhoneブームの時にiPhoneに憧れていた。しかしあの頃はキャリアがSoftBankかauじゃないとiPhoneを選べなかったのだ。docomoユーザーだった知人がiPhoneにしたいがためにわざわざauに乗り換えていたけど、私はそこまでしてiPhoneにしなくていいと思っていた。そして満を持してdocomoでiPhoneを使えるようになった頃には、私の中のiPhone熱がすっかり冷めてしまっていた。完全にスマホに替えるタイミングを失ってしまったと言っていいだろう。むしろ大多数がガラケーからスマホに替えるタイミングをしっかり掴んで機種変更に成功していることの方が私には不思議に感じる。

紆余曲折を得てきたけど、こうなったら2026年に全キャリアのガラケーのサービスが終了するその日までガラケーを使いたい。選ばれし最後のガラケーユーザーになりたい。2011年に地上アナログ放送が終わった時みたいにちょっとした祭りになってほしいな。2026年の時点でガラケーユーザーは何人残っているだろう。私もその一員になるべく、このボロボロのガラケーを頑張って維持させないといけない。東京国立博物館とかで文化財を保存している人の気持ちがうっすら分かる気がする(絶対違う)。さて、いつまで持つだろうか?


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