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「あの姉ちゃんやったら大丈夫や!」

これは、ライターをしていて、
一番うれしかった言葉の話。

当時、尼崎のグルメやオススメ情報を集めたムック本の取材のため、毎日尼崎へ通っていました。

その中の一件に、Oというたい焼きやさんがあったのです。Oは何十年も阪神尼崎の駅近商店街で営業されていて、優しいおじいさんとおばあさんが切り盛りされていました。

その店で特徴的だったのは、一般的なたい焼きの、ずらっと並んだ型に生地を次々流し込んで焼くスタイルではないこと。一つずつ独立した立体型に棒がついていて、それをくるくる回しながら焼く昭和初期のスタイルだったんです。

こうすることで皮はパリッと、中はふっくら仕上がるのですが、その分、手首への負担は大きい。でも、おじいさんはサポーターを巻いて、「これが生きがいやから!」と笑ってらっしゃいました。

そんなおじいさんは職人肌で口数が少なく、ずっと手を動かしているけれど、お尋ねした質問にはポツポツとうれしそうに、どこか恥ずかしそうに答えてくださったのが印象的でした。


そして、取材後約一週間がたった頃。
原稿が組み上がったので、後輩がチェックしていただくためにOへ持って行きました。Oは屋台のような店舗だったので、電話、ファックス、メールアドレス全てがなく、持っていくしかなかったんですね。

夜。帰ってきた後輩に話を聞くと、おじいさんは原稿をひとめも見ずに、
「あの姉ちゃんやったら大丈夫や!」と言ってくださった、と。

自分が取材した姿勢を認めてくださったのか。単純に、取材が楽しかったのか。もしかしたら、チェックするのが面倒だっただけかも知れないけれど。。


「あの姉ちゃんやったら大丈夫や!」


何十年もたい焼きを焼いてきた職人に言っていただいた言葉。Oは残念ながら数年前に閉店してしまったけれど。。
その言葉は、今も強烈に頭とココロに残っています。
相手にそう言っていただける取材が、またできればいい。そう思いながら、また取材に向かう日々です。


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