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【今日コレ受けvol.106】人+人=?

7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」を読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。

先日、ある親子へのインタビューがあった。
二人並んで座っていただき、前半に10代の息子さん、後半にお父さんの順でお話を聞く時間をとった。

のだけれども。
「こいつはその時期こんなことをやってました」
「ほら、こんなこと言ってたよな」
と、息子さんへの質問の7割をお父さんが答えてしまう。

「この子は昔から辛抱強いので、そのときはこんな気持ちだったと思います」
息子さんの心情まで語っていらっしゃったのには、ちょっと笑ってしまった。けれど、息子さんに異論はないようで、隣でウンウン肯いている。

でもあくまで知りたいのは、息子さんの答えだ。
結局その都度、質問を変えて息子さんに聞き直していたら、かなり時間がかかってしまった。

そんな姿を見ていて私の頭をよぎったのは、以前教育誌で行った「言葉の力を育てる」という趣旨の取材内容だ。

かいつまんで言うと、

小さい頃からママ、パパが子供の言いたいことを代弁すると、言語力がなかなか発達しない。表現力が大切なこれからの時代、
「たとえ意味が分からなくても、時間がかかっても、代弁せずに子供本人に話させるのが重要だ」というもの。

お父さんが7割答える関係性で、この息子さんの言語力は大丈夫なのだろうか……と少し心配になってしまった。(余計なお世話です。ごめんなさい)


ところが、だ。
息子さんへの質問がなんとか終わり、お父さんへの取材がはじまると、それまでずっと聞き役だった息子さんの態度が一変した。
今度は、お父さんへの質問に、息子さんが答え始めたのである。

「親父はあのときこうしてくれたよな」
「親父、こんなこと言ってなかったっけ?」
と、自分の取材のときよりも、かなり生き生きと。前のめりに。

聞けば息子さんは、小さい頃からなんでもお父さんに相談するほど仲がいいそうだ。きっとこれまでも、「父が息子の言葉を代弁する」シーンが何度もあったのだろう。
それをずっと見ていた息子さんは、「誰かの言うことを代弁してあげる」スキルを学んだのだ。

言語力を磨くには、子供の言葉を代弁してはいけない。

なんてひとつの理論だけを思い出して、マイナスにとらえた自分が恥ずかしくなった。
子育てに正しいフォーマットなんて、ないのだ。「誰かに代弁してもらえる」ことからも、子供は学べる。
そこにある気遣いや、優しさと共に。

ご家族はお母さん、お兄さんと4人だそうで、
「みんなこんな感じで、しょっちゅう話しています」とお父さんも息子さんもニコニコおっしゃった。きっと全員がお互いのことをよく知り、代弁しあえるご家族なのだ。


人という字の成り立ちは、「支え合った二人の人間」という通説があるけれど、取材後ふと、それが縦に2つ重なった漢字を想像してみた。

お父さん、お母さん、お兄さん、そして弟さん。
4人の人が支え合って、「家族」と読める漢字にならないだろうか。
少なくとも私の辞書には、新しい漢字として仲間入りした。今日から。

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